聖女は鳥になって過去に2度戻り、夫を入れ替える【完結】

Lynx🐈‍⬛

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式の準備

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 離宮にティアラを持ち帰ったカチュア。
 取り出して、過去へ思いを馳せる。

(…………私が聖女だと、人間ではないと知りながら、私を愛してくれた……)

 顔はもう忘れてしまった。
 時々王宮に行く事が増え、今とは違う建物を見ても何も思わなかった。
 だが、肖像画が飾られた部屋に行けば初代王と王妃だった、カルディアの肖像画が飾られている。
 子を産み、国や大陸を精霊と子に任せ、肉体が消滅しても、いつしか蘇る肉体は、王族ではなくなっていた。
 それについては深く考えず、ただ平和を願いまた、愛した男と時を刻み、また眠りについた。
 何度繰り返すか分からない程の転生をし、聖女の覚醒をすると、毎回悩む感情の起伏や、性格の違い。
 根本的な所はカルディアの性格と変わらない。
 毎回、違う生き方を覚えているのも楽しい。
 だが、それを弟にもして欲しかった。
 浄化をしてしまっては、もう戻れないから封印したのに、封印を解かれたら、を忘れられてしまった。
 ただ、憎い封印した敵と。
 ティアラに使われた真珠を使ってしまったのは、弟が争いを止めようと入った領土の長だった人が息子に宛てた真珠だったからだ。
 長の息子が聖女を妻に欲し、国を築いたのを、弟は気に入らなかった。
 間に入った弟の話を聞かず、聖女を手にした長の息子は、領土争いをしていた長と和解をする。
 聖女の弟は不甲斐なさから、姉を憎むようになり、人間として生きる姉に嫉妬した。
 弟が、大陸を破壊しようとしたのを止めに入った聖女は神と約束をしていた。
 封印を管理する役目を担い、封印が意味なくなれば、聖女の役目が終わる、と……。
 精霊達はどう思うのか。
 聖女が作りし創造物ならば、聖女が居なくなった時に消えてしまうだろう、と思うと悲しくなってくるのだ。

(…………駄目ね、即位式と結婚式のことを考えなきゃ)

 コンコン。

「若奥様、仕立て屋が参りました」
「今行きます」

 カチュアはティアラと、外れた真珠を一緒に箱にしまい、持って仕立て屋が待つ衣装部屋に行く。

「お待たせしました、今日は宜しくお願いします」
「こちらこそ、大役を仰せつかりありがたい事でございます」
「即位式のドレスの装飾は決めていないので、ドレスのデザインはお任せしたいのだけど、ウエディングドレスはこのティアラを使いたいの………このティアラに合うようにデザインをして頂いてもいいかしら」

 箱を開け、仕立て屋にティアラを見せたカチュア。

「拝見致します…………おぉ、これは見事な……若奥様、お任せ下さい!このティアラに合うよう精一杯、そして若奥様にお似合いになるドレスを作ってみせましょう!」

 仕立て屋や、宝石商に当日の衣装を任せたカチュア。
 忙しくしているコーウェンは、全くその姿を見たくても見れない苛立ちを聞く日々が続いた。
 1ヶ月もすると、ティアラの直しと他の装飾品も同時に完成した、と宝石商が訪れた。

「如何でしょう」
「まぁ、細かい所まで磨いていただいてありがとうございます。申し分ない出来栄えです」
「良かった!あの外れた真珠がうまく付くか心配でした。こちらの奥様の結婚式にもそのティアラを手入れして、別の石を入れたら直ぐに外れて苦労したのを覚えています」
「…………ここには、嵌まらないんでしょうね…………ずっと帰りを待ってたのだと思います……このティアラは聖女カルディアのティアラ……外れた真珠にはカルディアが悪魔を封印し、海に沈めた物ですから………」
「…………若奥様、それは本当のお話で?………伝記、ですよね?」
「…………ふふふ……さぁ、どうでしょう」

 曰く付きの装飾品は数有れど、そう言った伝説話は、あながち嘘ではない事が多い。
 宝石商であればそういう類いもよく耳にするだろうが、俄に信じ難いようだ。
 その夜、カチュアは久々に手元に戻ったティアラをぼんやりと眺めていた。
 コーウェンとの初めての房事以降、一緒の寝室を使う様に、と半ば強引に部屋を移動させられたカチュア。
 王太子に即位したら、王宮内に住むことになるのに、引越す事を踏まえ手間を省きたかったが、徐々にカチュアの物をコーウェンの自室に入れ込まれたのである。

 カチャ。

 ノックも無く、扉が開く。
 コーウェンの部屋にノックをせず入るのは、コーウェンしか居ない。

「ただいま」
「おかえりなさい……今日も遅く迄ご苦労様でした」

 椅子に座るカチュアの背から抱き締めるコーウェン。
 頬にキスを擽ったくされ、思わず笑った。

「擽ったいってば」
「何見てたの?……あ、これ……母上が受け継いだティアラ……」
「見た事あったの?」
「まぁ、ね……時々箱の中確認してたのを見てたから………でも、ここの部分石がよく外れた、て聞いたけど直してもらったんだ……ん?この真珠………」
「うん、あの真珠を嵌めたの………元々ここに嵌められたティアラのだったから………帰ってこれた……」
「そっか………そういう曰く付きだったのか」

 カチュアは椅子から立ち上がり、コーウェンに抱き着いた。

「ウエディングドレスと一緒にこのティアラを着ける姿………楽しみにしてて」
「…………勿論だよ」

 暫く無言で抱き締め合い、コーウェンはカチュアの髪を撫でて言う。

「湯浴みするからベッドで待ってて」
「…………今日もスルの?………昨日も殆ど寝なかったじゃない………今日は無し」
「………え~!!」
「知らないと思った?深夜仕事してたでしょ!駄目、寝なきゃ」
「…………分かった………じゃあ1回で終わる」
「……………うっ………そんな……犬みたいにおねだりしても…………1回………だけね………焦らさない1回で!」
「…………焦らすのがいいのに」
「睡眠不足で倒れられたら、その1回も出来なくなってもいいの?」
「…………分かった………直ぐ戻るから、裸で待ってて!」
「…………は、裸………もぅ……」

 それでも、嫌だとは思えないのだから、惚れた弱みで言う事を聞いてしまうカチュア。
 カチュアより5歳離れているのに、時々年下で可愛く見えてしまう夫を、夜着を脱いで裸で待ってしまうカチュアだった。



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