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22 *グリファード視点
しおりを挟む王城、グリファードの執務室では常に苛々したグリファードが仕事をしていた。
「一緒に行きたかった………行きたかった………行きたかったって言っただろ!」
「…………はいはい、分かりましたので仕事して下さい。今日の処理分終わらないと、エルシア様と夕食を食べれませんよ」
「…………ちっ……」
「猫被って下さいよ、グリファード殿下。臣下達が入れ替わり立ち替わり、面会が来るのですから」
グリファードの素顔は、重鎮の臣下しか知らない。
普段、仮面公爵で社交場に出ているからなのもあるが、その上で病弱で通している。
本人は至って健康体で、性欲も強めの絶倫なので、身近なスチュアートやレックス、直属の部下達は話を合わせるのは大変だった。
「怒鳴り声が廊下迄筒抜けだぞぉ、グリファード」
「……………勝手に開けるな、兄上」
「顔パスだろ?俺は」
「許可してない」
「許可しろよ」
「しない」
王太子マスタングが、警備も連れずにグリファードの執務室に来るのは、グリファードの執務室を、人目に付かない王族居住地内の部屋にしているからだった。
「機嫌悪いなぁ、グリファード………昨日、エルシア夫人と部屋に篭って出て来なかったのは、喧嘩して仲直りの為の時間だったんじゃないのか?」
「…………喧嘩なんてしてない………というか、何故兄上が知ってる?」
「スチュアートがエルシア夫人とシケ込んで、出て来ない、て言ったから、勝手に想像しただけ」
「スチュアート!もう少しオブラートに包めよ!」
「本当の事を伝えただけですよ」
マスタングに筒抜けなら、恐らく父である国王も聞いているだろう。
「お前、クビにするぞ、スチュアート」
「勘弁して下さいよ。私以上にグリファード殿下の世話が出来る臣下が何処に居ますか」
「だよねぇ、スチュアートは優秀な男じゃないか」
「……………で?何の用だ?兄上」
「あ、うん…………ウォーレス侯爵領の製造工場、領地の本邸と別邸以外は無かったんだろ?」
「そうらしい………彼処と栽培している畑を焼き尽くせば作れない筈だが、種が残ってたら駄目だ。種も探していて処理しないと、あの土地は暫く人の横行は禁止しておいてくれ」
「あぁ、それはもう手配した………ただ、工場がまだあるんじゃないか、と俺は思ってる」
「他にもある?ウォーレス侯爵が所有する物件は虱潰しさせたぞ」
「ならば、麻薬の流通量との差はどう説明がつくんだ?健康体の人間が常習的に摂取し、廃人になる迄の期間に疑問が残る。まさか領地以外の場所に作ってはいないか、と思って……」
グリファードも頭がキレるが、マスタングも負けてはいない。
「尋問では何も聞き出せてないのか?」
「自白剤を打とうか、と今検討中………その前に、お前が知ってるなら、と………証拠資料には無かったからさ」
「証拠資料は全部運ばせたぞ」
「うーん………俺の見当違いなら良いんだがなぁ……これが、もし国外製造されて密輸されてた、なんて事があれば、イタチごっこだ」
「ちょっと待て………そうなったら、俺ののんびり生活がまた先延ばしになるじゃないか!」
「何、遊んで暮らそうと思ってるんだ、グリファード………お前は第二王子だって立場を忘れるなよ。俺がもし早死して後継者が居なかったら、お前が国を統治するんだぞ!」
「……………絶対にそれは嫌だ」
「嫌なら、徹底的に調べてくれよ。こっちは尋問で絶対に吐かせるからさ」
処理だけでも労力が足りないのに、更に仕事を増やされたグリファードは、溜まっていた書類を持ち上げて投げた。
花弁の様に舞う書類の山の下で、スチュアートがウンザリした顔でグリファードに睨んでいたのは誰も知らない。
「だぁぁぁぁぁぁっ!」
「片付ける身にもなって下さいよ。ウォーレス侯爵領にはまだ部下を配備してますよね、馬車馬の様に各1軒1軒、また調べ直すしかないと思いますよ。民の人権を考慮して、関係者以外の民家や店、施設は探させませんでしたよね」
「……………また、処理が溜まる………面倒臭い………仕事が増える………時間が足りない……自白剤使えよ、あんなクズに遠慮する事無いんだって」
「壊れないで下さいね、殿下…………エルシア様が邸でお帰りを待ってるんですからね」
「……………スチュアート、拾っといてくれ」
「拾ってますけど!」
充分、グリファードはスチュアートに甘えている。
「このグリファード殿下の姿、エルシア様に見せたら、どう思いますかね?嫌われないと良いですねぇ」
「っ!…………スチュアート!レックスを呼べ!」
「レックスならエルシア様に同行してますよ。殿下が指示しましたよね?殿下が衣装の採寸に行けないから、体格が似ているレックスを代わりに行かせたんじゃないですか」
「そ、そうだった…………優秀な者を直ぐにウォーレス侯爵領に行かせろ」
「御意…………直ぐに指示を出しますから、殿下があと拾っといて下さい」
「……………あ………」
「本当に、面倒臭い人だって、早くエルシア様に知っておいて欲しい………」
こういう、裏の顔がグリファードにある事にエルシアは知る日が来るのだろうか。
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