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恋愛開始

男達の関係

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 それぞれの彼氏や夫達が友人や知り合いの為、紗耶香や羽美、茉穂はお互いの男達の愚痴が出始める。
 専ら家事の事の愚痴を語る羽美と、性的な執着のある彬良への愚痴を漏らす茉穂の話を聞き役に徹していた紗耶香。紗耶香も愚痴りたいのが山々なのだが、3人の中では年下の紗耶香は話についていけていない。
 家事は紗耶香はやらないし、性的な悩みについては茉穂の話も参考になるのでは、と聞き入っていたので、頷くしか出来なかったのだ。

「律也さんは家事も熟しちゃうから、私の手を出す暇もないの………『これやっといて』と言われてやっている間に、1品2品作り終えてるとかザラで」
「羨ましい!律也さん!彬良は料理全く出来ないから全部私よ?材料なんか無かった時は直ぐに外食行こう、て言うの……楽だけどそればっかりなると健康面も心配になるから困るのよ……仕事も忙しいと食事抜いちゃうし」

 料理をしない紗耶香には、料理が出来る律也は羨ましいと思うし、外食も紗耶香は好きなので、茉穂の言う生活も満更悪いとも思わない。
 ふむふむ、と頷き頼んでいたアイスティーを飲み干すのも近かった。

「裕司さんはどっちです?紗耶香さん」
「え!」

 紗耶香に振られるとは思わなかったので、聞き役は終わる。

「ゆ、裕司も作るみたいだけど、私………食べた事無いですし、私も料理した事なくて……」
「裕司さんが料理するイメージ無いなぁ」
「私も無いかも……バーで料理出さない、ていうのもあったし」

 そして、羽美や茉穂は改めて知る。紗耶香はお嬢様だという事を。
 茉穂の実家も資産家ではあるが、お手伝いさんは居ても母はキッチンに立ち、料理をしていたので茉穂も料理を覚えて来た人間だ。

「料理、私も覚えた方がいいですか?」
「結婚後、裕司さんと2人で暮らすのなら必要かも」
「………まだ、そんな話は出て来ないです……父に結婚承諾をもらえないから、何にも決めてなくて」
「白河酒造は世襲制でしたよね?だから、律也さんと紗耶香さんはお見合いしたんだし」
「え!初耳それ!律也さんは羽美さんの旦那さんじゃない!」

 茉穂には、羽美と律也の結婚の経緯は知らない事だ。彬良からも聞いた事もなく、彬良も知らない事かもしれない。

「私が律也さんと付き合い始めた頃に、律也さんと紗耶香さんがお見合いして……」

 羽美が茉穂に経緯を話していく。裕司が航に暴行した経緯も踏まえ、その理由を紗耶香も初めて知らされた。

「航さんの為に、裕司は刑務所に……知らなかった………」
「お兄ちゃんも裕司さんも、高校在学中は本当に荒れてて………彬良君はその暴れ先を作って暴走族を……そうすると余計に周囲から反感買ってしまって……お兄ちゃんは高校卒業したら、料理人になると決めていたし、裕司さんは1人でお兄ちゃんや彬良君の敵になった人達相手にして、何人も病院送りにしてしまったから………彬良君も家の問題もあったんで、裕司さんは彬良さんにも知らせない様に………気が付いたらもう裕司さんは逮捕されちゃって、お兄ちゃん更に荒れてったんだけど、彬良さんは裕司さんの気持ちを組んでやれ、て必死に勉強する様になったんだけど、まさか紗耶香さんの近くに居たのも私達は知らなかった………裕司さんがお兄ちゃんに暴行する迄は………」
「彬良と裕司さんや航さんの関係性にはそんな過去があったのね………『借りがある』て言っていたのはその事なのか」

 茉穂も彬良を通して、裕司や航を見ていた。前科のある裕司と疎遠にならない理由が分かる気がする。

「私が裕司と初めて会った時………」

 紗耶香は思い出すかの様に、言葉を紡ぐ。羽美の言葉で出会った頃の裕司との会話で気になっていた事だ。

「私がひとりっ子だから、裕司をお兄さんみたいだ、と言ったら裕司が思い耽った感じがしたんです………その理由は、航さんと羽美さんと会って、裕司があの頃に航さんや羽美さんを思い出してたんだな、て今なら分かる………」
「お兄ちゃん、裕司さんに会いたかったんですよ、ずっと………お礼も言えないまま、消息分からなかったのが、何処か苛々してる時もあって……彬良君とはよく会ってたみたいで、彬良君と会うと必ず苛々してた」
「……………あ……そういえば、彬良伝にお互いの近況を聞いて来られた、て裕司さんに怒ってたのは聞いたわ………航さんは裕司さんの事を、裕司さんは航さんの事を聞いてくるのをウンザリしてた、て………」
「…………プッ……彬良君、世話好きだから、それでも教えてたんだろうなぁ」

 羽美が彬良の性格を理解しているのが茉穂にも分かる。

「それが教えてなかったみたい……裕司さんは、航さんには教えるな、と口止めされてて、航さんは裕司さんの事を聞かれても教えてあげられないから、板挟みになってたって」
「…………裕司は航さんの事を知ってても、航さんは裕司の事聞かされてないのは、航さんは気の毒ね」
「………だと、お兄ちゃんは知ってたのね……彬良君が裕司さんを匿ってるから苛々してたのか」
「羽美さんは、本当に3人の事よく分かるのね~」
「お兄ちゃんの友達だし……ふふふ……でも、全部じゃないですよ?私は裕司さんの刑務所から出て来てからは知らないし、彬良君が何故、お父さんの経営するホテルに転職したのか、茉穂さんとの結婚の為に決断した事がかなり意外だったので………彬良君も落ち着ける場所を見つけたんですね、茉穂さんのおかげで」
「そ、そうなのかしら」

 羽美は安心した顔で、裕司や彬良の落ち着き場所が、紗耶香と茉穂だというのが嬉しい様だ。
 茉穂はまだ彬良の動向が心配ではあるのだが、彬良が決意した事について行くだけだ。

「茉穂さんはこれから忙しくなりますね、結婚式で」

 紗耶香も裕司が落ち着ける場所に自分がなれればいい、と心から思う。そんな気持ちも込め、紗耶香は茉穂に伝えた。

「実はもう籍はもう入れてて……結婚式のプランも大詰めだから、招待状も送るわね、2人に」
「勿論」
「楽しみにしてます、この子連れて行きますね」

 紗耶香には、幸せそうな茉穂に羨ましさが募っていた。
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