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しおりを挟む翌日の朝は、お手伝いさん達に微笑ましく見られた未央理と秀平。
「昨夜は騒がしかったな、お前達……」
「「!」」
護にも聞こえるぐらいの口論だったらしい。
朝食中、ポソッと呟かれた護の言葉が未央理と秀平に突き刺さった。
「お前達の喧嘩は……まぁ、いい刺激にはなってはいるが、秀平は教師としての節度を守れ」
「は、はい……」
「未央理は………」
「?」
「秀平をもっと困らせていいぞ」
「「は?」」
「秀平は天邪鬼だからな、両親と弟を亡くし、早く大人になろうと必死だった……それがつまらん………今の秀平を見ていると未央理に振り回され、実年齢より子供に見えるわ」
「は、はぁ………」
余り語らなかった夫婦間の事に、護は未央理を擁護する様だ。
未央理も何と返していいか分からない。
「お爺さん!何を言ってるんです!俺は未央理の夫ではあるが、教員で担任なんです!学校での節度を持って、距離を保つのも必死……」
「………アンタ……辛いんだ……」
護の言葉にキレる秀平を、更に煽る未央理も面白そうだ。
「っ!……行ってきます!」
それに、立場的に困る秀平はまたも逃げる様に学校へ出勤して行った。
「私も、行ってきます」
「行ってこい」
学校に行けば、教員と生徒の境界線を守りながら、数日が経ち、金曜日の朝になった。
「未央理」
「っ!………な、何?」
洗面所で顔を洗っていた未央理の背後で、緩く腰を抱き寄せて来た秀平が、未央理の耳元で囁いた。
「夜、寝室に行くからな」
「っ!………本気なの!」
「有言実行は俺の信念だからな」
「………や、ヤダ!デートしたい!アンタの事まだ全然知らないし!」
「1週間だぞ?まだ分からないのか?」
「そ、そうよ!」
「………デートなら、明日でいいだろ。制服姿でデートなんて援交に見られるわ」
「………あ、そっか……」
「と、言う事で、今夜セックスして、ベッドでダラダラして、明日起きてからデートな」
「………なっ!それでも教員!?」
「今は夫」
「………ムカつく!」
まだ1週間も経ってない結婚生活。毎日秀平に振り回されながらではあるが、藤枝家の時の1週間とは全く違う楽しみはあった。
未央理もこの秀平との口論を楽しんでいたからだ。
「未央理~」
「あ、おはよ明日香」
何人かの友人も出来た未央理は、偏差値が高い高校でも勉強以外の話は、同世代であって女子トークは盛り上がる。
「今日、カラオケ行こうか、て話あるんだけど行かない?」
「………あぁ……私、送り迎えあるからなぁ……行きたいんだけど………考えさせて」
まだ高校1年で受験の心配もまだあまりないかもしれない。2年になれば受験勉強に必死になるだろう。
「分かった。帰り迄に考えてね」
数学の授業は割と多い教科だ。金曜の午後、目の前で教壇の前に立つ秀平に向けて、未央理はノートに走り書きを書いた。
『今日、斎藤さん達とカラオケ行きたい』
チラッと目線が秀平と合うが、その直後秀平に問題を解くように当てられてしまった。
「三条さん、この問題解いて」
「げっ!」
なかなか解けない問題に、教える素振りで黒板に秀平が返事を書いた。
『却下』
「………ムカつく………」
「おや、三条さん。自分が出来ないからって、僕に苛立つのは間違ってますね………居残り補修したい様だ」
「は?………イヤイヤそんなつもり無いって!」
その後、明日香に待ち合わせ場所を教えて貰ったが、結局秀平にスマートフォンを取られ、明日香に断りの連絡を入れられた。
「友達無くす!」
「金曜の夜から土日は、俺との夫婦の時間」
「横暴だ!」
「何とでも言え……口説いてる女との時間を奪う奴らは敵だからな」
「生徒でしょ!」
「それなら、金土日の誘いは却下するんだな」
「………それ以外の日だって、送り迎えあるじゃん」
文句も出る未央理だが、秀平に帰宅を無理矢理させられて、秀平も早々に帰って来た。
「未央理、出掛けるぞ」
「………は?」
帰宅し、小腹が空いていたから、お手伝いさんが用意したカフェオレとクッキーを食べていた未央理。
「カラオケ行きたいんだろ?」
「………そりゃ、行きたいけど……遊べるなら何処でもいい」
「それなら、ちょっと大人びたデートでもしてみるか?」
大人びたというワードを言われ、背伸びしたい年頃の未央理にはワクワクする誘いだ。
「………べ、勉強は?」
「日曜丸一日に纏めて教えてやる」
「………行く!」
「今日、夕飯は外で食べるよ」
「分かりました、行ってらっしゃいませ」
「じゃ、行くぞ未央理」
秀平は車の鍵を持ち外に出ると、未央理も後ろを付いて外に出た。
「助手席にどうぞ」
「………免許あったんだ」
「通勤に乗ってるけど?」
「知らなかった」
如何にも金持ちが乗る高級車に乗せられた未央理は、秀平が何処に向かおうとしているのか分からないまま、助手席に乗っていた。
「降りて」
「………此処何処?………ブティックっぽいけど……」
「十中八九、ブティック……全身コーデして貰える完全予約制のな」
「………え!」
「いいから降りて行くぞ」
エンジンを切り、先に秀平が降りてしまうと、助手席のドアが開けられた、大人のエスコートをされて、何が何だか分からないまま、未央理は車を降りた。
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