前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee

文字の大きさ
2 / 29

2

しおりを挟む
 ——ゆらゆら。頭が揺れる。 

 気がつくと俺は、なんだかふわふわとした心地よい布団の中でまどろんでいた。 

 あーなんだかすげーたくさん寝た気がする。 

 このふわふわな布団が気持ちいい。雲の上にいるみたいだ。こんな寝心地いい布団なんか、初めてだな。どこの布団なんだろ。起きたらメーカー聞いて、速攻買いに行こう。 

 しばらくまどろみに身を任せた俺は、ぼんやりと目を開けた。 

 周囲はやけに明るくて、あまりの眩しさに、思わず強く目を瞑る。そしてまたうっすらと目を開けると、そこは白い部屋の中で、俺はやはり白いふわふわの布団に寝かされていた。 

 いや、布団か? これ? ふわふわモコモコの綿? の上に敷かれたシーツ? だけどものすごく手触りがいい。 

「……なにここ」 

 ぼーっと上を眺めるが、そこには天井らしきものは見えず、ただ明るい空間が広がっているだけ。白くてフワフワしていて、なんだかよくある天国っぽいイメージ。 

「あれ、俺どうしたんだっけ」 

 結婚式場を出て、駐車場で車に乗って、それでなんだかヤケクソになって闇雲に車を走らせて……。 

「……もしかして事故った? 俺、死んだとか。はは、まさかな」 

 寝転んだまま両手を掲げて見る。別に透き通ってたりはしない。いつもと変わらない……いつもと変わらない? いやいや違う! 

「おい、俺のスーツは!?」 

 慌てて飛び起きて、自分の服装を確認する。 

 車に乗ったとき、たしか上着は助手席に置いた……かもしれない。でもシャツやズボンは脱いでない。脱ぐはずがない。 

 それなのに俺は、着ていたスーツとは真逆の、なんだか真っ白でフワフワの、外国の映画でみるパジャマのようなワンピースを着ていた。 

「お、俺のスーツ!!」 
「はい、残念でしたー」 

 そう叫んだ瞬間、背後から声がした。 

 誰もいないと思って叫んだのに、後ろに誰かいた。 

「……――え?」 

 さっきまで誰もいなかったよな!? いなかったよな!? と心の中は大パニックに襲われつつ文字通り恐る恐る振り返ると、そこにいたのは――。 

「え……黒木?」 

 そこにいたのは、なんと大学時代の友人の黒木だった。 

「よっ! 久しぶり! 俺のこと覚えてた?」 

 二カッと顔を全体が笑顔になったような、そんな笑顔ができるのはやっぱり黒木だ。 

「え? なに? なんで? 久しぶりって、いや、ちょっと待て」 
「マジで久しぶり~! 俺、ユウジにすっげー会いたかったんだ~」 
「え、お? いや、ちょっと黒木、わっ」 

 動揺している俺に構うことなく抱きついてくる黒木。こういうとこ全然変わってない。 
 いや、変わってないどころじゃないって。変わるはずない。だって黒木は7年も前に――。 

「黒木、ちょっと待て! お前、し、死んだよな」 
「まあな」 

 そう言って黒木はまた二カッと笑って俺を見た。 

 黒木とは大学が同じで、3年の春にバイクの事故で死んだ。 

 黒木は山岳部ですげーゴツくて、それでもデカい犬みたいに人懐こくて、先輩後輩問わずみんなに好かれてたような奴だ。それでなんでか学部の違う俺にも懐いてて、構内で俺を見かけるといつもこうして抱きついてきて。 

 俺はその頃ちょうどあいつと付き合い始めた頃だったから、誤解されるのが怖くて、やめろって何度も言ってて。 

「え、ちょっと、じゃあやっぱ俺って死んだのか?」 

 もしここが俗に言う天国ってやつならば、俺は死んだことになる。この真っ白な空間も、フワフワな雲のようなベッドも、そうだと言われれば納得しかない。 

 でも自分が死んだなんて、自覚がなさすぎる! 

(えっと、あの時車に乗ってエンジンかけて、それから闇雲に走って、それから――) 


「そのあとの記憶がない!!」 


 どれだけ記憶の糸をたぐっても、まったくもって思い出せない。恐怖に背筋がヒュッと冷たくなる。 
 だがそんなふうに取り乱す俺とは対照的に、黒木はのんきな顔で笑っている。 

「まあいいじゃん。ユウジ」 
「よくない!!」 
「でも、ここ居心地いいぞ~」 

 黒木がボフンとフワフワの上に寝転ぶ。 
 確かに、ここはとても居心地いい。気温とか湿度とか暑くもなく寒くもなくちょうどいいし、このフワフワもかつてないくらい気持ちがいい。さすが天国。 

「ユウジ、ほら」 
「あ、ちょ、おい!」 

 黒木が戯れるように俺の腰を掴んできて、俺はフワフワの上にボスンと勢いよく倒れこんでしまった。 

 フワフワッと雲の欠片が空中に舞い、雪のように舞い落ちる。でも埃のような嫌な感じではない。本物の雪のように、肌に落ちてもさらっと溶けて消えていく。 

 そしてその雪の間から、ニコニコの笑顔で、片肘をついた姿勢で俺を見下ろす。ずっとここにいるくせに、山で日焼けした逞しい体も、そして若さもそのままの黒木。対して俺は。 

「……黒木変わんねーな。俺、年とったろ」 

 黒木が死んだのは大学3年の頃で、あれから7年経った。黒木は21歳で時を止め、俺は先週で28歳になった。 

 当時の黒木はおっさんじみたやや老け顔のイメージだったが、こうしてみるとまだ幼い顔つきで、無精髭がそう見せてたんだなって、今更ながら気づいた。 

「ユウジも変わらないよ。俺の知ってるユウジのまま。キレイで優しくてさ~。俺好きだったんだ、ユウジのこと」 
「……」 

 照れたようにへへへと笑う黒木に、俺は何も言い返さなかった。 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?

あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。 徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。 彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。 一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。 ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。 その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。 そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。 時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは? ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ? 読んでくださった方ありがとうございます😊 ♥もすごく嬉しいです。 不定期ですが番外編更新していきます!

処理中です...