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しおりを挟むエレズ、ミハエル、クラリスが一旦拘束され、乗って来ていた馬車に隔離されていた。
そこへ、ロイズが宿の宿泊延長を頼んだ後、馬車へと来る。
「早とちりも、傍迷惑なんだが………」
「ロイズ卿………」
エレズやミハエルはまだ納得がいかない様で、ロイズを睨む気力はまだ残していた。
「陛下が、何度も貴方達に話がある、と言って来た筈だ………陛下は、ルビリア公国を悪い様にはしないし、レイシェス様と共に統治しようと考えておられたんだ」
「な、何だと!」
「ふざけるなよ………何故インバルシュタットの国王がルビリア公国を統治するんだ!姫様が統治し、いずれルビリア公国の民から伴侶を選びインバルシュタットには負けない国にするんだからな!」
騎士の2人は、冷静を保ててはいなかった。
「まぁ聞け………陛下は、ある考えをレイシェス様にされた。それは、インバルシュタット国とルビリア公国を1つにする、という提案だ」
「「何?」」
「インバルシュタット国のリンデン国王、ルビリア公国のレイシェス公女が結婚し、2つの国を合併させ、1つにする。領土も広くなり、陛下はルビリア公国の復興に力を注げるし、ルビリア公国の後継者問題も、伴侶が決まり心配も無い。陛下は、ムラガの犯した戦の責任を全て取られる、と仰った………それでも今も尚、インバルシュタットの今の領土のまだ戦の跡も残されている。ご本人の弱さから戦を止められず、密かに進めて来た戦の後片付けを全て、陛下は責任として受け止めて来た………ルビリア公国程の領土は今迄の諍いとは違う。だからこそ、ルビリア公国を知るレイシェス様と共に復興を願う事に、レイシェス様も引き受けられたんだ」
「「「…………」」」
3人には考えも付かなかった事なのか、絶句していた。
ルビリア公国の中の事しか知らなかった3人は、インバルシュタット国の内情等興味もなく、ただ戦犯国だと決め付けていて、祖国の君主であるレイシェスを汚されたと怒っていただけだった、と認識させられたのである。
「姫様は………大丈夫なのですか?ロイズ卿」
「…………動かせる状態ではない、と医者は言っていたから、暫くあの宿に滞在する事になる。レイシェス様を連れ出した罪は重いとは思うが、陛下もレイシェス様が妊娠されているとは思っていなかったと思うし、それを考えても今は陛下も平静では居られない筈。モルガンやアンセムには今話した事を説明し、既にルビリア公国へと先に行かせた………彼等も今のルビリア公国を見て驚くだろうがな」
「な、何があるんだ?………今のルビリア公国は」
「戦が終わった直後、陛下は文官と兵士を派遣し、直ぐに怪我人達の治療と、港封鎖し他国からの侵略と混乱を招かない為に他国との通信を遮断、ルビリア公国に残った貴族達にも今の様な説明を行い、理解を得ている………全て、ムラガ1人で行わさせられた責任を取り、陛下が自らムラガを倒すと………戦から月日は経っているから、もう街中で死体が転がっている事ももう無いらしい。先日、全て墓地へ埋葬出来た、と連絡が来ている」
ロイズから明かされる事を早く知っていたら、無謀な計画をしなかったかもしれなかったと、とクラリスは肩を落としてはいたが、エレズやミハエルは違った。
「何で説明しなかった!」
「しようとしたが、貴方達が聞こうとしなかった。話が出来ない事を、レイシェス様もご存知で、ご自分が話す、と仰ったが、陛下がレイシェス様を止めたんだ………ルビリア公国の大事な公女を陛下が娶るのだから、殴られる覚悟もあってな………レイシェス様から聞かされたら、貴方達は、騙されている、信じない、と言うだろう、と陛下は考えていた」
「「「!」」」
そうかもしれない、という顔をする3人に、ロイズは溜息を漏らした。
「だから、傍迷惑だと言っている………拘束を解いてやれ………但し、レイシェス様の傍に付けるのはクラリスのみだ………嫉妬に狂ったエレズやミハエルは傍に置けない………陛下のお心が穏やかではないからな」
「エレズ、ミハエル………姫様のご様子は報告するから………」
「「………あぁ……頼む」」
ロイズがクラリスをレイシェスとリンデンが居る部屋へ連れて来る。
「陛下、エレズ達に説明出来ました……今はクラリスだろうと、レイシェス様のお世話には必要かと思われますので、連れて参りましたが」
リンデンからすれば、クラリスも傍に置きたくはないだろうが、侍女1人居た方が都合がいい。そう思ってロイズは連れて来ている。
「…………あぁ……あと、レイシェスが動ける迄、この宿で執務するからそのつもりでいてくれ」
「せめて、領主の邸に間借りしたらどうですか?こんな質の悪いベッドに、レイシェス様を寝かせるなんて………」
「…………流産した……そんな状態で動かせられない………」
「ひ、姫様…………あぁぁぁっ!…………申し訳ありません………姫様………」
クラリスも女だ。独身だが妊婦の身体が分からなかったのかもしれないが、女として生きるならば、妊娠は経験したい事の1つに上がるだろう。
部屋の入口で腰を落とし、床に頭を付けて泣きじゃくっていた。
「クラリス………其方には、近々レイシェスから外れて貰う………レイシェスが信頼していたとしても、俺は其方を信用出来ない………主人の身体の変化に気付かぬ侍女は要らない………ルビリア城に着いたら、其方の世話は要らぬ」
「っ!…………ゔっ………も、申し訳………ありません…………」
「陛下、言い過ぎ………」
「移動迄、レイシェスに贖罪する事だな……俺も怒りの矛先が7人に向いている。その怒りが消えなければ7人は一生許せるものではない」
医者に薬を処方されて飲まされた薬で、落ち着いていたレイシェスは眠っていた。
もし、レイシェスが起きていたら、クラリスを許すかもしれない。だが、それでもリンデンは許す事なく、クラリスを断罪したのだろうと思われた。
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