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12話 罠
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「どうするよ」
「どうするって言ったってモールス信号とかもわからねぇし、内と外じゃトランシーバーも使えねぇ」
「この様子じゃ迷宮に足を踏み入れた判定がついた瞬間に外に出れなくなる仕様か⋯ミノタウロスが動くってギミックじゃなくて、ラビュリントスに関わる全ギミックがあるんだ」
「んなアホな⋯」
なんでミノタウロスなんてメジャーな神話を頭に入れておかなかった! 10年日本でその規模のダンジョンが生まれなかったとはいえ考慮するべきだったのか! ゴールドの担当ダンジョンで神話クラスは初だ! 延命治療日を稼ぐために数をこなすためには神話まで手を伸ばしてる暇も⋯
「勇⋯勇! 3人いるんやどうするべきか考えようや」
「⋯それもそうだな。オッサンの一人相撲ほど意味無いものはないか」
「それだと最高齢の俺はどうなるんだよ」
八木と源さんのおかげで不必要な思考から抜けれた。俺は死ぬ可能性を心のどこかで否定していたのだろうか、死が近づく足音が聞こえて思考をめぐらせたが、この2人はやけに落ち着いていた。
恐らく死ぬ前に出来ることを考える頭にシフトしているのだろう。ゴールド調査員として討伐隊に何を残せるかを考えている。
「にしても入口に鉱石とは嫌なダンジョンやな。銃でも撃って砕いてみよか?」
「無理だろうな。ダンジョンの性質が逃がさないことに特化しているなら、中から外への行動は全て無駄だろう」
「そうかぁ⋯やっぱりダンジョンやもんなぁ」
八木も何も考えてないわけではなさそうでアイデアを出しては落ち込んでいる。
あまりのんびり作戦会議をする時間もないだろう。迷宮内で留まるということは迷宮の王の庭で見つかるのを待つだけだ。あまり長く留まればいずれ生け贄よりも優先してこっちに来るだろう。
かと言って闇雲に動いてもまた入口付近に来れるとは限らない。俺達に討伐する力がない時点で詰みなのだ。
「ここでそんな事を考えていても仕方ない。何かきっかけがなければ討伐隊の突入はないしな。動こう」
「よっしゃきた」
「下に残してきた奴らも気になるしね。賛成だ」
ブモァ⋯
タララララ
俺達が入口の鉱石でできた壁の前から立ち上がろうとした瞬間、微かな獣の声と銃声が聞こえた。
「ミノタウロスはB1か⋯マプ男から殺られる可能性が高いからって弾くの早すぎんか」
「早く向かおう。誰も死なせたくない」
源さんはいつも通りのスタンスで下の誰かを助けようとする。
しかし俺は違う。
「源さん、今までとは状況が違う。ここで行けば余剰の贄の俺達は確実に死ぬ」
「今までだって死にそうになりながら助けてきたじゃないか」
確かに俺は何度も源さんと同じ現場に入り、人を助ける手助けをしている。源さんの近くで学ぶことが多かったから必然的に手を貸していた。
10年調査員をやっていてもそれは変わらずで、源さんと同じ現場になる度に顔も見ずに誰かを助けていた。
「今回は話が違いすぎる。今まではそうしたって死なない確証があった。だけど今回は身を晒せば確実にやられる」
「俺も源さんの事好きやし、動くのには賛成やけど助けに行くのは反対や」
「なら俺だけでも⋯」
「だから源さん⋯俺らが死ねば下のやつらは確実に全員死にますよ! 今あいつらは迷宮に閉じ込められている。どう動こうがミノタウロスが蓋になって1階に上がることを許さないはずだ!」
「ちょ⋯勇、声でかいて⋯」
数少ない顔を見れる源さん。損得抜きにケツの青い頃から面倒を見てもらった恩人をみすみす殺させたく無かった。
顔も知らずに仕事だからパーティを組んだ奴らと源さん1人どちらをとるか、俺に迷う要素はなかった。
「あんたまで死なれちゃ俺はどうすりゃいいんですか⋯」
「勇⋯俺は今までも死んでないし、それにお前はもっと人と関われって言ってるだろ⋯」
久しぶりに人の話を聞かないほど感情的になった気がする。最後に感情を表に出したのはいつだろう。真宵の件から俺は心が壊れ始め、初めてダンジョンに入って目の前で人が死んでいく時には俺の心は壊れた。
必死にこっちに手を伸ばして何か言葉をを叫ぶ男の姿は覚えているが顔は思い出せない。たしかこの頃から俺は人の顔を見なくなった気がする。
だって覚えたところで人は死んでしまう、そしたら死体の記憶が俺にのしかかるからだ。
今も源さんの顔を知らなければこんなにぐちゃぐちゃになる必要もなかった。34歳にもなって一回り上のおっさんに対して感情的になんてなりたくなかった。
ダンジョンの恐怖が俺をおかしくしたと思い込む。そうでなければただ恥ずかしいだけだ。
目を閉じ源さんがどんな顔をしているかを見なくてよくする。いつも通り開いていても見えなければよかったのに、他の奴らみたいに顔を塗り潰せればよかったのにと心底思う。
「勇⋯お前⋯」
俺が感情的になったせいで源さんは困った顔をしているのだろうか。それともなにか別の表情をしているのだろうか。
自分がぐちゃぐちゃになってもう何も分からない。他人を拒絶していたのになぜ今更源さんだとこんなに心が揺らぐのか⋯
「勇!」
突如、ギャイイイイイイン。鉄と石が擦れる嫌な音が鳴り響く。
ドンと突き飛ばされ、次の瞬間には生暖かいものを感じる。
「⋯へ?」
「バカ、逃げるで! 牛や!」
倒れた直後に腕を持ち上げられ八木に走らされる。
目を開けた瞬間に赤い何かが視界を埋めつくした。
「どうするって言ったってモールス信号とかもわからねぇし、内と外じゃトランシーバーも使えねぇ」
「この様子じゃ迷宮に足を踏み入れた判定がついた瞬間に外に出れなくなる仕様か⋯ミノタウロスが動くってギミックじゃなくて、ラビュリントスに関わる全ギミックがあるんだ」
「んなアホな⋯」
なんでミノタウロスなんてメジャーな神話を頭に入れておかなかった! 10年日本でその規模のダンジョンが生まれなかったとはいえ考慮するべきだったのか! ゴールドの担当ダンジョンで神話クラスは初だ! 延命治療日を稼ぐために数をこなすためには神話まで手を伸ばしてる暇も⋯
「勇⋯勇! 3人いるんやどうするべきか考えようや」
「⋯それもそうだな。オッサンの一人相撲ほど意味無いものはないか」
「それだと最高齢の俺はどうなるんだよ」
八木と源さんのおかげで不必要な思考から抜けれた。俺は死ぬ可能性を心のどこかで否定していたのだろうか、死が近づく足音が聞こえて思考をめぐらせたが、この2人はやけに落ち着いていた。
恐らく死ぬ前に出来ることを考える頭にシフトしているのだろう。ゴールド調査員として討伐隊に何を残せるかを考えている。
「にしても入口に鉱石とは嫌なダンジョンやな。銃でも撃って砕いてみよか?」
「無理だろうな。ダンジョンの性質が逃がさないことに特化しているなら、中から外への行動は全て無駄だろう」
「そうかぁ⋯やっぱりダンジョンやもんなぁ」
八木も何も考えてないわけではなさそうでアイデアを出しては落ち込んでいる。
あまりのんびり作戦会議をする時間もないだろう。迷宮内で留まるということは迷宮の王の庭で見つかるのを待つだけだ。あまり長く留まればいずれ生け贄よりも優先してこっちに来るだろう。
かと言って闇雲に動いてもまた入口付近に来れるとは限らない。俺達に討伐する力がない時点で詰みなのだ。
「ここでそんな事を考えていても仕方ない。何かきっかけがなければ討伐隊の突入はないしな。動こう」
「よっしゃきた」
「下に残してきた奴らも気になるしね。賛成だ」
ブモァ⋯
タララララ
俺達が入口の鉱石でできた壁の前から立ち上がろうとした瞬間、微かな獣の声と銃声が聞こえた。
「ミノタウロスはB1か⋯マプ男から殺られる可能性が高いからって弾くの早すぎんか」
「早く向かおう。誰も死なせたくない」
源さんはいつも通りのスタンスで下の誰かを助けようとする。
しかし俺は違う。
「源さん、今までとは状況が違う。ここで行けば余剰の贄の俺達は確実に死ぬ」
「今までだって死にそうになりながら助けてきたじゃないか」
確かに俺は何度も源さんと同じ現場に入り、人を助ける手助けをしている。源さんの近くで学ぶことが多かったから必然的に手を貸していた。
10年調査員をやっていてもそれは変わらずで、源さんと同じ現場になる度に顔も見ずに誰かを助けていた。
「今回は話が違いすぎる。今まではそうしたって死なない確証があった。だけど今回は身を晒せば確実にやられる」
「俺も源さんの事好きやし、動くのには賛成やけど助けに行くのは反対や」
「なら俺だけでも⋯」
「だから源さん⋯俺らが死ねば下のやつらは確実に全員死にますよ! 今あいつらは迷宮に閉じ込められている。どう動こうがミノタウロスが蓋になって1階に上がることを許さないはずだ!」
「ちょ⋯勇、声でかいて⋯」
数少ない顔を見れる源さん。損得抜きにケツの青い頃から面倒を見てもらった恩人をみすみす殺させたく無かった。
顔も知らずに仕事だからパーティを組んだ奴らと源さん1人どちらをとるか、俺に迷う要素はなかった。
「あんたまで死なれちゃ俺はどうすりゃいいんですか⋯」
「勇⋯俺は今までも死んでないし、それにお前はもっと人と関われって言ってるだろ⋯」
久しぶりに人の話を聞かないほど感情的になった気がする。最後に感情を表に出したのはいつだろう。真宵の件から俺は心が壊れ始め、初めてダンジョンに入って目の前で人が死んでいく時には俺の心は壊れた。
必死にこっちに手を伸ばして何か言葉をを叫ぶ男の姿は覚えているが顔は思い出せない。たしかこの頃から俺は人の顔を見なくなった気がする。
だって覚えたところで人は死んでしまう、そしたら死体の記憶が俺にのしかかるからだ。
今も源さんの顔を知らなければこんなにぐちゃぐちゃになる必要もなかった。34歳にもなって一回り上のおっさんに対して感情的になんてなりたくなかった。
ダンジョンの恐怖が俺をおかしくしたと思い込む。そうでなければただ恥ずかしいだけだ。
目を閉じ源さんがどんな顔をしているかを見なくてよくする。いつも通り開いていても見えなければよかったのに、他の奴らみたいに顔を塗り潰せればよかったのにと心底思う。
「勇⋯お前⋯」
俺が感情的になったせいで源さんは困った顔をしているのだろうか。それともなにか別の表情をしているのだろうか。
自分がぐちゃぐちゃになってもう何も分からない。他人を拒絶していたのになぜ今更源さんだとこんなに心が揺らぐのか⋯
「勇!」
突如、ギャイイイイイイン。鉄と石が擦れる嫌な音が鳴り響く。
ドンと突き飛ばされ、次の瞬間には生暖かいものを感じる。
「⋯へ?」
「バカ、逃げるで! 牛や!」
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