お見合い、そちらから断ってください!【完結】

Lynx🐈‍⬛

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【航side】現実とゲーム

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 航は、帰る事無く仕事終わりであろう、律也と裕司を呼び出した。
 彬良も呼んだが、仕事がまだ終わらないと言うので、来れないかもしれない。
 バー白河のカウンターで、ビール片手にナッツを摘んでいる。

「いらっしゃいませ………裕司さん、ご無沙汰です」
「よお、店長やれてるか?」
「まぁ、何とか………航さん、奥に居ますよ」

 裕司が店長だった時に下に居たスタッフが店長になり彼に軽く挨拶すると、航の横に裕司が座った。

「如何したよ、航」
「…………なぁ、裕司……お前、ゲームに詳しいか?」
「何、冒頭に聞いてきやがる……俺が詳しい訳ねぇだろ」
「………だよな」
「何だよいきなり」
「ライバルがゲームキャラだったら、お前如何する?」
「…………意味分かんね………ネジ取れたか?お前」
「正気だっての」

 裕司にもビールが出され、航と乾杯すると、裕司がゴクゴクと飲んで一息吐く。

「見合い相手と如何よ」
「如何よじゃねぇよ……騙されて見合いさせられた怒りはてめぇ等には消えてねぇぞ」
「律也が発案者だが、俺も彬良も心配したんだぜ?同棲してた女と結婚決めてから、紹介されると思ってたら別れてんだから」
「我慢出来ねぇんだとよ……俺への嫉妬が」
「…………別れた理由?」
「そう………デートしても、目線来るだろうが……俺もお前も」
「……………あぁ………あのウザイ目か……無視させときゃ良かったじゃん」
「お前とは違うんだよ、俺は」
「悪かったな、軟派でよ」

 ナッツを口の中にポイポイと放り込む裕司は、航の事はよく理解している。
 今でも時折、紗耶香と外に出ると嫉妬の目線が紗耶香に注ぐのだ。その都度、裕司は紗耶香に触れて、紗耶香自身の嫉妬を和らげてはいるが、紗耶香は裕司と付き合いが長いのもあり、気に止める素振りは見せない。裕司への目線はそれが当たり前だからだ。

「………で?……そんな事を聞くぐらいだから、見合い相手の娘と付き合う気か?」
「………さっき、優馬の働くカフェで会ってた」
「優馬?………あぁ、店長になったから、激励にお前行ったのか」
「店の近くで、亜里沙ちゃんと偶然会ってな……序でに店行った時に、『付き合ってみるか』て言ったら断られた」
「お、またフラれたか、航」

 航の不幸そうな事に楽しそうな裕司。

「………フラれてねぇよ、完全にな」
「………断られたからフラれたんじゃねぇのかよ」
「間野家から見合い断ると、速水物産との取引に支障来るかもしれないから、俺から律也に断ってくれないか、と言われたんだよ………亜里沙ちゃんの意思抜きでな」
「プッ…………体のいい断り方だな、おい」
「何だ、航フラれたのか」
「!………律也!」
「俺もビールで」
「はい」

 律也も到着し、航を挟み座ると、律也さ航を見ている。

「別に間野家から断られたって、間野フーズとの取引に支障は無いけどな」
「亜里沙ちゃんや、親父さんはそう思ってるとおもうぞ………あ!律也!てめぇ、何で俺の連絡先教えた!」
「俺、聞かれてないぞ」
「あ、俺が教えた」
「裕司か!」
「航には面白そうな娘だな、と………親父さんに聞かれたのもあったし」
教えてないぞ………航……」
「謝らねぇよ、律也にも!………騙して見合いさせやがって………」

 3人共にビールが揃い、再びグラスを重ね、喉を潤す。
 航は怒りはあったものの、亜里沙が気になり始めたのもあってか、怒りは律也にも裕司にもぶつけなかった。

「それで?亜里沙さんの事、前向きになったのか?航」
「律也は、別に会社ぐるみで考えなくていい、て言ったよな」
「航は速水物産の社員でもないしな。本当に、話は間野フーズの社長から雑談で出た話だったんだよ………大学在学中にはそれなりに、交際していた相手は居たらしいが、卒業と同時に大学時代の友人達と関わらなくなって、仕事が休みの間は、いつも家に篭ってゲームしてる、て言ってて、恋愛から遠ざかる娘を心配してたしな」
「…………ゲームかぁ……」
「何のゲームに夢中なのかは知らないぞ、聞いてない」
「………ラ○ン交換したら、あの娘の推しキャラがプロフに貼ってあった……」
「何のキャラだよ、コレ」
「知らね………でも、上半身裸の男のキャラ……」
「「…………プッ!」」

 律也と裕司がビールを飲んでいて、思わず2人がビールを吹く。

「汚ぇな!お前等!」
「わ、航………その推しキャラ、て……恋愛系ゲームのキャラだったりしないか?」
「俺が知るかよ」
「…………あぁ、だからゲームの推しキャラがライバルかも、て言ったのか!航」
「…………ぐっ!」
「よくまぁ、面倒くさそうな娘に興味示したね、航」
「お前が紹介したんだろ!」
「仕事以外で会った事無かったのに知る訳ないだろ」
「何なに?面白そうな話してんじゃねぇか、航」
「げっ!彬良も来たか」
「お前が呼んだんだろうが」
「こんばんは、航さん、律也さん、裕司さん」

 カウンターの背後で、航の肩に手を置き、彬良が顔を覗かせた。その後ろには茉穂が子供を抱いている。

「顔だけ出しに来たんだが、何だか面白そうな話してるよなぁ………お前達」
「…………彬良、私先に帰ろうか?で話した方が良さげだし?」
「茉穂ちゃん、分かってるね」
「だって、長くなりそうじゃないですか、律也さん………航さん、お見合いした話でしょ?女性目線の意見欲しかったら私もアドバイス出来るかもだけど、この子居るしね」
「俺ん家行くか?」

 彬良に誘われ、航と裕司、律也はバーから移動し、彬良と茉穂の住むマンションに移動したのだった。
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