25 / 88
24
しおりを挟む「ティア!」
「あ…………皇太子殿下……」
「大丈夫だったか?」
「え?………何が……どの件?」
「ベルゼウス伯爵令嬢だよ!」
ルティアとシスリーの一件は、何故か直ぐにリアンに知らされていた様だ。
あれから、帰宅許可は取れたのだが、直ぐに却下され、リアンが駆け付けて来たのだ。
「………あぁ……彼女………凄いですね……」
凄い、と言って良いのか、それ以上の事を思って文句を言いたいが、侍女達も控えていて、愚痴を溢すのには躊躇する。
シスリーに思っている事があったとしても、誰がその事を言い触らす者が出て、捻じ曲げられて噂が流れてもいけないからだ。
「此処は安心だ………居住地の侍女達は口を噤む」
「…………だ、大丈夫なら……言うけど……」
シスリーに会った時、付き添った侍女にでも聞いたのかもしれないし、境界線で待機する騎士からも聞いたのかもしれないので、ありのままの事をリアンに伝えたルティア。
「陞爵なんて何を馬鹿な事を言ってるんだ、あの令嬢………」
「ベルゼウス伯爵が手柄を立てれば陞爵もあり得るんじゃないんですか?」
「え………手柄?………戦があったり、功績を残さない限り、そんな話は出る事はないが……」
「でも、戦は近隣諸国であるし………」
「…………まさか………」
「如何かしました?」
「…………あ、いや………何故、ベルゼウス伯爵の経営するカジノが利益を出しているのかを考えていたら、その先があるんじゃないか、と………ごめん!ティア!悪いけどもう暫く此処に居てくれ!」
「あ…………はい……」
リアンは、思い当たる事があったのだろうか、部屋を出て行くと、暫くしたら戻ってきた。
「悪かった、1人にさせて」
「…………何だったんです?」
「クレイオとベルイマンに仕事振り分けて来た」
「皇太子殿下の仕事は?」
「うん、もう俺は終わらせたよ」
「い、良いんですか?」
「ティアが居るのに、仕事だって手に付かないよ………このピアノ、さっき弾いただろ?本当は一番近くで聴きに来たかったのに、我慢させられたからさ」
「いつでも聴けますよね?」
「毎日聴きたいから、もう城に住んでくれよ」
「そ、それは………無理だと……」
結婚前で、ふしだらな行いは出来ないだろう。
毎日通うならいざ知らず。
「毎日、弾きに来ればいい。朝来て、夜帰る」
「流石に夜迄お世話になる訳には………許可だって要りますよね?」
「そんなもの、俺が許可すれば誰も文句は言わないさ」
「…………言える立場だった………」
「決まりだな………何なら泊まって……」
「そ、それは………」
ルティアもそうしたいが、婚約発表もしていないのに、皇太子妃の部屋に泊まるのは如何なものか、と侍女達に助けを求める。
「皇太子殿下、皇妃陛下にフェリエ侯爵令嬢様がお叱りを受けますよ?宜しいのですか?」
そう、皇妃の耳に入れば、あの口調で嫌味を言われかねない。
「…………は、母上を出してこないでくれないかな………礼節を弁える事には厳しい人なんだから………」
「皇太子殿下も皇妃陛下には弱いんですね」
「…………弱くはないけど、面倒なんだよ……天邪鬼な人だから」
「天邪鬼?」
「本当は、ティアが気に入ってるのに、キツく言わないとティアの為にならないから、て心を鬼にして、後から後悔してたと思うよ。娘が欲しいのに出来なかったから、この部屋の内装や家具選びには凄い躍起になって、配置さえも拘ってたから、気に入りました、て言ってごらん、扇で顔を隠して喜ぶよ。照れた顔を見られたくない時は、顔を背ける人だし」
「…………あぁ………」
「母上にキツい言葉を言われたら、俺が庇うけど、それはそれでティアは黙って落ち込むフリして付き合ってくれたらいいよ。それで、ありがとうございますお義母様なんて返せば、絶対に喜ぶから」
それについては、ルティアも目にしている。
ポーカーフェイスを装って厳しい言葉を言われても、気に食わない相手に、部屋を整える労力を掛ける事はしないだろうし、皇妃の好まさそうな柄の生地なのは、ルティアの事を考えて揃えてくれた、としか思えない。
お義母様と呼んでいいか、と聞いた時の反応が、リアンの言葉通りだったからだ。
「私、もう帰宅して良いですか?皇太子殿下にまた会えた事だし」
「…………ティア……俺と会えない時間、寂しくない訳?」
「さ、寂しいですよ!でも………お城に居ても手持ち無沙汰というか、暇で………い、今は一緒に居られるから良いけど、お忙しいでしょう?また仕事あったりで、出て行かれたら………」
「っ!…………き、今日はもう、仕事終わらせたし、夕飯一緒に食べてってよ」
もう夕方で、そろそろ空腹になってくるだろう。
「フェリエ侯爵家に伝えてないですよ?」
「使い出しておく………ね?」
「わ、分かりました」
この選択が、ルティアは少し後悔するのだが、それは直ぐにルティアに降り掛かる---。
102
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
だってお義姉様が
砂月ちゃん
恋愛
『だってお義姉様が…… 』『いつもお屋敷でお義姉様にいじめられているの!』と言って、高位貴族令息達に助けを求めて来た可憐な伯爵令嬢。
ところが正義感あふれる彼らが、その意地悪な義姉に会いに行ってみると……
他サイトでも掲載中。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる