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モートン・ゲルニカの婚約
しおりを挟むモートン・ゲルニカは商家の家の長男に産まれた。裕福だった家だが、兄弟が多く食べ盛りの弟や妹達の食費で、なかなか贅沢な暮らしを味わえなかったモートン。面倒見の良いモートンは、商家を継ぎたくなく頼られたい、職に付きたくて剣を指南してもらえる男を頼る。
軍隊長だった男、エンゲルベルト。近所に住んでいて無償で時間がある時は教えてもらっていた。だが、それも長くなかった。王女だったメリベルが婚約したのを期に、子供が多い家系に声を掛けられ、次代の後継者になるまだ産まれていない子の伴侶探しに同世代になりそうな子供を教育する、と通達があった。
「お前は参加しないのか?勉強会」
「師匠から剣を教わった方がいいな、俺」
「甘いな、お前は………国を理解する者は、出世も早いぞ?俺もそうだったしな………」
「そうなのか?」
「俺も、婚約者候補に迄は選ばれた事はある…………候補止まりだったがな」
「へぇ~」
剣を交えながら、エンゲルベルトの言葉に興味が沸いたモートン。参加するだけ参加しようと、両親に話すと反対は無かった。首都に住む者なら誰しも知る勉強会だからだ。子沢山の家系であれば必ず通達が来る物だったからだ。
「すげ~、参加者だな」
だが、この半数以上は先ず落とされる。結婚する者や、辞退する者、勉強についていけない者等、理由は様々。そんなモートンに気になる男が居た。いかにも貴族だろう、という佇まいに頭の良さそうな知的な雰囲気。そして、同じ名前のモートン。
「なぁ、何でお前は参加したんだ?」
「私か?私は、水神と国王の関連を知りたかったのと、叔父上が王女の婚約者になったから、どんなものかな、とね………君は?」
「俺は師匠から出世出来るぞ、て言われた……商家の長男だけど、家継ぎたくなくて、騎士になりたいんだよね」
「あぁ、だから筋肉質の体型なんだな」
「お前は貧弱そうだよな」
「運動はしてるさ、でも体力はある方ではないからね」
直ぐに意気投合した2人のモートンは益々、勉強の内容に面白さを感じた。
「でもよ、王女が産むのが娘じゃなきゃ、俺ら用無しだよな」
「用無しな訳じゃない、最後迄残ったら将来にも役に立つ。出世とか?」
「ああ、それ大事」
そんな話の最中、王女が懐妊した、と聞かされた。モートンはその頃既に軍に入っていてメリベルには会った事はなかったが、城内にはメリベルの肖像画が何枚も飾ってあり、美人だというのは知っていた。フェルドマンを城内で見つけると、たまにメリベルの肖像画を眺めうっとりしたフェルドマンも知っている。
「お前、王女に恋してたのか?」
「いや、叔父上から聞く王女の雰囲気と肖像画が違い過ぎて思い出して笑って見ていたぐらいだぞ」
「どうだか………そっくりな娘だったらどうするよ」
「…………だったら絶対に婚約者になってやる……純真無垢だとは思わないが、処女を開発する楽しみが味わえるからな」
「…………お前、変な趣味だな………童貞じゃないんだろ?」
「童貞ではないが………処女相手はないんだよな」
「王女相手に開発、て面白そうだな」
「王女ならな」
だが、産まれたのは王女。2年程してから、エンゲルベルトは軍を辞めてしまった。そして、月日は流れフェルドマンから面白い話を聞く。
「10年程前に、街が出来ているのを知ったんだ、ここから5日程掛かるが行ってみないか?」
「は?何で」
「王女が産まれて出来た街、その後王女の姿を城で見られていない……慣例で12歳迄居住地を移されるんだ………女王の第1夫である叔父上は知らないと言ったから、探し出した」
「そこに王女が居る、と?」
「ああ………婚約者候補として会ってみたい」
「そりゃ俺も見たいが………」
フェルドマンに押し切られた形で、護衛兼ねて町へ行ったゲルニカ。そして確信した。
「ここ……全員武装してやがる」
「そうなのか?」
「あぁ、旅人だと言い切れよ、フェルドマン」
「じゃあ、ここの可能性ある訳だ」
ゲルニカは確実に居ると思った。
「居た………彼女だ」
「……………如何して分かる?」
「彼女の側に居るの………俺の剣の師匠だ……10年前、病弱になった両親の面倒見る、て言って首都を離れた…………げっ!バレた!!逃げるぞ!」
「あ!おい!」
ゲルニカの師匠だったエンゲルベルト。その男がゲルニカを見つけた。遠く離れていてめ小さい声だったのに、ゲルニカは見つけられエンゲルベルトは追い掛けてきたのだ。そして捕まる。フェルドマンを連れては、ゲルニカは逃げれなかった。
「久し振りだな、モートン」
「し、師匠……なんすか、ここに居たんですか………びっくりしましたよ~、あんな可愛い娘居たんすね!」
「…………他言無用だ……分かったな……」
「メリッサ………ですか?娘さんの名前………」
フェルドマンが探りを入れる。
「!!………お前は?」
「モートン・フェルドマン……現国王の第1夫の身内です」
「フェルドマン家か………確か優秀な子が居て、婚約者候補筆頭だと聞いたな……」
「師匠!!俺も候補っす!!でも今ひとつ決定打が無くてですね、師匠のコネ…………ぐえっ!」
「他言無用にするなら、推薦しといてやる……もう帰れ、でなければ森で狼の餌にするぞ」
「「……………り、了解です」」
逃げ帰るしかなく、首都に着いた2人のモートン。だが、ゲルニカは婚約者婚約者の1人に推薦された。エンゲルベルトが推薦したという。
『バラしたら直ぐに推薦は取り下げる。馬鹿で面倒ばかり掛けさせられる弟子への師匠からの餞別だと思って受け取れ、頑張れよ』
と、手紙が送られた。師匠が育てた娘は可愛かった。肖像画の母メリベルとはまた違う。出世にと思った道だが、選んだ道は悪くない、と思ったゲルニカ。少し日が経ち、フェルドマンが先に始めた調教。あの田舎町に居た時とは違う着飾った王女は、ゲルニカの心をときめかせた。出世は二の次だ、と思った瞬間だった。
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