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決行は国葬後

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「これが、騎士服で……こっちが魔道士のマントです」

 サムエルから受け取った魔道士のマントは本当に陰気な感じだった。
 そのマントを見て、フィーナはロマーリオに言う。

「ごめん、コーウェン……画力馬鹿にして」
「だろ?アレ以上は上手く書けない」
「殿下が不器用なだけだ、フィーナ」
「ユージーン………」

 魔道士のマントは漆黒で確かに陰気な物で、フードを被らなくても良いらしい。だが、フィーナの火傷痕を隠すには丁度良かった。

「え?ユージーンのもあるのか?」
「このマントは、魔法衝撃を半分程受け流す素材で出来ている。魔法具の1つだ。俺が開発し作り方を教えた物だから、今でも使えるだろう………俺の趣味では無いが」
「誰の趣味だよ」
「愚王」
「なるほど………でも、上手く隠せるな、これなら」
「魔法研究所所属になったみたいで、私は嫌なんだけど……」
「フィーナ、我慢しろ」

 ユージーンにフィーナは悟られ、仕方なく溜め息を漏らしたフィーナ。

「………分かったわよ……」
「俺が、国家魔道士になれと言ったら拒否した癖に」
「なる訳ないじゃない」
「そうだ、フィーナならなくていい」
「私が今回納得したのは、侵入する為だけよ!国に属する経歴さえも嫌だし、それで侵入をする気なんて真っ平ごめんだわ」
「…………分かったよ……もう言わない」
「今日はもう遅い………そろそろ寝るか」
「そうね………ありがとう、サムエル」
「いや、殿下の役に立てれたから、礼なんて要らない……じゃ、俺も時間空いたらまた明日来るから」

 サムエルは、借家を出て行くと、ユージーンが立ち上がりベッドのある部屋へと向かう。

「フィーナ達は同じ部屋でいいだろう?その代わり、魔法壁張って防音しておくようにな………喘ぎ声が聞こえて眠れないのは困る」
「「!!」」

 魔法具の鳥を預かってから、毎夜きいていたのだろうか、まさか鳥を通して聞いていたとは思わず、フィーナとロマーリオは赤面した。

「子作りは止めん……それでフィーナに生きる意味を与えて貰わないとな……殿下、抱き潰すのはフィーナがかわいそうですから程々にして下さいね」
「なっ!」
「ま、気になるでしょうから、コイツは俺が夜の間は面倒見ます」

 フィーナの肩に停まる鳥がユージーンの肩に飛び立つと、鳥を連れ部屋へと入って行った。

「あ、あんな事言われたよ!コーウェン!」
「散々聞いといて………今更か!」

 その夜、フィーナは魔法壁を作り、抱き合ったのだが、それはそれでまた嫌味をユージーンからとしてネチネチ言われ、それはそれで聞くしかなかったフィーナとロマーリオだった。
 翌日国葬が執り行われ、王城前の広場には大勢の国民が集まっていた。フィーナとロマーリオは、離れた場所から様子を伺っている。
 広場から見えるバルコニーにはトンプソンの大きな肖像画が飾られ、その前に国王と王太子妃のフィーネが立っていた。

「フィーナ……あれがフィーネだ」
「…………私と似てる……」
「……あぁ……だが、性格は全然違う……呪縛の所為だとしても、妹と思わない方がいい」
「…………そうね……私は掛けられた呪縛がどんなものか分からないけど、コーウェンが言うなら信用するわ」
「父の言葉が始まるな……何を話すのやら……」

 フィーナの肩を抱き寄せ、ユージーンは鳥から声を聞く為に、ロマーリオの肩に乗っていた。ユージーンとは会話が出来る状況ではないので、鳥らしくしている。

『皆の物、今日は我が最愛の1の息子の為によく集まってくれた!王太子トンプソンは幼き頃から病弱であった為、表立って公務に参加しなかった……国民の前に姿を現す事も無かったトンプソンの為に大勢集まってくれた事に感謝を述べる!』
「………よく口が回るな……」

 1人だけではない国王の子。トンプソン以外、としたいのだと分かる。

『王太子トンプソンには、息子が居た!だが、その息子も僅か3歳で病死している!よって、世継ぎが居らぬこの国にとって、由々しき問題となった!』

 ざわざわと、国の存続が危ぶまれそうな言葉を国王から聞く国民達は、騒ぎ立てていく。

『だが!……安心せよ!トンプソンの妃、王太子妃が名乗りを挙げた!唯一の王族になってしまったこの国王に、改に嫁ぐと申し出てくれたのだ!この老体に嫁ぐ決意をした王太子妃………いや、新たな王妃が若き王子を産み、世継ぎを支えると約束した!』
「「なっ!」」
『フィーネや、挨拶せい』
『…………この国により良い後継者を皆様にお与え下さいますよう、願って下さいませ………トンプソン殿下の分迄強い心を持ち、皆様を支える覚悟です……』

 賛辞は起きるが、これでは国葬なのか結婚なのか分からなくなっていく。

「取って付け加えた様な、上辺っ面な言葉だな………俺の知るフィーネは、あんな喋り方はしなかった」
?」
「多分な」

 だが、フィーナからすれば可愛がっていた妹だ。になってしまったと言われても不安が残ってしまうフィーナだった。

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