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サプライズ
しおりを挟むアリシアがウィンストン領主の婚約者として生活するようになってから半年程経とうとしていた。
朝から、薬草の種類や手入れをカイルやセルゲイ、セルゲイの妻であるルルーシュから教わりながら、幸せを感じていたアリシア。
「奥様、明日迄街の薬屋から頼まれている納入分はこちらのですよね?」
「あ、そう!それよ。あと、隣の村へのはその横の小さい箱に入ってるわ。」
「ありがとうございます、奥様。」
「まだ奥様じゃあないんだけどなぁ……。」
ウィンストン邸へ荷を運ぶ業者に配送を頼んでいたアリシアは忙しくしていた。
植物を扱う為に、今迄して来なかった水仕事をする事で、手も荒れ放題の状態で、ドレスも最近着ることも無くなっていた。
カイルとの結婚式もまだ挙げておらず、婚約者という立場にアリシアは寂しく思っている。
しかし、領主夫人の仕事を熟しているアリシアを誰もが領主であるカイルの妻だと、既に周知になっていた。
「奥様。」
「………はい?何?ルルーシュ。」
「今日はお仕事は夫や家の者にお任せ下さい。明日はもっと忙しい日になりますから、奥様はご準備を。」
「準備?何かあった?」
「はい、本邸の大浴場に侍女達が待っております。」
「?………お風呂?今から?」
「はい。」
ルルーシュに連れて行かれたお風呂には、侍女達が準備万端で待っていた。
「な、何が始まる訳?」
「今日は、全身隅々迄奥様を磨かせて頂きます!旦那様もですが、夢中になり過ぎると奥様も見目に構う事なく雑にされておられますから!」
「顔に泥を付け、手荒れも酷いですわ。」
「日に焼けて、肌の日焼けも手入れしなければ!」
「だ、だから何が今から始まるの!」
服を剥かれ、全裸にされたアリシアはカウチに寝そべさせられる。
「…………こんなケア……アードラに居た頃以来なんだけど…………。」
「今日は特別ですから!」
その頃、カイルは邸の門に出ていた。
「お久しぶりでございます、アドラード王、アマンダ妃。」
「カイル殿、この度は招待を頂きありがとう…………アリシアは?」
「今彼女は、身体を清めています。どうぞ、離れに部屋を準備しております。」
アリシアが大浴場に押し込まれている間、アドラードとアマンダが来るという事も知らされてはいないアリシア。
「まぁ、素敵な庭園だわ。」
「素晴らしい。」
「ここにある物は全て薬草なんです。離れからは花を中心に庭の手入れをしています。」
「ほぉ………こんなに多くの薬草があるのだな。」
「アドラード様、アードラでも薬草を少し作らせましょう。花が咲く物もあるなら、目にも身体にも良いのでは?」
「では、今の時期に成長しやすく、育てやすい種をお渡しします。ハーブ等は香りも良いですから、紅茶に入れて飲まれても良いかと。」
「紅茶に?果物等は入れた事はありますけど………。」
「では、後程家令を勤める者に淹れさせましょう。彼女はハーブに詳しいので。」
ルルーシュはアリシアを大浴場に押し込めた後、離れで出迎えをしていた。
カイルはルルーシュを見ると、アドラード達に紹介する。
「ルルーシュと申します。ハーブティーをアリシア様のお父上様とお母上様にご賞味頂けるなど、光栄ですわ。」
離れのリビングに案内した後、カイルはアドラードとアマンダに話をする。
その間に、アードラから連れてきている侍女達の前でハーブティーの淹れ方を披露するルルーシュ。
「実は、明日の事はアリシアには内緒にしているんです。」
「内緒?」
「結婚式は挙げるのでしょう?カイル殿。」
「はい、勿論です。そうでなければ、アードラへ招待等出しません…………アリシアはウィンストン領に来てから、休みなく私の為に働いてくれています。邸の侍従達からも信頼を得て、領土内の民からも領主夫人と認められてきました………ですが、必死になり過ぎて結婚式の事を忘れている節がありまして、準備をしようにも出来ないと思い、ルルーシュを中心に式を挙げようと。」
「…………アリシアは明日の結婚式を知らないとは面白いではないか。」
「なので、アリシアはアドラード王とアマンダ妃が今こちらに居るとは知りません。」
「…………まぁ……。」
ルルーシュが、アドラード達にハーブティーと焼き菓子を出す。
「ローズヒップティーと、レモングラスのケーキです。」
「………まぁ、美しい色。」
「……香りがいい。」
「どうぞ、ルルーシュの作った焼き菓子は、アリシアも好きで良く食べてます。特にそのレモングラスのケーキはお気に入りで。」
「頂きますわ…………まぁ……美味しい。」
「薬草がこの様に変身するとはな………。」
「ルルーシュ、作り方を紙に書いてお渡ししておいてくれ。」
「かしこまりました。後程。」
「嬉しいわ。カイル殿、心篭ったもてなし、ありがとうございます。」
「いえ…………それで、明日の朝、アリシアをこちらに来させますので、ウエディングドレスを着て、教会に連れて来て欲しいのです。私は、レングストンの結婚式の決まりで、ウエディングドレスを着たアリシアを式直前迄見れません。なので………朝から式が始まる迄、久しぶりの親子の団欒を……少ししか時間はありませんが……。」
「…………カイル殿、充分過ぎる時間だ……感謝する。」
「えぇ………この邸にアリシアのウエディングドレスがあるのですね?」
「はい、後程ルルーシュに案内させますから。」
アドラードとアマンダは涙を流し、明日の結婚式を楽しみにするのだった。
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