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しおりを挟むランジェリーショップ、コンタクト店に続き、次に立ち寄った店もらまた高級店。
ハンガーに掛かる服を手当たり次第、由真に当て、試着させ似合えば買う、というまた爆買いを桐生はやってのけている。
「あ、あの!こんなに要りませんし!買える物は私が買いますから!」
「俺、自分の物に金使わないから」
と言い、次を買うので、荷物は両手に持ちきれなくなりそうなのだ。服に合わせる為、靴も買っている桐生に際限は無い。
「そんな事ありません!桐生さんの部屋にあるカメラ!あれも安い物なんて無い筈です!」
「…………あぁ……あれか……あんなのは大した額のじゃない………それに………」
「…………」
「いや………何でもない……もう両手に持ちきれなくなったから帰ろうか」
「あ、はい………」
また意味深な言葉の濁し方をする桐生だが、由真が立ち入れる話ではないので、聞き流すしかなかった。
「半分は俺ん所に置いといていいか?主に下着の半分」
「っ!」
「実践した取材するんだよな?」
「私………早まった気がします……」
「………自分の変化を怖がる事は当たり前の事だからな………そして、また変化に戸惑う事で難しく考える」
「………そう……ですね……」
桐生の言葉は重みを感じた由真。
由真には、桐生にもそういう事があるのだろうと感じた。
桐生のビルに戻って来ると、由真の下着を桐生は出していく。
「何………してるんですか?」
「緊縛用に買った物だけ出してる。後は持って帰っていいぞ」
「あの………これ全部私に払わせて下さい……け、経費で落とせるかもしれませんし………」
経費には落とせないだろうが、そう伝えれば桐生のお金で買った借りを帳消しにして、由真が買った事に出来る。
「経費で落とせる訳ないだろ。緊縛を実践でされて記事を書いてます、て会社に言うのか?」
「ゔっ………モデルを使ってる、と思われてます………」
由真の記事はまだ出来ていない。それなのに領収書だけ山積みされて、経費が落ちるとは言い難い。
「ある意味、アンタは俺のモデルになってるがな」
「っ!」
「如何する?もし今日も時間あるなら、昨夜の続きするが」
「お店はいいんですか?夜も営業ありますよね?」
「俺の予約は入ってない」
「き、今日は帰ります。昨夜帰ってないし、家の事もやりたいので」
「了解………連絡先交換させてくれる?予定しておいて、都合悪くなるとキャンセルの連絡しやすい用に」
「そうですね………店と会社だけでは連絡取り難いですし」
その桐生の連絡先は、【桐生翼】ではなかった。
「桐生………翼……ではないんですか?」
「あぁ、そっちのは本名……翼は緊縛師としての仮名………たすきって読むんだ」
連絡先の名は、【桐生 翼希】。
「これもまた珍しい読み名ですね」
「比翼連理、て四字熟語分かる?」
「………え……難しい……何ですか?意味」
「相思相愛と同じ意味さ………母親が、息子の俺にも雄雌一対で飛ぶ比翼の様になれる相手が見つかる様に、て願い込められてんの………連理は根本は別の植物なのに、途中でくっついて別の植物になる接ぎ木の事を言って、比翼と同じ様な意味になる………母親は、父親とそうだったから俺にもって………迷惑な名前さ。翼だけだと在り来たりだろ?だから、その比翼連理の意味の様に願うのに、希望の希を付けたらしい」
「博識なんですね、お母様」
「…………さぁな……もう死んだけど」
「す、すいません………」
「謝る必要は無いよ………アンタは知らなかっただけだ。俺もあんまり人に連絡先は教えてないし、この名前の意味だって、説明面倒くさいから知らない人間のが多い」
何故、由真に教えてくれたか分からない。
気分で教えてくれたのだと思う事にするしかない。
「お父様はご顕在なんですか?」
「…………若い女と再婚したから元気なんじゃないか?知らないな」
「そうなんですね………あ、私帰りますね……明日、お時間ありますか?桐生さん」
「…………」
「桐生さん?」
「っ!………あぁ、何?」
ボ~っとしている桐生を不思議に思い、顔を覗かせた由真。
「日曜日は時間ありますか?って……」
「…………明日?明日は午後から営業始める前迄なら………」
「じゃあ、明日また伺います」
「あ、待って………タクシー呼ぶ……荷物多いだろ」
「助かります。あ!タクシー代は必要無いですからね!」
タクシーが来る迄は、由真も緊縛師になった経緯やら桐生に質問をしたりしたものの、詳しい事は教えてはくれず、緊縛をする上での心得を由真は聞いた。
自分の事を余り話したがらない様なのは、この日1日で少し分かってはきたが、家族の事や幼少期等を聞き出して話を反らせたりもしたが、桐生は話そうとはしない。
由真はそれ以上、桐生の家族の話はタブーだと感じ、質問をSMの事だけにし、タクシーを待った。
タクシーが到着すると、タクシー代と言って、桐生は金を由真に渡そうとするが、断固拒否を貫いた。
「おすわり!」
「っ!」
セーフティワードを由真は初めて桐生に使うのが、タクシーの乗車金だったのはおかしな話だが、桐生が譲ろうとしないので、由真は強硬手段を取ってしまった。
「こんな事でセーフティワードが使えるとは思いませんでした………では、また明日お邪魔しますね、桐生さん」
桐生は本当に固まった状態になり、押し付けていた事に気付いた頃には、もう由真はタクシーを発車して貰っていたのだった。
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