6 / 29
6
しおりを挟む
「なんだ、やっぱり重かったのかよ」
「重いに決まってんじゃん。ユウジにいい顔見せたかったんだって。そんであのキーホルダー、俺が初めて山岳部で登った山の記念に買ったやつだって話たら、『無事に帰ってきた証みたいなもんだな』ってユウジが言ってさー。次登ったら絶対ユウジにもキーホルダー渡すんだって俺決めたんだよね」
あ、それで毎回俺にキーホルダーくれてたのか!
うわーまずい、俺、その話全然覚えてない。
「俺、ずっとユウジのこと好きだったのに、言えなくて、挙げ句事故って死んじゃうし。……バイクもさ、ユウジがバイクカッコいい乗りたいって言ってたから買ったんだ。バイク買ったとき、メットも2個買ってさ。いつかユウジを後ろに乗せるんだって、張り切ってたけど……あのとき乗せてなくてよかった」
あー……言ったかも。バイクの話。でもあれは黒木に言ったわけじゃなくて、俺が欲しいって話で……。
つか、マジかよ。バイクの免許とったのって、俺のせいかよ。俺が事故らせたようなもんじゃん。
「あ、でもバイクは移動用に欲しかったから買ったわけだし、ユウジのためだけに買ったわけじゃないから! ユウジのせいとかじゃないよ、そんな顔するなって。ね」
俺を慰めるために、黒木はまた俺を抱きしめた。
「あー……マジで、幸せ。ユウジをこうして抱きしめることができるなんて。さっきチューもしたし、マジで念願叶ったわ。……なあ、ユウジ。尚人への復讐はさ、どうする?」
「復讐ねぇ」
「俺さ、ユウジのためになんでもするって言葉、本心だし。復讐でもなんでもやっちゃうよ。……例え、魂が輪廻の輪から抜けることになってもね」
「輪廻の輪から抜ける? なにそれ」
急に出たオカルト話に、俺はちょっとポカンとした。またなにか意味のわからないことで翻弄しようとしてんのか? そう思ったが、黒木の声はいたく真面目だった。
「ここは、まだ俗世への未練が抜けられてない、あの世と現世の中間地点みたいなとこでさ。ここで未練を断ち切れたら、あの世にいって、次の生に生まれ変わるんだけど。無理みたい。……俺ね、本当はユウジのことずっと見てて、尚人とのことも知ってた。だからもう見てられなくて、ここに連れてきちゃったんだよね」
「は……?」
「見えるって言っても、監視カメラみたいに一部始終を見てたわけじゃないよ!? なんとなくこう、魂から発せられる感情みたいなものが伝わるっていうかさ。尚人のせいでユウジの心が悲鳴をあげてるの、見てるの辛くて」
連れてきた? 俺をここに? それってまさか――!?
「……おい、俺をここに連れてきたって、まさか俺を殺して連れてきたってことじゃねーだろうな!?」
まただ。周囲が淀み始めている。
今度は淀むどころじゃない。暗く重い闇が足元から這い上がって来る。霧のように体にぺったりとまとわりつき、ずっしりとしてひどく重い。まるで地の底に体が沈んでしまいそうなほどに。
「そうだよ。ユウジは俺がここに連れてきたんだ。だってあんなに辛そうだったし、俺といたほうが幸せだろ」
ニコッと笑う黒木。だがその目の奥は笑ってない。
「ね、俺と一緒にいよ。ユウジ」
「……やめろ黒木」
「俺、ユウジのこと大事にする。尚人なんかより、ずっとずっと大事にするから」
「やめろ! 離せ黒木! 俺は戻る! 生き返って、もとの生活に戻るんだ!」
「……あっちに戻ってどうすんの。また尚人のことでクヨクヨ泣いて過ごすのか?」
「もう尚人のことは忘れる! 連絡がきても無視する! ……俺だってもう、尚人から解放されたいんだ。それに、あっちでやり残したことだっていっぱいある。仕事だって、俺が企画したプロジェクトが始まったばっかりだし、海外旅行だって行きたい。映画だってまだ観てないやつがあるし、佐藤に誘われてキャンプグッズを買ったけど、まだ一度も使ってない。それに……」
「それに?」
「俺だってもっと恋愛したい」
ふざけているように聞こえるかもしれないが、いたって大真面目だ。
でももっと黒木の心に訴えかけられるような、何か大きな心残りでもあればよかったのに、俺ってホントに何もない。
大学のときからずっと尚人のそばにいて、尚人のやりたいことやって……尚人のために料理まで習って。あー……こうしてみると、尚人に依存してたんだなってつくづく思う。
「……恋愛の相手って俺じゃだめなの?」
「いや、ダメもなにも……」
お前死んでるし。つか、今生き返ったときの話してるよな。お前でもいいって言っちゃったら、俺死んだままじゃん。
それより、俺生き返れるの?
「……ユウジ、もしさ、俺が生まれ変わってユウジの前に現れたら、恋愛の相手として考えてくれる?」
「え?」
「重いに決まってんじゃん。ユウジにいい顔見せたかったんだって。そんであのキーホルダー、俺が初めて山岳部で登った山の記念に買ったやつだって話たら、『無事に帰ってきた証みたいなもんだな』ってユウジが言ってさー。次登ったら絶対ユウジにもキーホルダー渡すんだって俺決めたんだよね」
あ、それで毎回俺にキーホルダーくれてたのか!
うわーまずい、俺、その話全然覚えてない。
「俺、ずっとユウジのこと好きだったのに、言えなくて、挙げ句事故って死んじゃうし。……バイクもさ、ユウジがバイクカッコいい乗りたいって言ってたから買ったんだ。バイク買ったとき、メットも2個買ってさ。いつかユウジを後ろに乗せるんだって、張り切ってたけど……あのとき乗せてなくてよかった」
あー……言ったかも。バイクの話。でもあれは黒木に言ったわけじゃなくて、俺が欲しいって話で……。
つか、マジかよ。バイクの免許とったのって、俺のせいかよ。俺が事故らせたようなもんじゃん。
「あ、でもバイクは移動用に欲しかったから買ったわけだし、ユウジのためだけに買ったわけじゃないから! ユウジのせいとかじゃないよ、そんな顔するなって。ね」
俺を慰めるために、黒木はまた俺を抱きしめた。
「あー……マジで、幸せ。ユウジをこうして抱きしめることができるなんて。さっきチューもしたし、マジで念願叶ったわ。……なあ、ユウジ。尚人への復讐はさ、どうする?」
「復讐ねぇ」
「俺さ、ユウジのためになんでもするって言葉、本心だし。復讐でもなんでもやっちゃうよ。……例え、魂が輪廻の輪から抜けることになってもね」
「輪廻の輪から抜ける? なにそれ」
急に出たオカルト話に、俺はちょっとポカンとした。またなにか意味のわからないことで翻弄しようとしてんのか? そう思ったが、黒木の声はいたく真面目だった。
「ここは、まだ俗世への未練が抜けられてない、あの世と現世の中間地点みたいなとこでさ。ここで未練を断ち切れたら、あの世にいって、次の生に生まれ変わるんだけど。無理みたい。……俺ね、本当はユウジのことずっと見てて、尚人とのことも知ってた。だからもう見てられなくて、ここに連れてきちゃったんだよね」
「は……?」
「見えるって言っても、監視カメラみたいに一部始終を見てたわけじゃないよ!? なんとなくこう、魂から発せられる感情みたいなものが伝わるっていうかさ。尚人のせいでユウジの心が悲鳴をあげてるの、見てるの辛くて」
連れてきた? 俺をここに? それってまさか――!?
「……おい、俺をここに連れてきたって、まさか俺を殺して連れてきたってことじゃねーだろうな!?」
まただ。周囲が淀み始めている。
今度は淀むどころじゃない。暗く重い闇が足元から這い上がって来る。霧のように体にぺったりとまとわりつき、ずっしりとしてひどく重い。まるで地の底に体が沈んでしまいそうなほどに。
「そうだよ。ユウジは俺がここに連れてきたんだ。だってあんなに辛そうだったし、俺といたほうが幸せだろ」
ニコッと笑う黒木。だがその目の奥は笑ってない。
「ね、俺と一緒にいよ。ユウジ」
「……やめろ黒木」
「俺、ユウジのこと大事にする。尚人なんかより、ずっとずっと大事にするから」
「やめろ! 離せ黒木! 俺は戻る! 生き返って、もとの生活に戻るんだ!」
「……あっちに戻ってどうすんの。また尚人のことでクヨクヨ泣いて過ごすのか?」
「もう尚人のことは忘れる! 連絡がきても無視する! ……俺だってもう、尚人から解放されたいんだ。それに、あっちでやり残したことだっていっぱいある。仕事だって、俺が企画したプロジェクトが始まったばっかりだし、海外旅行だって行きたい。映画だってまだ観てないやつがあるし、佐藤に誘われてキャンプグッズを買ったけど、まだ一度も使ってない。それに……」
「それに?」
「俺だってもっと恋愛したい」
ふざけているように聞こえるかもしれないが、いたって大真面目だ。
でももっと黒木の心に訴えかけられるような、何か大きな心残りでもあればよかったのに、俺ってホントに何もない。
大学のときからずっと尚人のそばにいて、尚人のやりたいことやって……尚人のために料理まで習って。あー……こうしてみると、尚人に依存してたんだなってつくづく思う。
「……恋愛の相手って俺じゃだめなの?」
「いや、ダメもなにも……」
お前死んでるし。つか、今生き返ったときの話してるよな。お前でもいいって言っちゃったら、俺死んだままじゃん。
それより、俺生き返れるの?
「……ユウジ、もしさ、俺が生まれ変わってユウジの前に現れたら、恋愛の相手として考えてくれる?」
「え?」
44
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)
turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。
徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。
彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。
一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。
ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。
その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。
そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。
時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは?
ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ?
読んでくださった方ありがとうございます😊
♥もすごく嬉しいです。
不定期ですが番外編更新していきます!
美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?
あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
劣等生の俺を、未来から来た学院一の優等生が「婚約者だ」と宣言し溺愛してくる
水凪しおん
BL
魔力制御ができず、常に暴発させては「劣等生」と蔑まれるアキト。彼の唯一の取り柄は、自分でも気づいていない規格外の魔力量だけだった。孤独と無力感に苛まれる日々のなか、彼の前に一人の男が現れる。学院一の秀才にして、全生徒の憧れの的であるカイだ。カイは衆目の前でアキトを「婚約者」だと宣言し、強引な同居生活を始める。
「君のすべては、俺が管理する」
戸惑いながらも、カイによる徹底的な管理生活の中で、アキトは自身の力が正しく使われる喜びと、誰かに必要とされる温かさを知っていく。しかし、なぜカイは自分にそこまで尽くすのか。彼の過保護な愛情の裏には、未来の世界の崩壊と、アキトを救えなかったという、痛切な後悔が隠されていた。
これは、絶望の運命に抗うため、未来から来た青年と、彼に愛されることで真の力に目覚める少年の、時を超えた愛と再生の物語。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる