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冒険者の街 リュカ
冒険者カードと出会い 前編
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「久しぶりに来たな冒険者の街、リュカ」
心地の良い風を浴びながらボソッと言葉をこぼす。
あいつからのお守りをもらい村から出て早二日、最初の目的地である冒険者の街リュカに到着した。
この街に来た目的は身分証明になる冒険者カードを取るため。
理由としては身分証明になること。
この街はウィンド村から比較的近く頻繁にこっちに来ているため守衛さんとは顔見知りで身分証明がなくても問題がないのだがその他の街などではそんなことは通用しない。
一応、通行料などのお金を払えばなんとか街に入れるがそんなの金の無駄だ。
だからこの街で冒険者登録し、カードをもらえればそれが身分証明になる。
叔父さんと師匠からもらった金貨もあるがお金は計画的に使っていかないとすぐになくなってしまう。
そんなことを考えながら検問所を顔パスで通り、街の中に入る。
ウィンド村よりも広大な街並みが広がり、見渡す限り人で溢れかえっていた。
久しぶりに来たので街の様子も随分と変わり視線が様々な方向に動いてしまう。
様々なものに視線を向けながら目的地である冒険者ギルドに足を向ける。
足を向けること数分、冒険者ギルドに到着した。
今更だが冒険者ギルドとは冒険者にモンスターの討伐や素材の買い取りなどを行っている組織で支部は多くの地域に点在しているが辺境の地である俺の村にはギルドは点在していない。
だから基本的に俺の村で魔物が出たら俺か村の男衆が駆逐したあとこの街まで持ってきてギルドに買い取ってもらっている。
ギルド内に入ると前に来た時よりも新しくなって綺麗になっていた。
久しぶりに来て場所が曖昧になってるなと思い辺りを見渡すと案内板を発見した。
それに従いながら冒険者登録カウンターの列に並ぶ。
並ぶこと数分、俺の番になった。
「こんにちわ、こちら冒険者登録カウンターでございます。この登録用紙に必要事項を書いてください」
受付のきれいなお姉さんに用紙とペンをもらって必要事項を書き込む。
名前や年齢などの基本的なことから趣味などこれ関係あるのかっていうことまで書いた。
変なところは適当に書きなぐって受付のお姉さんに渡す。
「あ、書き終わったんですね!ありがとうございます!」
丁寧にお辞儀をして書類に受け取った。
「確認いたしました!綺麗な字ですね、とても読みやすかったです」
眩しい笑顔でほめられて若干照れる。
だがこういうタイプの人は苦手なのでとっとと話と登録を終わらせて飯食って別の街に行きたい。
「ありがとうございます、これで登録完了ですか?」
作り笑いをして話がとっとと終わる方向にもっていく。
「いえ、本来ならばこの後実技を行いその後冒険者カードを渡すのですが申し訳ありません、実は試験するはずの冒険者が別の依頼を受けていて今この街にいないんです」
え、マジですか。
今日中に登録完了させてこの街から出たかったのに!!
「帰ってくるのっていつですか?」
「おそらく明日になるかと、どうなさいますか?」
明日か、あんまり冒険者登録とかに時間かけたくなかったけど自分の身分証明のためだ我慢して飯でも食べて宿に泊まって寝る!
「わかりました、明日の朝またここに来ます」
「本当に申し訳ありません、明日受付に来ていただいたらすぐに実技ができますので」
「はい、ありがとうございました」
ぺこりと会釈して受付を離れる。
どうするかな?とりあえず飯でも食うか。
先程と同じ案内板で酒場の場所を確認し、足を運ぶ。
酒場につくと酒やご飯を食べている人たちで席が埋まっていた。
この時間帯混むのね、次からこの時間以外に来ようっと。
席が空いてないか辺りを見渡すとカウンター席が一つだけ空いていたのでそこに座る。
「坊主、何にする?」
席に着くと茶髪で体格もよく雰囲気もいいおっちゃんがグラスを磨きながら聞いてきた。
おっちゃんいやマスター、ダンディでかっこいいね!
こんな大人になりたいわ!!
