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しおりを挟む美香は結局、3連泊という事を拓真の家でしてしまった。
金曜日の夜から月曜日の昼迄、拓真の家から出る事も無く、セックス三昧だったのだ。抱き合っては食事するか、入浴するか、睡眠を取るかしかしていない。
土曜日の朝、拓真が買い物した、美香の下着達が日曜日に届き、早速着せ替えを望まれ、また盛り上がり、月曜日になってしまったのだ。
「家迄、俺の車で送ってく」
「いえ………兄がもしかしたら帰っているかもしれませんし」
「それなら尚更俺が居た方が良いだろ………あと、お前の日用品を此方に運んでおきたいしな」
拓真が心配するのはもっともな事だった。
克也の美香にする行動を、美香は拓真に説明をした。それを聞いた途端、帰宅する事を反対し、今も渋々了承したに過ぎない。
もし、帰宅するなら実家に帰れ、と言ったぐらいだ。
「そうですね………でも、荷物まとめておかないと無理ですよ。出来るか如何か分からないですが」
「そんなもん、出来なかったら身1つで良い………本当は帰したくないんだからな、俺は」
「…………ありがとうございます」
3泊した美香だが、もう義父には外泊した事は伝わっている様で、小百合との連絡時に、その話になった。おかげで、義父から美香に電話が入って来たが、やはり拓真の言う、実家に帰って来い、との話となったのだ。
「親父さんも心配してただろ」
「分かってます。今日中に荷物まとめますし、そうしたらまた此処に来ても良いですか?」
「当たり前だ」
セックスに没頭せずに、3連休の間に荷物をまとめておけば良かった、と思っても後の祭りだ。盛り上がり過ぎて、と言ってしても、克也が帰国して来たらもう遅い。
「兄貴が帰国するとしたら、どれぐらいで帰って来ると思う?」
「仕事を放り出して来るとも思えませんけど、飛行機のチケットが取れ次第、でしょうか………あと兄が何処に居るか、でも………海外を飛び回ってる筈なので………拠点はアメリカですけど」
「まぁ良い………とりあえず、お前ん家に行くぞ」
「はい」
拓真が車を出してくれて、美香は家に帰って来るが、克也は居なかった。
「良かった、居ません」
「そうか………なら、荷物まとめるぞ」
「はい!」
キャリーバッグに詰めれるだけ詰めて、美香が必要な物を車に乗せた。
「それにしても、デカイ家だな」
「実家よりかは小さいと思います」
「都心でこの敷地なら、大したもんだぞ?」
「そうかもしれませんが、愛着なんて無い家でした………全て兄の趣味が詰まった家でしたから」
拓真には、美香の部屋しか案内し入れてはいない。美香も自分の部屋以外の物を持ち出す気にはなれなかった。
「だろうな………何で、外だけじゃなく、家の中にも防犯カメラが点在してんのか、と思うと、息抜きも出来ん………これが、兄貴に見られてる、て事だろ?」
「…………はい………」
美香のスマートフォンは常にバイブレーションにしている。この3連休、特に2日目以降、克也からの着信がひっきりなしに来ている。着信やメールがある間は、移動に制限があるという事。連絡が途絶えた時、飛行機に乗っている可能性も高い。時間を算出しても、美香に克也が会いに来るのは、1日か2日以内だと美香は見ている。
それを、拓真に言って良いのか、と悩みが尽きないのだ。美香にする行動は予測出来ても、拓真にする行動が想像が出来ないのだ。
「美香、帰るぞ………俺等の家に」
「っ!…………は、はい!」
「食料尽きたから、スーパー寄って帰るぞ………3連休、デリバリーになってたしな」
「私、拓真さんに温かい料理食べて貰いたいです。だって、お弁当は冷めてますもん」
「楽しみにしてる」
だが、美香がこの日の夜、拓真に食事を作るのが1回だけになる事になるとは、この時2人は思わなかった。
幸せボケと言えばそれ迄。
美香の荷物には、美香はGPSを除去出来ていると思っている。スマートフォンは克也がGPSアプリを入れていたが、海外に行っている間、美香はスマートフォンを買い替え、GPSアプリを外したりしていたし、持ち物には細心の注意を払い、持っていないと思っていたのだ。
克也が帰国する度に、それについてのお仕置きが大変なのだが、それさえ我慢すれば乗り切れていた。
しかし、今回は恋人が出来て、状況が変わった。何が起きるのか、美香には想像が出来ない。
「おはようございます」
「あ、おはよう」
3連休を終えた会社に出勤した美香。
拓真も出勤しているが、別々に出社している。付き合いを隠すつもりは無かった美香と拓真だが、何もわざわざ公表する事も無い、と話になったので、自然に任せる事にしている。
美香が作った弁当は、会社で渡す必要も無くなり、拓真は家から持って行った。
「今日、俺は直帰する」
「直帰ですか?」
「あぁ………ちょっと………な………」
美香に耳打ちした拓真は、鍵を美香のジャケットに入れた。
「合鍵も今朝注文して作って貰ってるから、それも取りに行ってくるのと、お前の親父さんに会ってくる」
「え!…………ち、義父にですか?」
「あぁ、話をな………安心しろ、意思はほぼ同意見だ」
いつの間に、義父と連絡を取っていたのか。
美香のスマートフォンに連絡があった時はそんな話は無かった筈だったのだ。
ほぼ意見は同じ、と言われても、拓真なら拒否はしないだろうが、やはり不安ではある。
「…………心配なら、帰ったら直ぐに突っ込んでやるから」
「っ!」
「お疲れさん」
そういう心配では無かった美香だが、一瞬で想像してしまうぐらい、密になっていた時間は如何しても思い出してしまった。
そして退社時間になり、美香は残業無く帰れそうだった。
---今夜、私の得意料理作ろうっと………昨日は、拓真さんのリクエストで作った物だったから………
スーパーに帰りに寄り、美香は浮足立って駅へと向かおうと、会社から出ると、目の前でタクシーから出て来た克也の姿を発見する。
「っ!」
「美香!」
「……………お、お兄ちゃん………」
「……………美香………美香………何故、お兄ちゃんが帰国したか………分かってるよな?」
「……………」
「おっと………逃がすとでも?」
脱兎の如く走り出した美香だが、直ぐに腕を捕まれて、克也の腕の中へと押し込まれた。
「っ!」
「さぁ、乗るんだ………聞きたい事が山程ある………会社は俺から退職願を出しておいてやるから、美香はずっと…………ずっと……お兄ちゃんの為に生きるんだ」
「…………い、嫌………」
「拒否は無しだって………美香は分かってるだろ?………再教育が必要らしい………さぁ、乗れ」
美香はタクシーに押し込まれ、逃げ場を失うのだった。
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