聖女は鳥になって過去に2度戻り、夫を入れ替える【完結】

Lynx🐈‍⬛

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経験豊富なキス

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「ウェン………冷たい」
「何が?」
「お義父様に」

 本邸から出て、離宮に戻りつつカチュアはコーウェンに呟く。

「………父上は、僕がライナスに切られても、庇う事をしてくれなかったからね。祖父の前王もそうだったよ………ライナスか僕か、と浙江していたけど、現王と父上の力量の差があったからね………祖父は情に流されない人だったから仕方ないけど、幼かった僕にはやはり辛くてね………父上迄騙して生きていくのを決めてたんだ、今は父上には隠してないけどね…………また期待が再燃しているようで、最近また煩くなってきた」
「…………ウェン……」

 カチュアは歩くのをやめた。

「ん?」

 横に歩いて来ないカチュアを振り向くコーウェン。

「結婚報告を出しましょう……式は急だから無くてもいい………私、囮になってもいいですから」
「……………カチュア!!駄目だ!……君はデュークの時もバッシュの時も、ライナスに強姦されたんだぞ!…………第一………僕が嫌だ………カチュアをライナスに会わせたくない!」
「ウェン、忘れてません?…………私は聖女ですよ?」
「それでもだ!…………あんなに辛そうに語るのに、いざライナスを目の前にして、自分を守れなかったらどうするんだ!……また過去に戻るのか?………今迄築き上げた関係を僕に忘れさせるのか!」

 カチュアはコーウェンに再び近付くと、コーウェンの手を握った。
 その握った手を、カチュアは頬にあてる。

「もし、失敗しても過去に戻りたいなんて言ったとしても、戻ったら始めます。私はウェンの妻になりたくない、なんて言わないし、失敗するとは思ってません………だって、今の私は結界張れるもの」
「…………聖女だって時々忘れるよ、僕」
「ふふふ………試してみます?ウェンの前に結界張りますから、私にキスしてみて下さい」
「!!」
「ウェンはを押し通すから出来ないかしら?」
「…………意地が悪いよ、カチュア」
「どうします?」
「…………する……キスしたい!」

 なかなか手を出して来ないコーウェンとの距離をもう少し縮めたくて、冗談半分本気半分で言ってみたカチュア。
 花嫁探しの夜会でコーウェンを選んでから、もう半年は経っていた。
 距離は充分縮まっていると、カチュアも思っている。
 でも、本当にキスをしたくても、なかなか度胸がカチュアには無い。
 カチュアは、記憶の中にあるカルディアの力を捻出させ、結界をカチュアとコーウェンの間に張った。

「はい、張りました」
「…………見えないんだな」
「えぇ、だから目の前にあっても気付かれないし、時間も掛からない」

 触ろうとコーウェンがすると、見えない壁がある。
 そのままキスをしてくるかと思い、カチュアは目を閉じるが、結界が張ってない横側からコーウェンは侵入して、カチュアの唇を塞いだ。

「!!」
「……………」
「んっ………っ!」
「…………カチュア………」

 コーウェンはカチュアが塞ぐ唇を舌で舐め、口を開かせようとする。
 少しだけ開けて待ち構えると、すかさずコーウェンの舌が侵入する。
 頬裏や、歯茎を這わせ、カチュアの舌を絡めると、自らの口内へ誘ったコーウェン。

「んふっ……はぁ……ウェ………ン……」

 唾液が絡まり、糸が間に引くと、コーウェンは指で唾液を拭く。

「結界は意味なし!だから囮は却下」
「周り囲むもの!!今は、ウェンと結界越しで試して、て言われるの待って結界解こうと…………はっ!」

 カチュアの目論見が空回りしていたので、カチュアは墓穴を掘る。

「…………へぇ~」

 カチュアは真っ赤な顔になり、コーウェンの欲を煽る。

「…………は、恥ずかしいから、先に戻ります!」
「………カチュア!!」
「…………」

 コーウェンに呼び止められ、振り向くが止まるだけで返事はしないカチュア。

「明日、結婚届けを出そう…………ごめん、僕が我慢出来そうにない………」
「…………囮は?」
「………結界張った上で、僕も待機して守るから!」
「…………お願いします!」

 照れているのか、カチュアは逃げたが、その後ろ姿は、結婚出来る嬉さからか喜んでいるように見えた。

「………参ったなぁ……経験豊富そうなキスされたら、もう欲しくて堪らないじゃないか………デュークもバッシュも何教えてんだよ………あ、あとライナスか………はぁ……嫉妬をカチュアにぶつけそうだ………」

 コーウェンは知らない。
 バッシュの妻であった時、ゴードンとも関係があったのを………。
 カチュアは言いたくなかったのだ。
 バッシュの個人的な悩みで2人の妻になった事の理由を……。
 

 
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