皇太子と結婚したくないので、他を探して下さい【完結】

Lynx🐈‍⬛

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「ティア!」
「あ…………皇太子殿下……」
「大丈夫だったか?」
「え?………何が……どの件?」
「ベルゼウス伯爵令嬢だよ!」

 ルティアとシスリーの一件は、何故か直ぐにリアンに知らされていた様だ。
 あれから、帰宅許可は取れたのだが、直ぐに却下され、リアンが駆け付けて来たのだ。

「………あぁ……彼女………凄いですね……」

 凄い、と言って良いのか、それ以上の事を思って文句を言いたいが、侍女達も控えていて、愚痴を溢すのには躊躇する。
 シスリーに思っている事があったとしても、誰がその事を言い触らす者が出て、捻じ曲げられて噂が流れてもいけないからだ。

「此処は安心だ………居住地の侍女達は口を噤む」
「…………だ、大丈夫なら……言うけど……」

 シスリーに会った時、付き添った侍女にでも聞いたのかもしれないし、境界線で待機する騎士からも聞いたのかもしれないので、ありのままの事をリアンに伝えたルティア。

「陞爵なんて何を馬鹿な事を言ってるんだ、あの令嬢………」
「ベルゼウス伯爵が手柄を立てれば陞爵もあり得るんじゃないんですか?」
「え………手柄?………戦があったり、功績を残さない限り、そんな話は出る事はないが……」
「でも、戦は近隣諸国であるし………」
「…………まさか………」
「如何かしました?」
「…………あ、いや………何故、ベルゼウス伯爵の経営するカジノが利益を出しているのかを考えていたら、そのがあるんじゃないか、と………ごめん!ティア!悪いけどもう暫く此処に居てくれ!」
「あ…………はい……」

 リアンは、思い当たる事があったのだろうか、部屋を出て行くと、暫くしたら戻ってきた。

「悪かった、1人にさせて」
「…………何だったんです?」
「クレイオとベルイマンに仕事振り分けて来た」
「皇太子殿下の仕事は?」
「うん、もう俺は終わらせたよ」
「い、良いんですか?」
「ティアが居るのに、仕事だって手に付かないよ………このピアノ、さっき弾いただろ?本当は一番近くで聴きに来たかったのに、我慢させられたからさ」
「いつでも聴けますよね?」
「毎日聴きたいから、もう城に住んでくれよ」
「そ、それは………無理だと……」

 結婚前で、ふしだらな行いは出来ないだろう。
 毎日通うならいざ知らず。

「毎日、弾きに来ればいい。朝来て、夜帰る」
「流石に夜迄お世話になる訳には………許可だって要りますよね?」
「そんなもの、俺が許可すれば誰も文句は言わないさ」
「…………言える立場だった………」
「決まりだな………何なら泊まって……」
「そ、それは………」

 ルティアもそうしたいが、婚約発表もしていないのに、皇太子妃の部屋に泊まるのは如何なものか、と侍女達に助けを求める。

「皇太子殿下、皇妃陛下にフェリエ侯爵令嬢様がお叱りを受けますよ?宜しいのですか?」

 そう、皇妃の耳に入れば、あの口調で嫌味を言われかねない。

「…………は、母上を出してこないでくれないかな………礼節を弁える事には厳しい人なんだから………」
「皇太子殿下も皇妃陛下には弱いんですね」
「…………弱くはないけど、面倒なんだよ……天邪鬼な人だから」
「天邪鬼?」
「本当は、ティアが気に入ってるのに、キツく言わないとティアの為にならないから、て心を鬼にして、後から後悔してたと思うよ。娘が欲しいのに出来なかったから、この部屋の内装や家具選びには凄い躍起になって、配置さえも拘ってたから、気に入りました、て言ってごらん、扇で顔を隠して喜ぶよ。照れた顔を見られたくない時は、顔を背ける人だし」
「…………あぁ………」
「母上にキツい言葉を言われたら、俺が庇うけど、それはそれでティアは黙って落ち込むフリして付き合ってくれたらいいよ。それで、なんて返せば、絶対に喜ぶから」

 それについては、ルティアも目にしている。
 ポーカーフェイスを装って厳しい言葉を言われても、気に食わない相手に、部屋を整える労力を掛ける事はしないだろうし、皇妃の好まさそうな柄の生地なのは、ルティアの事を考えて揃えてくれた、としか思えない。
 、と聞いた時の反応が、リアンの言葉通りだったからだ。

「私、もう帰宅して良いですか?皇太子殿下にまた会えた事だし」
「…………ティア……俺と会えない時間、寂しくない訳?」
「さ、寂しいですよ!でも………お城に居ても手持ち無沙汰というか、暇で………い、今は一緒に居られるから良いけど、お忙しいでしょう?また仕事あったりで、出て行かれたら………」
「っ!…………き、今日はもう、仕事終わらせたし、夕飯一緒に食べてってよ」

 もう夕方で、そろそろ空腹になってくるだろう。

「フェリエ侯爵家に伝えてないですよ?」
「使い出しておく………ね?」
「わ、分かりました」

 この選択が、ルティアは少し後悔するのだが、それは直ぐにルティアに降り掛かる---。
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