「とりあえずA定食、飲み物はコーヒーで」
「あいよ」
磨き終わったグラスを戻して厨房の方に歩いて行った。
ふぅー-っと一息つく。
予定は狂っちまったけど明日になれば身分証明もとれる。
飯食った後は今日泊まる宿を探して金を稼ぐために魔物でも狩ってくるか。
「本日の特製ブレンドのコーヒーだ、うまいぞ」
目の前にコーヒーカップが置かれる。
ぺこりと頭を少し下げてコーヒーカップを手に取り数量口の中に含む。
その瞬間、コーヒーの深みのある匂いと苦みと酸味が口の中に広がる。
「うまい、いいコーヒーだな。マスター」
「だろ、毎日毎日俺の気分で変えてるからな。にしても坊主、ここらじゃ見ない顔だな?どこ出身だ?」
「ウィンド村だ、ちょっとやらなきゃいけないことができて村から出てきんだ」
「ほう、ウィンド村か。あそこは景色が綺麗だからな、いいところから来たな」
俺は深く頷いてコーヒーを啜る。
ウィンド村は山などに囲まれているためやや不便な村ではあるが空気がとても澄んでいて星空がとてもきれいなので寒い季節になると観光客で村が溢れかえる。
「そういえばマスター、いい宿知らないか?ホントならここで飯食べた後別の場所に行こうと思ったんだけどギルド側の事情で明日まで待つことになってさ」
そういうとマスターは顎に手を当てて数秒考えるそぶりを見せてると
「なら、ここからすぐ近くの宿屋 風車《かぜぐるま》がおすすめだ。
あそこは料理はうまいし従業員の態度もいい、俺のイチオシだ。」
「へぇーそうなんだ。この後行ってみるよ」
マスターは頷いて厨房の方に戻る。
風車か、名前だけだけど良さそうな感じはするな。
楽しみだ、そう思いながらコーヒーを啜る。
「ほい、本日のA定食だ。しっかり食えよ」
定食のメニューは黒パン、ハムエッグ、野菜のスープだ。
「うまそうだな、いただきます」
しっかりと手を合わせて定食を食べ始める。
まずは野菜のスープから、フーフーと冷ましながらゆっくりと口の中に運ぶ。
しっかりと出汁の効いたスープといい感じの柔らかさになっている野菜たちのうまみが全身に行き渡る。
めちゃくちゃうまい!しっかりと煮込んであってとても食べやすい。
パンをちぎってスープに浸して食べるとさらにうまい!
次はハムエッグ、黄身を割ってみるととろりと黄身が流れる。
流れてきた黄身をハムと一緒に絡めて口の中に運ぶ。
ハムの塩気と黄身の滑らかで濃厚な味わいが絶妙に混ざってとてもうまい。
あまりのおいしさに無言で食べ進める。
「てめぇのせいで!!依頼達成できなかったじゃねぇか!!」
いきなり酒場で怒声が響く。
視線を声のした方に向けるとスキンヘッドの大男が濁った銀色の髪をした少女の胸倉を掴んで怒鳴り散らしていた。
傍から見ると少女虐待のようなことをしていると思う。
そしてそのような現場を目撃した場合周りの視線は怒りや悲しみに満ちているがそれはその少女が人間だったらの話だ。
少女には狐の耳と尻尾が生えている。
勘のいい人ならこれで気づくだろう、そう彼女は獣人族だ。
この国では獣人を含む亜人への人権が存在していない。
だから基本的にこの国に存在している亜人たちは奴隷もしくは道具として扱われている。
おそらくだがあの男はサポーターに使う金を渋りその代わりにほぼ無料に近い金額で奴隷商から貸し出されている奴隷を使って安くすましているのだろう。
視線をコーヒーに戻しゆっくりと口に含む。
コーヒーを含んだ瞬間、バシンっと乾いた音の後に何かが倒れた音がこの場に響き渡る。
「知能がねぇ獣風情が!人間様の命令も聞けねぇのか!」
「......も、申し訳ありません」
男の怒声の後にか細い少女の声が聞こえる。
「それで済むと思ってんのか!」
その声の後今度はドンっと鈍い音が鳴りその後ガシャンと物の落ちる音が鳴った。
俺は静かにコーヒーを置いて立ち上がりゆっくりと男の方に歩く。
男は近づいてくる俺に気づくと
「なんだてめぇ、餓鬼はどっか行ってな!」
男が喋っているがそんなもんは知らん。
なぜなら今の俺は怒りで心が燃え上がっているからな!
「さっきからうるせんだよ!!」
「ぐぎゃ!?」
言葉と共に男の胸部にドロップキックを打ち込む。
綺麗に俺のドロップキックが当たり男は謎の言葉を発し後ろに倒れた。
その時、少女と一瞬、目が合った。
この出来事が俺の最高の相棒であり最愛の恋人との出会いだということをこの時の俺はまだ知らない。
心地の良い風を浴びながらボソッと言葉をこぼす。
あいつからのお守りをもらい村から出て早二日、最初の目的地である冒険者の街リュカに到着した。
この街に来た目的は身分証明になる冒険者カードを取るため。
理由としては身分証明になること。
この街はウィンド村から比較的近く頻繁にこっちに来ているため守衛さんとは顔見知りで身分証明がなくても問題がないのだがその他の街などではそんなことは通用しない。
一応、通行料などのお金を払えばなんとか街に入れるがそんなの金の無駄だ。
だからこの街で冒険者登録し、カードをもらえればそれが身分証明になる。
叔父さんと師匠からもらった金貨もあるがお金は計画的に使っていかないとすぐになくなってしまう。
そんなことを考えながら検問所を顔パスで通り、街の中に入る。
ウィンド村よりも広大な街並みが広がり、見渡す限り人で溢れかえっていた。
久しぶりに来たので街の様子も随分と変わり視線が様々な方向に動いてしまう。
様々なものに視線を向けながら目的地である冒険者ギルドに足を向ける。
足を向けること数分、冒険者ギルドに到着した。
今更だが冒険者ギルドとは冒険者にモンスターの討伐や素材の買い取りなどを行っている組織で支部は多くの地域に点在しているが辺境の地である俺の村にはギルドは点在していない。
だから基本的に俺の村で魔物が出たら俺か村の男衆が駆逐したあとこの街まで持ってきてギルドに買い取ってもらっている。
ギルド内に入ると前に来た時よりも新しくなって綺麗になっていた。
久しぶりに来て場所が曖昧になってるなと思い辺りを見渡すと案内板を発見した。
それに従いながら冒険者登録カウンターの列に並ぶ。
並ぶこと数分、俺の番になった。
「こんにちわ、こちら冒険者登録カウンターでございます。この登録用紙に必要事項を書いてください」
受付のきれいなお姉さんに用紙とペンをもらって必要事項を書き込む。
名前や年齢などの基本的なことから趣味などこれ関係あるのかっていうことまで書いた。
変なところは適当に書きなぐって受付のお姉さんに渡す。
「あ、書き終わったんですね!ありがとうございます!」
丁寧にお辞儀をして書類に受け取った。
「確認いたしました!綺麗な字ですね、とても読みやすかったです」
眩しい笑顔でほめられて若干照れる。
だがこういうタイプの人は苦手なのでとっとと話と登録を終わらせて飯食って別の街に行きたい。
「ありがとうございます、これで登録完了ですか?」
作り笑いをして話がとっとと終わる方向にもっていく。
「いえ、本来ならばこの後実技を行いその後冒険者カードを渡すのですが申し訳ありません、実は試験するはずの冒険者が別の依頼を受けていて今この街にいないんです」
え、マジですか。
今日中に登録完了させてこの街から出たかったのに!!
「帰ってくるのっていつですか?」
「おそらく明日になるかと、どうなさいますか?」
明日か、あんまり冒険者登録とかに時間かけたくなかったけど自分の身分証明のためだ我慢して飯でも食べて宿に泊まって寝る!
「わかりました、明日の朝またここに来ます」
「本当に申し訳ありません、明日受付に来ていただいたらすぐに実技ができますので」
「はい、ありがとうございました」
ぺこりと会釈して受付を離れる。
どうするかな?とりあえず飯でも食うか。
先程と同じ案内板で酒場の場所を確認し、足を運ぶ。
酒場につくと酒やご飯を食べている人たちで席が埋まっていた。
この時間帯混むのね、次からこの時間以外に来ようっと。
席が空いてないか辺りを見渡すとカウンター席が一つだけ空いていたのでそこに座る。
「坊主、何にする?」
席に着くと茶髪で体格もよく雰囲気もいいおっちゃんがグラスを磨きながら聞いてきた。
おっちゃんいやマスター、ダンディでかっこいいね!
こんな大人になりたいわ!!
「とりあえずA定食、飲み物はコーヒーで」
「あいよ」
磨き終わったグラスを戻して厨房の方に歩いて行った。
ふぅー-っと一息つく。
予定は狂っちまったけど明日になれば身分証明もとれる。
飯食った後は今日泊まる宿を探して金を稼ぐために魔物でも狩ってくるか。
「本日の特製ブレンドのコーヒーだ、うまいぞ」
目の前にコーヒーカップが置かれる。
ぺこりと頭を少し下げてコーヒーカップを手に取り数量口の中に含む。
その瞬間、コーヒーの深みのある匂いと苦みと酸味が口の中に広がる。
「うまい、いいコーヒーだな。マスター」
「だろ、毎日毎日俺の気分で変えてるからな。にしても坊主、ここらじゃ見ない顔だな?どこ出身だ?」
「ウィンド村だ、ちょっとやらなきゃいけないことができて村から出てきんだ」
「ほう、ウィンド村か。あそこは景色が綺麗だからな、いいところから来たな」
俺は深く頷いてコーヒーを啜る。
ウィンド村は山などに囲まれているためやや不便な村ではあるが空気がとても澄んでいて星空がとてもきれいなので寒い季節になると観光客で村が溢れかえる。
「そういえばマスター、いい宿知らないか?ホントならここで飯食べた後別の場所に行こうと思ったんだけどギルド側の事情で明日まで待つことになってさ」
そういうとマスターは顎に手を当てて数秒考えるそぶりを見せてると
「なら、ここからすぐ近くの宿屋 風車《かぜぐるま》がおすすめだ。
あそこは料理はうまいし従業員の態度もいい、俺のイチオシだ。」
「へぇーそうなんだ。この後行ってみるよ」
マスターは頷いて厨房の方に戻る。
風車か、名前だけだけど良さそうな感じはするな。
楽しみだ、そう思いながらコーヒーを啜る。
「ほい、本日のA定食だ。しっかり食えよ」
定食のメニューは黒パン、ハムエッグ、野菜のスープだ。
「うまそうだな、いただきます」
しっかりと手を合わせて定食を食べ始める。
まずは野菜のスープから、フーフーと冷ましながらゆっくりと口の中に運ぶ。
しっかりと出汁の効いたスープといい感じの柔らかさになっている野菜たちのうまみが全身に行き渡る。
めちゃくちゃうまい!しっかりと煮込んであってとても食べやすい。
パンをちぎってスープに浸して食べるとさらにうまい!
次はハムエッグ、黄身を割ってみるととろりと黄身が流れる。
流れてきた黄身をハムと一緒に絡めて口の中に運ぶ。
ハムの塩気と黄身の滑らかで濃厚な味わいが絶妙に混ざってとてもうまい。
あまりのおいしさに無言で食べ進める。
「てめぇのせいで!!依頼達成できなかったじゃねぇか!!」
いきなり酒場で怒声が響く。
視線を声のした方に向けるとスキンヘッドの大男が濁った銀色の髪をした少女の胸倉を掴んで怒鳴り散らしていた。
傍から見ると少女虐待のようなことをしていると思う。
そしてそのような現場を目撃した場合周りの視線は怒りや悲しみに満ちているがそれはその少女が人間だったらの話だ。
少女には狐の耳と尻尾が生えている。
勘のいい人ならこれで気づくだろう、そう彼女は獣人族だ。
この国では獣人を含む亜人への人権が存在していない。
だから基本的にこの国に存在している亜人たちは奴隷もしくは道具として扱われている。
おそらくだがあの男はサポーターに使う金を渋りその代わりにほぼ無料に近い金額で奴隷商から貸し出されている奴隷を使って安くすましているのだろう。
視線をコーヒーに戻しゆっくりと口に含む。
コーヒーを含んだ瞬間、バシンっと乾いた音の後に何かが倒れた音がこの場に響き渡る。
「知能がねぇ獣風情が!人間様の命令も聞けねぇのか!」
「......も、申し訳ありません」
男の怒声の後にか細い少女の声が聞こえる。
「それで済むと思ってんのか!」
その声の後今度はドンっと鈍い音が鳴りその後ガシャンと物の落ちる音が鳴った。
俺は静かにコーヒーを置いて立ち上がりゆっくりと男の方に歩く。
男は近づいてくる俺に気づくと
「なんだてめぇ、餓鬼はどっか行ってな!」
男が喋っているがそんなもんは知らん。
なぜなら今の俺は怒りで心が燃え上がっているからな!
「さっきからうるせんだよ!!」
「ぐぎゃ!?」
言葉と共に男の胸部にドロップキックを打ち込む。
綺麗に俺のドロップキックが当たり男は謎の言葉を発し後ろに倒れた。
その時、少女と一瞬、目が合った。
この出来事が俺の最高の相棒であり最愛の恋人との出会いだということをこの時の俺はまだ知らない。
応援ありがとうございます!
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