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救出
しおりを挟むアードラのアマレスが作らせた王城の一角に、地下通路がある。
暗く明かりはランプぐらいしかない、冷え冷えの地下通路を通り、王城外にある建物に繋がる。
唯一の入り口がその地下通路になっており、アマレスはその存在を決して人に洩らした事は無い。
そこの建物の部屋には、アマレスが気に入って集めた『美しい物』が保管されている。
監禁と言ってもいい。
『美しい物』とは人なのだから。
「どうだ?私の妻になる気になったか?」
「……………。」
「いつまで黙っている。無理矢理妻にしてやっても良いのだぞ?」
「私はお前のにならない。」
「強情な娘だ。まぁいい………今はお前より欲しい物があるからな………カイル………ふふふ……。」
(………カイル?何処かで聞いた名だ……。)
アマレスは一日に一度、『美しい物』を鑑賞しては、王城に戻るのだった。
アマレスの気配が消え、また再び違う気配がすると、『美しい物』の前に現れる。
「『放浪姫』アニース姫でしょうか?」
「…………誰だ?」
「レングストン皇国、ウィンストン公爵の手の者です。」
「…………ウィンストン公爵……。」
「はい。あなた様がアマレスに捕まったとの情報を得まして、主より救出せよ、と。」
「ウィンストン公爵が?」
「正式には、ウィンストン公爵家次男、カイル様でございます。」
「………行こう、出してくれ。救出しに来たのなら私を連れ出せるのだろう?」
アニースは立ち上がり、閉じ込めらせた部屋の扉の前にたつ。
「扉から少し離れて下さい。壊しますから、そちらに倒れるかもしれません。」
「分かった。」
アニースは扉が倒れてもいいように、扉の横で待機する。
バキッ!
「そんなに豪快で壊していいのか?」
「構いません、今の男は失脚する予定なので、いずれここは使われなくなりますから。これを着て下さい。アードラの軍服です。長い髪は服の中に隠して頂けますか?」
「分かった。」
「私から離れないように付いてきて下さい。何があろうとも、守りますから。」
「武器があれば私も戦えるが。」
「では、これを。」
男は剣を1本渡し、アニースが装備するのを確認したら走り出した。
幸いにも見つかる事はなく、部下達が待機している宿に到着すると、部下はアニース様に女性物の服を渡す。
「軍服では、と思いまして、サイズは分からなかったので、何着かご用意を。バスルームで申し訳ないですが、こちらでも宜しければお着替えを。」
「カイル殿は?居ないのか?」
「カイル様は先程レングストンに帰国されました。」
「礼が言いたい。レングストンに行ってきても良いか?」
「では、誰か共をさせて下さい。カイル様は普段王城におみえですし、お一人では入れませんから。」
「そうか……そうだな、頼めるか?」
「はい、ご無事で救出した事の報告もありますから。」
アニースは用意された宿で1泊し、翌朝レングストンに出発した。
アマレスがアニースに逃げられたのを知ったのは、出発した後だった。
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