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万里紗猛攻撃……亜里沙は…
しおりを挟む亜里沙がスマートフォンのアラームで起こされると、深夜に航からラ○ンに連絡が入っていた。
それに気が付かず、亜里沙は母屋に居る父、太輔に見合いを断る様に願い出ようと、話に来ていた所に、再び航から『おはよう』のラ○ン。
「げっ!」
「亜里沙、如何した」
「う、ううん!何にも!………と、兎に角!航さんとの見合いは無しね!万里紗にも却下だから!」
「何でよ、お姉ちゃん!お姉ちゃんが無しになるなら私が航さんと結婚してもいいじゃない!」
「ま、万里紗はきょ………あ、いや……万里紗、頑張れ」
亜里沙がスマートフォンの画面を航からのメッセージを開いたまま、万里紗の肩に手を置いた。
それが万里紗は視界に入る。
「あ!お姉ちゃん!航さんとラ○ン交換してる!ズルい!」
「っ!な、何の事?………あ!万里紗!スマホ返せ!」
「…………やっぱり!……何でお姉ちゃんに航さんのスケジュールを知らせに来る訳!?お父さん!お姉ちゃんにも連絡先教えたの!あれ程お姉ちゃんに航さんの連絡先教えないで、て言ったのに!」
「……………万里紗………アンタ……どんたけズルいのよ!」
「ズルくないと、お姉ちゃん航さんを好きになるじゃん!きっと!」
「…………は?」
「亜里沙も万里紗も黙れ!………亜里沙、お前の見合い相手は小山内さんだ!万里紗!小山内さんが亜里沙を気に入っている様なら、お前は亜里沙と小山内さんの邪魔するんじゃない!」
間野家、リビングで朝から怒号が飛び交い、何事かと離れていた母と将太がやって来る。その隙に亜里沙はスマートフォンを万里紗から奪い返す。
「あっ!………こんな恋愛偏差値低いお姉ちゃんには無理だってば!お父さん!」
「無理か如何かは小山内さんが決める事だ!万里紗!」
「…………私だって権利あるでしょ!……あの時、速水物産側の人達は皆左手薬指に指輪してたんだもん!皆カッコ良かったし、お近付きになるチャンスぐらい頂戴よ!」
―――万里紗……アンタそんな所迄見てたの!
万里紗は航に近付くにしても、律也や裕司、彬良にも色目を使う気なのかが心配になってくる。
「万里紗………アンタ……何か企んでないでしょうね」
「あの中に居たいって思ったんだもん!速水さんの奥さん、あんなにいっぱいのイケメンに囲まれて逆ハーレムじゃない!」
「ア、アンタおかしいよ!そんな考え!」
「お姉ちゃんだって、ゲーム内では逆ハーレムしてんじゃん!」
「ゲームと現実と一緒にするな!万里紗!」
朝から喧嘩が勃発し、太輔と将太は2人を止めた。
「亜里沙、もう止めんか!」
「万里紗、その考えは間違ってるぞ!姉ちゃんの見合い相手は物じゃない!」
「っ!お姉ちゃん!スマホ見せて!」
「………あっ!万里紗!」
万里紗も、自分が我儘なのは分かっている筈だ。見合いの場での羽美を見て、羽美が夫である律也や兄の航以外と親しそうな姿が、甘やかされて育った万里紗が居るべき場所だと思いたいのだろう。
亜里沙のスマートフォンをまた奪い、自分のスマートフォンで画面を写真に納めた万里紗。
「万里紗!そのスケジュール見て、航さんに連絡するのはやめなさいよ!いいわね!航さんの許可取ってあげるから、待ちなさい!」
「そう言ってお姉ちゃん、先手打つつもりでしょ!何?優位に立ってるつもり?」
「そうじゃないけど!航さんには航さんの都合があるでしょ!航さんとラ○ン交換したのだって、本当に偶然でそうなっただけなんだから!」
「…………くっ!」
「あっ!」
万里紗は亜里沙に腹を立て、亜里沙のスマートフォンを投げた。当たり所が悪かったのだろうか、液晶画面がバキバキに割れ、スマートフォンの起動が出来なくなっている。
「万里紗!このスマホ、仕事でも使うんだからね!如何してくれんのよ!」
「これで、お姉ちゃんと平等になったじゃない………ラ○ンの交換なんて、電話番号だけでその人か分かんない事あるよね……お姉ちゃん、どうやってラ○ン交換したの?」
「…………そ、それは……」
亜里沙がキレてる万里紗に言える訳が無い。言ってしまえば、万里紗はもっとキレてしまう。
「万里紗!いい加減にしないか!」
「お父さん!いいでしょ?私がお見合い結婚したって!速水さんには断れないんだから、私だっていい筈よ!」
「万里紗、一旦落ち着け!………亜里沙、直ぐにスマホを変えて来い………半休にしてやるから」
「…………うん、ありがとう、お父さん」
「お父さん!お姉ちゃんに甘いよ!」
「万里紗………万里紗も相当お父さんに甘やかされてると思うけど?」
「お兄ちゃんは黙ってて!」
亜里沙は万里紗に気付かれない様に、リビングから出て行く。
「お母さん、万里紗宥めといてよ……あれじゃ、多分………航さんには相手されないと思うよ……航さんは大人だし、あんな子供っぽい我儘じゃ……」
「…………そうね……アレは小山内さんにも速水さんにも失礼だわ」
「…………会社行くね……今から、ショップ行っても開店してないし」
「気を付けて言ってらっしゃい、亜里沙」
「うん」
亜里沙が車に乗ると、大きな溜息を吐く。
―――久々に万里紗の癇癪見たな……
我儘に育った万里紗は、自分の思い通りにならないと、怒りを自分で抑える事が出来ない。だから甘やかされてしまったのもあるだろう、と何度となく治療させた方がいい、と亜里沙は言っていたのを、また両親に言わねばならない、と思うと気が憂鬱になった。
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