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如月
しおりを挟む大学の講義が終わり、帰宅しようとキャンパスを出る女に声が掛かる。
「雫~っ!駅前に新しく出来たカフェに行こう、て話があるんだけど、雫も行かない?」
「カフェ?……ちょっと待って…………あ、駄目だ……門限過ぎそうだから、パス!休講になった時誘わせて!」
雫と呼ばれた女は、腕に嵌めているブランド時計を見て、その時間を見て言った。よく見るとハイブランドに身を纏うモデル並みの美貌の女、天使雫20歳の女子大に通う2年生だ。両親を事故で早くに亡くし、今は会社を経営する祖父の元に引取られ、他人からすれば何不自由なく生活していると思われた。
「………あ、本当だ……厳しいもんね、雫のおじいちゃん」
雫を誘った友人もスマホの時間を見て納得する。
「うん、だからごめんね、また月曜に」
「また明日も会うじゃん、私達」
「………あ、そっかそうだね。多香子のお父さんの会社のパーティーか」
「そういう事!また明日ね!」
「バイ!」
友人と別れ、急ぎ駅に走る雫。送迎をさせると祖父からもキツく言われてはいたが、雫は少しでも祖父から自由を得たくて、通学の送迎は突っぱねていた。満員電車に揺られ、何がいい、と祖父からも言われたが、干渉し過ぎる祖父へ細やかな反抗心でしかない。厳格な祖父で、小学校から大学迄全て女子校。ラブレター等渡されたら、直ぐに相手を特定され、その両親さえも排除する徹底振りで、それに気が付いたのは雫が高校生の時だった。ラブレターを渡した男が、親の仕事を妨害し、家族を離散させた逆恨みで雫を襲いに来たのだ。
『お祖父様!何もそこ迄しなくても!私は手紙を貰っただけです!』
『雫!お前には儂が決めた相手が居る!その家にお前がだらしない男の影を匂わせる訳にはいかんのだ!だから、即排除するのは当然だ!』
『恨まれても知りませんよ!お祖父様!』
『ふん、そやつの家族が儂の言う事を聞かんかったからだ、猶予を与え、雫に近付くのを辞めるならそれで済んだものの、何度もあのガキは雫の周りをウロウロしておった、当然の報いだ!』
祖父も経営者だ、ワンマンな会社経営者であったのなら、猶予等与えなかった筈だ。だが、雫の事に関しては話は別。雫の事を殊の外可愛がり、欲しい物でなくても何でも与えてきたが、ただ1点だけは除きそれは、男関係だった。
そんな事を思いながら、駅の改札口を通ろうとするが、改札口の機械が雫の行方を阻んだ。
「え?何故?……まだチャージあった筈………」
「すいません、お客様。そちらの機能は使えなくなっているかどうか調べますので」
駅員に呼び止められ、雫は駅舎へ行こうとする。雫が通ろうとした改札口の機械は次々と人が通り、雫のスマホに入っていた交通パスのアプリが不具合だと感じた。しかし、駅舎手前でスーツ姿の男が待ち構え、名刺を出された。
「申し訳ありません、雫様。私はこういう者です」
「な、何?……………あ、貴方……皇家の人なの?」
「はい、我が主人が雫様にお会いになりたいと………天使氏、貴女のお祖父様には許可を貰っております」
名刺に目を落とし、雫が知っている家の名だと知ると、失礼な事が出来ない。戸惑うにも、祖父の事迄言われては従うしかなかった。
「皇の方が、今日は何を?何故家ではなくここで声を掛けたのです?」
「お迎えにあがったのですよ。電車に乗られてはお迎えにあがるのが遅れてしまいますので………大学では目立ちますし、雫様はお嫌でしょう?天使の威光をチラつかせるのは」
「…………流石、皇家ね……調べてらっしゃるの……」
「はい、ですから、我が皇家の車にお乗り頂き、主人とお話した後、天使家へお帰し致します」
「長居はしないわ、一応お祖父様の怒りの導火線を着ける気はないの………時間も1時間以上は無理だから」
「…………心得ております……では、車へ」
雫はもう一度、渡された名刺を見る。名刺には如月とある。
「如月さん、貴方の主人は誰?」
「…………勿論、皇家当主、利勝様ですが?」
「……そう………では、皇グループのトップからの呼び出しなのね?」
「…………」
しかし、如月は何も答えず、雫を振り返る。その表情に、雫は冷気を感じた。
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