貴方は私を虐げてきたのではないのですか?【完結】

Lynx🐈‍⬛

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 和解とまでにはならなくとも、ぎこちない父娘関係にはなって、虐げられた態度を向けられる事も無くなった未央理は、週末に理子と会える様にはなった。

「何か……綺麗になったわね、未央理」

 2週間振りに会う理子は、死の直面にありながら、何故かスッキリした顔を未央理に見せた。
 秀平により、綺麗にされた娘を見た事で、嬉しいのかもしれない。
 外から病室に戻って来てからも穏やかな表情でいた。

「っ!」
「理子さん……未央理を託して貰い、感謝してます」
「………秀平さん、未央理を宜しくお願いします……この娘、意地っ張りだけど照れ隠しなだけだから……」
「分かってます………な?未央理」

 秀平も、天邪鬼な未央理を知るからか、態と未央理に同意を求める所が意地悪さを見せていた。

「ど、何処をどう捉えて言ってるの?」
「先週末の初デート」
「っ!」
「上手くいっているんだな、秀平君」
「………えぇ……喧嘩はありますが」
「未央理が幸せそうな顔を見たら、私も安心だ。藤枝の方は、落ち着きを取り戻したから、気にするな」
「大叔父さんこそ、俺の我儘で未央理を託させて貰い、ありがとうございます」
「え!………あ……ありがとう…お父さん……」

 秀平が深々と央に頭を下げた為、未央理も頭を下げた。

「未央理………私を父と呼ぶのは辛くないか?」
「もういいよ………理由は分かったから……だからって親しくするとかは、今は考えられない」
「お前のスマートフォンは、後日三条家に送る………結婚で名義が変わったのも処理しておいた……連絡が途絶えた友達にも連絡してあげなさい。消してはいないから安心しろ」
「…………じゃあ、渡されたスマホは?」
「好きに使え……解約するのも使うのも任せる」
「………分かった」
「理子………また来るからな」
「央さん、帰る前に未央理に謝ってから帰ってね」

 病室から央は出て行こうとするが、理子に呼び止められた。

「っ!」
「未央理、覚えておきなさい……お父さんも意固地なの………そっくりでしょう?」
「さ、理子………」
「うん、何となくそうだと思った………でも、謝って貰わなくていい」

 未央理は央に謝って貰うつもりはなかった。
 それは、不器用な性格で精一杯考えて、未央理が孤独にならない様にしてくれたと分かるからだ。
 未央理が秀平を好きにならなかったら、恨むかもしれなかったが、好きになってしまったからもういい、と切り替えている。

「未央理………」
「ねぇ、どっちが私の名前付けたの?」
「………そ、それは……」
「お父さんよ」
「………私、この名前好きだよ……だからいい、謝らなくても」

 謝らなければと思えば思う程、恐らく意固地になっている筈で、それで謝れなくて後悔してるとしても、もう未央理は許している。
 長く父が居ないと思っていた未央理が、突然父と名乗った央と1週間一緒に過ごしていた窮屈さがずっと続けたくはないのだ。もし、結婚という形で籍が変わらなかったら、雛子の逆鱗に触れながら過ごすのだと思えば、今の生活の方が断然いい。

「………そうか……今わの際迄には謝らせてくれ……」

 と、言葉を残して帰っていった。

「本当、素直じゃない父娘ね……私は今日疲れたわ……喋り過ぎちゃって……」
「お母さん……」
「未央理、お願いね………延命処置は本当に要らないの………生き恥を晒したくないから………残してあげられる物は何もないけど、お母さんの実家には絶対に知らせないでね………未央理を悔しい思いしか残させない人達だから……」
「………いいの?本当に」
「えぇ」

 理子はそれを伝えると、黙って窓の外を眺め、寂しそうにはしていたが、それ以上その事には触れなかった。

「理子さんの実家って?」
「調べたんじゃないの?」
「調べたのは未央理の周辺だけで、理子さんの家系は調べてない」

 サナトリウムからの帰りの車内。

「………お母さんも妾腹なの……産んだ母親はお爺さんにお母さんを突き付けておいて出奔して、小さい頃は施設で育ったって聞いた」
「………壮絶な育ちだな」
「引き取られた時もあったみたいだけど、折り合い悪く、家出したんだって」

 未央理もあまり知らない理子の過去。知り得る事しか言えない。

「一度、私が産まれた、と連絡したらしいけど、返事はその連絡した手紙と離縁状だったんだって」
「手紙は読んだのかな?」
「知らない……ぐしゃぐしゃにされた状態だった、とは言ってた」
「それなら、知らせもしなくて良いんじゃないか」
「………私も思ってたけど………」
「知らせるのか?」
「もしもの時は、とは………駄目かなぁ……」

 未央理は央との事があったから、理子にも希望があるのでは、とは思ってしまった。

「長い間、不通だったんだろ?しかも離縁状迄送りつけられたのにか?」
「………だって……」
「大叔父と相談してみたらどうだ?理子さんの実家の話ぐらい聞いているかもしれないし」
「………お母さんの事だからなぁ……さっき言ってくれてたらあの時話合ってたのに……」
「帰ったから、未央理に言ってきたんだと思うけどな……」
「………やっぱりそう思う?」
「あんまり今悩むな………来週からテスト期間入るんだから、今は勉強に集中しろ」
「そっちの悩みは、四六時中あるよ!」
「帰ったら、勉強見てやるから」
「………は~い……赤点取らない様に頑張る」

 だが、そんな未央理のペースには事が進まなかった。
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