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結婚式前日②
しおりを挟む瞬く間に王城に持ち込まれた一報。
そして、リュカが居る執務室やナターシャにも入る。
『皇太子妃のウエディングドレスが引き裂かれました』と。
「どういう事だ!警備はしっかりしていたのだろう!!」
これには、警護を指揮しているウィンストン公爵のみならず、皇帝も怒鳴る。
「どういう事か説明を求める!」
警備にはウエディングドレスのある部屋の四隅に配置し、ドアや窓にも外から入れないように衛兵も居た。
衛兵の話では、ナターシャ付きの侍女だと言う女数人がドレスの確認をしに来たという。
だが、ナターシャ付きの侍女は皇太子邸におり、ナターシャの世話や、邸の仕事をしており、彼女達が大聖堂に行ったのはエステを始める前なのだ。
勿論それを確かめる為に、皇太子邸に調べに入ったリュカとウィンストン公爵とセシル。
ナターシャのドレスを運んだのはライアと数人の侍女。
その彼女達は皇太子邸に今は居る。
「いつ起きたんだ?」
「昼過ぎで、今その侍女を連れてくると、早馬が。」
ナターシャも一大事に、エステを無理矢理終わらせ王城に入る。
「ドレスが引き裂かれた、と伺ってますが……。」
「ナターシャ………すまない。」
ウィンストン公爵は父として、警備責任者として娘に謝る。
「いいえ、あのドレスは式に着るドレスではありませんから大丈夫です。」
大事なドレスを引き裂かれて、いやに落ち着いている印象だったナターシャ。
「え?」
「何かあるのでは、という懸念を拭い切れなかったのはわたくしも一緒なので、持って行かせたドレスはわたくしが急遽手持ちの純白のドレスにヴェールや装飾の刺繍を施しました。ほぼ侍女達がやってくれましたけど。」
「では本物は何処に?」
リュカはナターシャが来たので、心配で寄り添いに来たのだが、落ち着いているナターシャに驚きを隠せないままだ。
「皇妃様の一室ですわ。昨日、皇妃様に出来栄えを披露しましたの。皇妃様もご存知でしたし、ドレスに関しては少し手伝って頂いて………。」
時は少し遡り、結婚式3ヶ月前の事。
仮縫いの時の会話だ。
「リュカは女性によく言い寄られて、ナターシャ妃は大変でしょう?」
「そう、ですね………。何事も無く式が挙げられるでしょうか………。」
「念の為、ドレスをもう一着用意致しましょう。」
「今から作らせるのですか?」
「ええ、そのつもりよ?」
「そんな、いけません!間に合いませんしそれなら今ある白いドレスにウエディングドレス風に直した方がまだ!」
と、いった経緯があったのだ。
何も無ければ良し、あれば本物をナターシャと一緒に運べばいいのだと。
何も無くても、ナターシャは一緒に大聖堂に行くつもりだったのだ。
シワになるのでなるべくなら早めに持って行き、整えたかったのが本心なのだが………。
「まさか、本当に何か起こるとは思いませんでしたわ。」
「ナターシャ………びっくりしたじゃないか……用意していたのなら、教えて欲しかったよ。」
「ウエディングドレスは結婚式当日に初めて殿下にお見せする物なので、見られてはいけない、と思って………申し訳ありません。」
「オホン……。」
イチャイチャが始まりそうなので、ウィンストン公爵が咳払いをする。
「ともあれ、ドレスが無事で良かったですな。」
「失礼致します!!皇太子妃のウエディングドレスを引き裂いた女をお連れしました!」
腕を後ろに縛られ、抵抗しようとしたのだろう、まとめられていた髪も乱れ、侍女の制服も砂埃や草等が着いて、女は俯くまま歩かされていた。
女性をその様に扱う衛兵に嫌悪感を持ちはしたが、王族に入る皇太子妃として認められたナターシャに対する無礼な行いに、当然の報いだと思わなければならなかったナターシャ。
「女、顔を上げよ。」
皇帝が女に命令をし、ゆっくりと顔を上げた女を見てナターシャは声が出る。
「レーチェ様!!」
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