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大地の精霊アトモス
しおりを挟む地響きが暫く続き、地震が来たかと、カチュアとコーウェンは驚いて慌てふためく。
しかし、精霊達は慌てふためく事は無い。
「来たか………アトモス」
「来たかじゃねぇ!!シャルゼ!てめぇ、何しやがった!!何であんな未来にしやがった!!」
「俺じゃねぇ!!カチュアの判断だ!!」
「!!………カチュア………だと?………カルディア様の器か!」
シャルゼより図体が大きい、焦げ茶の肌の筋肉隆々の、精霊と見られるアトモスと呼ばれた姿がいきなり現れ、思わずコーウェンの後ろに隠れてしまったカチュア。
「何処に居やがる!!カルディア様の器は!」
「おい!アトモス!少しは落ち着け!判断したのはカチュアではあるが、その判断に了承したのは俺達だ!」
「何だと!!」
キレているアトモスは一向に落ち着かない。
カチュアは、早く如何なったか知りたいのに、話が進まないので、アトモスを見上げる。
ステンドグラスにめガタイのいい精霊が描かれている。
恐らく、それがアトモスだろう。
よく見れば、シャルゼやジューム、カルマらしき精霊も分かったが、今はこの場をどうにかしたくて、アトモスにステンドグラスが目に入るように、カチュアは飛んだ。
「あ!カチュア嬢!!何を!」
コーウェンが引き止めたが、気にしない。
アトモスもその声に気が付いたが、鳥が視界に入ったので目を追う。
「こいつか!器は!」
「話を聞いて!………というより、話を聞かせて!」
「カチュア!アトモスは気性が荒い!叩き落とされるぞ!」
「叩き落とせば?……私が居なかったら、聖女は産まれ変われないのよ?この人にそんな度胸ある?………聖女が大事だと知ってるこの人なら、私を器扱いで済ませた事、後悔させてあげるわ!」
「!!」
わざとステンドグラス周辺を飛ぶカチュアを追うアトモスの目が、ステンドグラスを映す。
「………カルディア様………俺も居る………」
「私は聖女なんでしょ?なら貴方は聖女の何?」
「…………助けてくれ………カルディア様を……」
「…………アトモス……と言ったわね?私こそ助けて欲しいわ………私は……悪魔の子を産みたくなくて、10年前の夫を避けたの……だから、別の夫を選んだ……それからの10年間を教えて」
「………分かった………仕方ねぇ………だが、何で人間が俺達を見てる?」
アトモスが背中に居るコーウェンを指差し、ジュームも今気が付いたのか、コーウェンを見る。
「失礼、精霊ジューム、精霊アトモス。僕は聖女カルディアの末裔、コーウェンだ。ここは僕が所有する屋敷だよ」
「カルディア様の末裔…………我等を見れる者がまだ居たのだな……血も薄まっているだろうに」
カチュアはアトモスが落ち着いた様子を確認すると、シャルゼの頭の上に降りた。
「だぁ!俺は枝じゃねぇ!」
「いいじゃない、床に降りると踏まれそうだもの」
「シャルゼ、似合うぞ」
「揶揄うな、ジューム………で?説明をいい加減してくれないか?見てきたんだろう?」
「話してもいいが、人間に話聞かれるぞ?シャルゼ」
「あぁ、コーウェンは聖女の末裔ではあるが、この件では無関係だしな」
アトモスとジュームが話を渋っているようだった。
しかし、シャルゼはコーウェンが協力する、という申し出がある事を話す。
「人間が何を出来るんだ!」
「そうだ、協力するにしても何をすると言うんだ!」
「だから、お前達からの話次第なんだよ………カチュアがデュークに嫁いだ後、カチュアはデューク以外の男に犯されたのは、ジュームは知ってるだろ」
「…………あぁ……」
「だから、カチュアはデュークの夫となるのを拒んだから、カルマの言霊でバッシュを選んだんだ………そうなってから、カチュアが如何なったかを知らないと動きようもない………結婚前ならまだ子供を孕ませられない、というのはデュークで見てきている。だから、結婚式後を知りたい。」
ジュームはカチュアを見据え、見てきた事を話す。
「カチュアは………覚醒する前に自害した。理由は、夫以外の男との不貞を知られ、夫のバッシュ、不貞相手のゴードンを処刑、カチュアが産んだ子達は罪が無いが、王宮内に囚われの身になり、カチュアは哀れんで自害したのが結婚3年後だ………カチュアはバッシュとゴードンには罪は無い、と訴えたが、聞き入れられなかった………」
「…………あ………アレが続いてたのね……」
カチュアは先程見た光景を思い出した。
房事を3人でする行為が……。
「シャルゼ、さっきのバッシュ様のお屋敷の侍従が洩らしてたのよ、きっと……」
「妥当な線だが、だからといって大陸が無くなる程の結果にならなかったのは、カチュアは狙われなかった、て事か?」
「バッシュとゴードンの家のヴァルム家から王になるような子は産まれないと思ったから、とか?でも、バッシュやゴードンを処刑して、子供をカチュア嬢から奪うのはおかしな話だよ………実際に7代ぐらい、ヴァルム家から王を出した事はないけど」
「お父様にはバッシュ様に嫁ぐのを反対されたわ…………王になれない公爵家等、と」
「バッシュやゴードンは優秀な奴だし、貶める人間が居てもおかしくはない………そこ迄の過程は分からなかったのかな?精霊ジューム」
人間側から見るコーウェンは糸口を探そうとしてくれていた。
カチュアには知らない王族達の柵や、王位に対する欲は、全く理解出来ていない。
だからこそ、王族のコーウェンから目線は助かるかもしれない。
「ジュームだけでよい………カチュアが産んだ、子は選ばれれる事なく、候補にも上がらなかったようだ」
「私、別に子を産んで、その子の夫を王にするつもりなんてないから、バッシュ様とゴードン様の処刑回避すれば、自害しないんじゃないのかしら?」
「………自害する為に、力を解放させた、と言ったら?止めに入ったが、カルディア様の力は精霊達には及ばぬ……止めれなかった」
「処刑を免れたところで、カルディア様が甦れねぇなら、意味がねぇぞ、カルディア様の器」
先程から、アトモスはカチュアの事を器呼ばわりするのは酌に触るが、このままでも良いのでは、とさえ感じ初めていた。
悪魔の子でなければいい、のだと。
「一応、見守ってもいいかしら?夜会の日迄戻るのが難しいなら」
「………俺は構わんが………ジューム、アトモスは?」
「気乗りせんが、アトモスはどうだ?」
「器のお手並み拝見がてら、暫くは見守ってやる………時を戻すのは、精霊が揃わなきゃならんしな……今、あっちの器をほっとけねぇ」
「じゃあ、僕は僕なりに、何か分かったら教えるよ、カチュア嬢」
「コーウェン様迄………ありがとうございます」
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