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日本人形?
しおりを挟む彬良から、航に連絡が入ったのは、万里紗がホテルでひと悶着した後だった。
「…………彬良、俺悔しいんだが……」
『何が?』
「律也の想像通りに事が進むのがだよ!」
『面白い程進むな』
「………あぁ、ムカつく!」
『ところで………茉穂が亜里沙ちゃんに会いたがってんだが………』
「茉穂ちゃんが?」
『連れて来いよ、今日お前休みだってのは知ってんだよ』
「…………あぁ……休み変えた」
『何で?』
「…………亜里沙の妹に以前のスケジュールバレたから」
『…………亜里沙……ね……』
電話越しに聞こえた、彬良の失笑。
「何だよ」
『………本気か?』
「…………あぁ……惚れた」
『………良し!なら祝わねぇと!早く皆で集まろうぜ!その前に茉穂に会わせろよ!』
「今、簡単に決めれる訳ねぇだろ!」
『裕司や律也の方ばっかり会わせてんだろ?』
「お前達が土日関係なく、時間も不定期だろうが!」
『それ言われると……兎に角、お前の休み教えろ。彼女連れて来い、休み合わせてやるから』
そうして、休みを合わせて彬良夫婦のマンションにやって来た亜里沙と航。
「え!凄い!何このマンション!」
「あのホテルの支配人は、大金持ちなんだよ」
「…………航、凄い人と友達なのね……」
初めてセックスした後、朝には敬語に戻した亜里沙だったが、航に敬語を止めろと、尽く言われ敬語を止めた亜里沙。
亜里沙に、ホテルでの万里紗のひと悶着は、航は教えてあるが、詳しく知りたいのなら彬良に聞いて来よう、と亜里沙と来た彬良夫婦が住むマンションを亜里沙は見て驚いている。
「そうなんだよ、これが普通の反応なんだ……もう、麻痺したわ俺」
「驚かない人居るなら見たい」
「彬良だろ、紗耶香ちゃんに律也………羽美もそっちに入ってたな………」
「…………中小企業の会社社長の娘は一般人です」
「良し………それでいい……入るぞ」
コンシェルジュに一声掛け、彬良夫婦の部屋に上がると、茉穂が迎えた。
「航さん、亜里沙さん、ようこそ」
「こ、こんばんわ……はじめまして、間野 亜里沙です」
「茉穂ちゃん、彬良は?」
「まだ帰ってきてないわ……もう直ぐだと思うけど………ところで亜里沙さん、日本人形みたいね」
「え?………言われた事ないですよ?」
「日本人形?」
「うん、黒髪がサラツヤストレートで綺麗だな、と」
「…………あぁ、確かにサラツヤの髪だよな」
「羨ましいわ………私には無いもん」
「いいんじゃね?彬良が茉穂ちゃんを好きなら」
「へへへ……さ、上がってよ………穂澄も大きくなったよ」
穂澄とは、彬良と茉穂の娘だ。
「お邪魔します」
中に入ると、また亜里沙は驚くが、茉穂は亜里沙に話掛けた。
「楽しみにしてたの、私……亜里沙さんに会うの」
「え?私にですか?」
「そう!だって、シスコンの航さんが本気になる人よ?しかもゲーマーだって?あの恋愛シュミレーションゲーム、ホテルでも流行ってて、亜里沙さんの推しが航さんに似てるんだもの。応援したくなるじゃない」
「ま、茉穂ちゃん………その事は亜里沙には言ってな………」
「…………確かに推しキャラには似てますけど、私今もうあのゲームやってなくて………航のマンションに住んでるのもありますけど、もういいかな、て………だって、今の推しが航ですから」
「っ!」
「……………良かったねぇ!航さん!………そうと分かれば早速羽美さんと紗耶香さんに、ラ○ン送らなきゃ!」
「おい!何だよその連絡網は!」
「え?旦那達が仲が良いから、私達妻同士も仲良くなりたいじゃない?だから、グループ作ってるの。知らなかった?」
「知らん」
「旦那達の事は筒抜けなのよ~」
「なっ!」
茉穂が高飛車に笑う。女王様気質ではないが、面白そうにしているので、彬良に感化されたのだろう。
「初めはね、紗耶香さんが裕司さんとの仲で悩み多かったから、羽美さんと交えて相談乗ってたの……でも、今はその悩みは無さそうに幸せにしてるじゃない。だからそのままにして雑談してたら、旦那達の仲良さそうなのが羨ましくなって今も続いてる」
「ふ~ん……そうなんだ……確かに紗耶香ちゃんと付き合い始めた時は、悩み多そうだったからな」
茉穂が用意した手料理をつまみながら、裕司と紗耶香の馴れ初め話を聞いていると、彬良が帰って来る。
「やっぱり先に来てたか、航」
「おう、先やってる」
「ただいま、茉穂、穂澄」
「おかえり、彬良」
自然にハグからのキスを人前で平気にする彬良と茉穂。
「おい、わきまえろや、彬良」
「何?お前達やらないのか?」
「やらん」
「……………」
「ま、そうだよな……最近だしな、同棲……で?そっちは何か変わった事は?」
「…………ホテルの一件から進展ねぇな……裕司が揃えた機器のおかげで、実行者は分かりつつあるけどな」
「俺、今何も活躍してねぇな……つまらん」
「彬良はその威圧的体型で逃げてくさ………ほら、活躍」
「くれぐれも、警察沙汰や怪我はしないでね?彬良も航さんも」
「大丈夫だろ、律也の考えたプランで行けば……俺達は手出ししない………で、亜里沙ちゃんの妹は諦めて病気治療………あ、あとあれか?……就職の……」
「…………あぁ……律也が、あの大学からの就職希望者の根回しな……速水物産、白河酒造、間野フーズとお前んとこの系列ホテル全部と、取引ある企業の内定取消、採用不可………かなりアレは律也キレたからな」
「おっそろしい奴だよな、律也………俺も話聞かなきゃ、やり過ぎなんじゃないか、と思ったが発端は亜里沙ちゃんなんだろ?」
「家で私が彼等に言った事ですよね?………そうだと思います………企業家としてそんな社員雇いたくありませんから」
律也が考えた事は恐ろしい事だとは亜里沙も思ったが、関係企業にも根回しする準備もしていると聞き、本当に実行されるなら待機は必要だと言って、律也は動いていたのだ。
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