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誤解から始まる進展
しおりを挟む亜里沙がスマートフォンを買い換えた直後、ひっきりなしに着信が入る。
留守番電話には取引先からの連絡だけでなく、航からの連絡だ。ラ○ンのメッセージにも、怒っているかの様な内容。
『何で、君の妹が俺の休みの日を知ってる!早く理由を聞かせろ!』、『着拒か!』、『未読のままにすんな!』、と連なるメッセージ。
―――あぁ……やっぱり万里紗……
亜里沙がメッセージを返すと誤解を招きそうで、ショップを出て直ぐに電話を航に入れた。
『もしもし!』
「………間野です……」
『んな事は知ってる!何で直ぐに出ない!』
「………ごめんなさい………スマホ、壊れたんです……今、買い換えて」
『…………壊れた?………何かあったのか?』
スマートフォンが壊れて使えないと聞かされて、亜里沙が航に嘘を吐く意味も考えられないので、航は亜里沙の言葉を聞く気になった。
「…………まぁ、ちょっと……航さん、仕事中ですよね?話すと長くなりそうなので、ラ○ンで伝えてもいいですか?見れる時に見て貰えれば……」
『…………あのよ………俺に関わってんじゃないだろうな?』
「っ!…………そ、それはラ○ンで……」
『…………お前な!』
「ひっ!」
今迄、亜里沙ちゃんと呼んでいた航が、お前呼びした為、亜里沙は驚き、小さく悲鳴を上げてしまった。
航ものらりくらりと誤魔化されるのは嫌いなので、怒鳴ってしまう。
『あ、すまねぇ………感情的んなるとつい……でも、口説きたい女には俺自身を知っててもらいてぇから………お前、て言っても驚かないでくれ………』
「び、びっくりしただけ………なので……」
『俺に関わってんだろ?それなら気になって仕事に手が付けられねぇよ!どうすんだ、気になり過ぎて手元狂って、指切り落としたら!』
「そ、そんな事望んでませんよ!」
『なら言えよ、今すぐ!』
航に言いくるめられた気もするが、心配をされていたのは亜里沙にも分かる。
スマートフォンの買い替え中、若しくは万里紗が大学に行っている間、航に連絡した万里紗が余計な事、若しくは失礼な事を言ったに違いないからだ。
「…………朝、航さんからのラ○ンを万里紗に見られて………ラ○ン交換した事も、万里紗には癪に障ったんです」
『…………あぁ……それで?』
「………万里紗はスマホに表示された航さんのメッセージを写真で撮った後、私のスマホを投げて壊して………だから、今…………こう……」
『………なるほどね………また見られると困るから、俺のプロフから俺の名前変えといてくれ………万里紗ちゃんには、俺の方でも対処しとく』
「すいません、万里紗が迷惑をお掛けして……」
『…………なぁ……』
「はい?」
『亜里沙は土日休みだろ?』
これまた急に、ちゃん付けでもお前でもない呼び捨てにされた亜里沙。
「よ、呼び捨て………あ、あの………いきなりですか!」
『あ?………いいじゃん、口説くって俺言ったよな………で?土日休み?』
「…………あ、はい……」
『土曜、朝から予定空けといてくれ。俺は夕方から仕事する様に調整するから………あ、あとバイク使うから、スカートにすんなよ』
「え!」
『時間と待ち合わせは、後でラ○ンする』
航は言いたい事だけ言って、通話を切ってしまい。亜里沙が文句も言いようにも、また電話しても仕事の邪魔をすると思うと、電話は出来ない。
「な、何を勝手に決めてんの!この人!私の都合は!」
街中で発狂し、亜里沙は注目の的になり、急いでその場を離れる。
―――私だって忙しいんだからね!イベントまた始まったし、今度こそランキング上位に行きたいし……………ゲームしかしてない……ど、如何しよう!デートって事だよね!わ、私デートなんてここ数年してないって!何年振り?………大学在学中から………6年!わ、私でいい訳?あのイケメン!ちょっと!私如何したらいいの!
友人達とも縁も切ってしまい、今友人という友人なんて居ない亜里沙に、勿論相談出来る者は居ない。
干物女に長年居た亜里沙のバイブルは、恋愛ゲームしか無かった。
―――こ、攻略しなきゃ!………あ、いや失敗してもいいんだ!私結婚する気も無いし、見合い断られる気でいたし………そもそもあんなイケメンが私に興味持つ訳が無い!干物女は干物のままでいいのよ!
今の生活から脱却しようとしない亜里沙と、亜里沙が知らない所で、脱却させようと口説く宣言した航。
航が本気になったら、どんな手を使い、どんな言葉で亜里沙を口説くのか、亜里沙の中ではリアル恋愛シュミレーションゲームをしている気になってくる。
―――あぁ!駄目だ!バットエンドにするんだ!ハッピーエンドになんてしちゃ駄目なのよ!逆考えなきゃ!
亜里沙のゲーム攻略の知識では、ハッピーエンドの攻略プランしか思いつかない。バットエンドのストーリーにさせる為に、頭をフル回転する日がこれから続いてしまいそうで、亜里沙はゲームをするにも集中は全く出来なくて、結局航が指定する土曜日が近付いていくだろうと思うと、ただ時間だけ過ぎていったのだった。
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