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しおりを挟む抜き打ちテストの答え合わせをすると秀平に言われ、未央理も覚えているからか、間違えが増えていく度に唸っていた。
「ここはこの公式だ、馬鹿者」
「っ………」
「筆圧も弱くて見にくかった」
「………そ、そんなに言わなくても」
「………まぁ、いい……俺にも原因はあるからな……今日は此処で終わるから、早く寝ろ」
秀平も疲れ気味の様で顔色も良くない様に見えた。秀平も睡眠不足なのかもしれない。
椅子から腰を浮かせ、部屋を出て行こうとする秀平に未央理は引き留める。
「ねぇ……アンタの欲しい相手、て私なの?」
「っ!」
「まさかねぇ……それは無いか……」
「………ったら……如何する……」
「………え……マジ?」
秀平が見る見る顔を赤らめていくので、未央理も揶揄うつもりだったのに出来ない。
「俺は、君に救われたんだ、て聞いただろ?覚えてないだろうが」
「………公園の?」
「………覚えてたか……会えなくなってから探したんだ………礼も言えなかったからな。それがどういう訳か、付き合う女が出来る度に、君を思い出して長続きしない……成長とともに外見も性格も変わって行くのに……」
「で、でも何で会った時に言わなかった訳?」
「覚えてなかったろ?俺を」
「………顔全く覚えてないし、名前知らなかったもん」
「だから言わなかった」
「………納得」
秀平も、その話をもう誤魔化すつもりにはならなかったのだろう、椅子に座り直す。
「不思議とは思わなかったか?」
「何を?」
「遠縁なのに、結婚相手にされたって事だ」
「調べたら遠縁だった、て事なの?」
「………まぁな……君のお母さんを調べたら、大叔父の愛人だったからな」
「それで、あの父親に掛け合った?それとも父親に押し付けられた?」
「………それは……言い難いな」
「話してくれるんじゃないの?」
椅子に座り直したのは何だったのか。
「それを話すとなると、大叔父の事と君のお母さんの事を話す必要になるんだ……口止めされてる………特に雛子さんにはナーバスな事だから、未央理に知られたくないんだろう」
「………ドロ沼だったってことぐらいは予想出来るよ」
「………だろうな………だが、きみの名前を見たらその予想は当たってると思うけど?」
「………父親の名前何だっけ」
「………未央理の央の字で、ひろし……そして理子さんの理という字が入ってるだろ?」
「………あ……」
自分の名前の字を子供に使う親も居る。
「未央理の未は未完という意味じゃない……未知の未だ………君は大叔父にもしっかり愛情貰ってるんだよ」
「嘘だ………何でそう思うの?お母さんが、あの親父に未練あって付けたかもしれないじゃん!ほら、未練の未かも!」
未央理は信じたくない。大事にされなかった1週間で、父親への思いは断ち切ったのだ。今更聞きたくはない。
「そう、思いたいならそれでもいいが、君が俺の元に来たのは、大叔父のおかげでもあるからな………君がもう会いたくないなら、会わなくていいし、家族なら俺がなってやる。寂しさも排除してやるから、笑っていてくれ……泣き顔を見るのは俺も辛い」
「っ!」
未央理は秀平に頭を撫でられる。
子供の頃、秀平の頭を撫でたのは未央理なのに、今は大きくなった秀平の手は、とても頼もしく感じた。
「また泣くなら胸も貸すぞ?」
「っ!………き、今日はいい!甘えちゃうから!」
「甘えろよ、俺は夫だぞ」
「わ、別れるんだから!離婚してって言ってるじゃん!」
「…………」
「……っ………ご、ごめん……言い過ぎた……」
「好きにさせる、て俺は言ったと思うが?」
「っ!」
確かに、初夜の時に言われている。
未央理は秀平の事を気になり出しているからか、手を阻む事が出来なかった。
「………嫌なら拒否していい……俺はこのままだと君にキスするぞ」
「………ま………待っ……」
「嫌なら逃げろ、俺から」
「っ!」
じっと見つめられる秀平の目は熱い。目を反らせられず、秀平の顔が未央理に近付いてきた。
「逃げなくていいのか?……逃げても離婚もしないし、セックスしようとするぞ?」
秀平は未央理に逃げて欲しいのか、気持ちを見たいのか試している様だ。
そんな事は、恋愛初心者の未央理に分かる筈も無い。
「痛っ!」
「…………プッ……そんな緊張しまくりで身構える女にキスする訳ないだろ………俺を好きになったら未央理からキスしてくれ」
鼻を摘まれ、一気に雰囲気が変わる。
「し、しないもん!」
「………俺に落ちたら、すると思うがな」
「なっ!」
「言っておくが、俺はこの状況を好機と思って、結婚したんだ。離婚に応じたら、離れて行くと分かる女を手放す訳ないだろ。俺を好きにさせてやるからな、覚悟しておけ」
「………エロ教師!ロリコン!」
「ロリ………お前………俺はまだ24だ!8歳差なんて大した事ない!」
「公園で会った時、私4歳ぐらいだった!12歳のガキの恋の対象にしないでよ!」
「大人になったら気にもしなくなるんだよ!ガキめ!」
「そのガキを好きだって言うからロリコンなんでしょうが!」
「くっ………とにかく早く寝ろ!」
言い返せなくなって秀平は喧嘩を断ち切る様に、睡眠不足の未央理との口論から逃げた。
「寝るわ!言われなくても!」
「あぁ、お子ちゃまは早く寝ろ!」
バタン、と秀平が勉強部屋を出る形になってしまって、深い溜息が漏れていたのを、口論を気にして様子を見に来たのかお手伝いさん達に見られていた。それがまたバツが悪そうに秀平は部屋に篭ったのだった。
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