神官の特別な奉仕

Bee

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17 ノーマとの関係

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 小さく千切った杏の実を口に含ませてやると、暫くモゴモゴと口を動かしていたが、飲み込んでしまうと安心したようにノーマは眠ってしまった。


「暫くはこのような状態が続くやもしれませんな」


 そう言ってサーシャが眠っているノーマを見た。

 滾々と眠り続けるノーマにこれは長居することになりそうだと、アンバーがこの娼館の主人に逗留について相談すると、客が減り空き部屋も増えたため、いて貰えた方がありがたいと逆に頼まれてしまった。そんな主人の言葉にアンバーは甘えることにした。


 神殿閉鎖以降、街に訪れる人が減った今、この娼館も客足が減り空き部屋が増えたということで、部屋を客をとる本館ではなく、もうあまり使わない離れの奥座敷に移してもらった。

 そしてアンバーはノーマと、サーシャは馴染みのスルトとで部屋を分けた。

 娼館の者もノーマが件の神官だと気がついてはいるようだが、有難いことにそれには触れず普通に接してくれている。

 互いに名は呼ばず、正体も明かさない。変に介入してこない辺りが、宿屋とは違い有難く居心地が良い。




「あの丸薬、俺等が使ってるやつに似てたけど、ちょっとヤバイ成分が混じってた」


 色街お抱えの薬師にノーマ等が奉仕の際に使っていた丸薬を調べてもらったところ、一般的には使われない麻薬のような成分が検出されたという。
 スルトは、不快感を露わにし顔を顰めてそう報告した。


 少量であればさほど効果はないが、ノーマのように1日に間を置かず何度も摂取すると、初期症状として頭がぼんやりとしだし、次第に行為に自制がきかぬようになり、やがては自分で排泄することもままならなくなるという。

 あのまま放置していれば、きっとノーマもそうなっていただろう。


「薬が体から出てしまえば、だんだんとよくなるってさ」


 副作用はしばらく続くが、それも時間の経過が解決すると薬師からの伝言だ。
 ではノーマの回復を待つまでと、アンバー等は長逗留を決め込んだ。



  △△△




「アンバー様、杏の実をいただけますか?」


 あの日、杏の実を食べてからしばらくすると、起き上がれる日も増え、ノーマは思ったより早くに回復した。

 どうも杏の実が相当気に入ったらしく、体が良くなってからもアンバーがそばにいる時は決まって杏の実を欲する。


「そら」


 腰の袋から実を取り出し、口の中へ入れてやると、薄く双眸を細め美味しそうに咀嚼するその姿が存外可愛らしく、袋ごと渡せばいいものを、ねだられるとつい手ずから与えてしまう。

 だがノーマはこんなふうに甘えてはくるものの、それ以上の感情をなかなか見せてはくれなかった。

 寝泊まりする部屋は一緒だが、寝台は別。ここに来て褥を共にしたのは、一度のみ。

 しかもそれは、ノーマが弱った隙をみてのことだった。


 ノーマがだいぶ回復したこともあり、事件のあらましを説明した日、ノーマが拐かされここに連れて来られ神殿に騙されていたこと、またリニ神官が神官長を殺したことなど、アンバーはすべてをノーマに話した。

 ノーマはショックを受けてはいたが、それでも表情を崩しはしなかった。

 しかし母親のものであろう自身の髪の房が入った守袋を手にすると、さすがに涙をこぼした。

 袋を握り締め声もなく体を震わせる姿に、アンバーは思わず抱きしめ、ノーマが抵抗しないことをいいことに事に及んでしまったのだ。

 だがそれでも無理強いはしていないし、中にも挿れていない。

 口付けを交わし、優しく慰めてとお互いの体を合わせる程度で済ませた。しかし本当はなし崩し的にでも関係を深めていきたいというのが本音ではあった。


「アンバー様、杏の実をもう一つ」


 しかしノーマは杏の実を欲しい時しか、アンバーに近寄ろうとしない。





「相変わらず、振られておりますな」


 サーシャはその様子を見ると、片眉を上げアンバーに憐憫の情を向けた。


「あまり強引にしたくはない」


 アンバーが自分の欲を隠しノーマを思いやると、サーシャが「どれ私めが後押し致しましょう」とニヤリと笑った。




 その日の夜、隣の部屋から激しく濃厚にまぐわう声が響いた。
 隣といえばもちろんサーシャと馴染みの男娼スルトだ。

 いつもならそこまで響くほどの嬌声はあげないのだが、なぜか今日はいつも以上に激しく責めたてている。


「今日はやけに激しいな」


 アンバーは読んでいた書きつけから目を離し、寝転んだまま隣の部屋を見やった。

 もちろんサーシャがわざとやっているのだが、スルトのあの嬌声は本気のものだろう。

 ちらりと隣を見るとノーマも隣を凝視している。細い喉がごくりと動いた。


「ノーマ」


 振り返ったノーマの表情に普段と同じく変化はないが、頬が薄っすら赤らんでいる。


「気になるか」


 そうアンバーが問うと、ノーマはまたちらりと隣を見た。


「……あんなに声が出るもんなんですかね」
「出ないのか?」
「……あそこまで激しくは、出たことはありません」


 特別な治癒の奉仕の時、相手が多少は声をあげることはあっても、ノーマ自身が快感がすぎて声をあげるといったことはなかった。

 さすがに中に相手のモノを入れるときは、押し入る異物感に声が漏れるが。

 それに自分が上になった時だって、息できないんじゃないかというほど善がり狂い激しく声をあげる者はいたことはない。せいぜいちょっとあーあー言うくらいだ。


「ふむ」


 アンバーは書きつけを横に置くと、ノーマに近づき顔を撫であげると、ニヤリと笑って親指で頬を撫でた。


「試してみるか」


 ノーマは切れ長の瞳を大きく見開くと、すぐに目線を逸らし少し悩むようなそぶりを見せたのも束の間、いたずらを思いついた子供のような目つきでアンバーを見上げた。


「ああ、そういえばアンバー様には最後までして差し上げられませんでしたね。あの時の続きを致しましょうか」


 そう言って、今まで見せたことのない蠱惑的な表情で笑った。
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