31 / 49
記憶消失
マキシマスの復讐
しおりを挟むマキシマスは国境に行く前、サブリナに連絡を取っていた。
「来ると思った……サブリナ」
「それはそうよ………貴方は私の大切な人だもの」
領土堺にある宿屋に呼び出せば、サブリナが来ると思っていたマキシマス。宿屋に呼び出せば、サブリナはマキシマスを求めると分かっていたからだ。
「俺を国境警備隊に追いやっておいて、大切だと?」
「えぇ、当然じゃない。どうせ、お姉様はロベルトと結婚するの。遺言書は覆せないわ。その内、ロベルトの子を産み、お姉様はこのしがないただの領主に治まり、つまらない人生を送って、貴方を忘れるわ…………私はその点違う……私は貴方を待てるもの………私を呼出したのは、私の身体が忘れられなかったんでしょう?マキシマス………愛してるわ」
サブリナは安い宿屋の一室で、マキシマスに抱き着こうと近寄る。しかし、マキシマスは火球を手に出す。
「サブリナ………ここが宿屋だと思ったか?………部下に命じて宿屋に仕立てた、単なる古い民家だった所だ。ここは、人気も無い場所。証拠も跡形もなく消し去ってやる」
「……………ひっ!!」
「覚悟は出来たか?サブリナ………」
「わ、わ、私が悪かったわ!!貴方がお姉様に靡いたのが許せなかったの!!だって、あんなに愛し合った仲じゃない!」
「…………俺にはロゼッタ以外、満足した女は居ない!」
「何で……………何で………皆して、お姉様ばかり好意を持つのよ!!私も綺麗じゃない!!」
「…………言いたい事はそれだけか?……なら、父親に会いに行ってやれ……」
サブリナはマキシマスに怯え、部屋の扉を開けようと必死になった。だが、扉は開かない様に、マキシマスは部下に指示を出して抑えている。
「お、お父様を殺したのはロベルトよ!!私を殺したらお姉様は悲しむわよ!!」
「………ロゼッタには、サブリナと縁を切ろ、と言ってある。生きていたって、お前は縁を切られ、領土から追い出され、侯爵令嬢の肩書は無くなる様に、ロゼッタは動くさ」
「な、な!お姉様がそんな事する訳はないじゃない!」
「するんだよ、お前がロベルトと手を組み、王太子を騙した罪を追求し、縁を切るとな」
「……………わ、私が悪かったわ!!謝るから!!マキシマス!!許して!!」
「…………甘い!!………サブリナ!!二度とロゼッタの前に姿を現すな!!俺が戻った時、ロゼッタの近くに居たら、ロゼッタが許しても、俺が許さない!!命が無いと思え!!消えろ!!」
「…………わ、わ、分かったわ!!お願い!約束するから!!命だけは助けて!!」
「消えろ!!」
「ひぃぃぃぃ!!あ、開けてよ!!逃げるから!!」
サブリナは逃げて行く。何処に行くかは分からない。だが王太子へ泣き付くのなら、マキシマスは命を絶て、と命じて国境に旅立って行ったマキシマス。その甘さがロゼッタを苦しめるとは知らずに………。
✧✧✧✧✧
サブリナがマキシマスに脅された後、サブリナは屋敷に篭っていた。マキシマスの部下の監視が続く中、屋敷の中でしか自由が効かないもどかしさで、化けの皮が剥がれる。侍女達に当たり散らし、ロベルトと何やら企んでる様子は、誰もが良い気もしなかった。そしてそれが、ロゼッタに対する忠誠心を増すことになった。ロゼッタの悪阻も酷くなり、侍従達は心配する。父親はロベルトでは無い、と誰もが思っていたからだ。
「お嬢様………いえ、領主様……お腹のお子は何方の………」
「………イーサン、今迄通りロゼッタと呼んで……領主て言われる程、私は出来た人間ではないもの」
執事のイーサンはロゼッタを子供の頃から知っているので、ロゼッタの変化には敏感だった。
「では、ロゼッタ様に伺います。ロベルト様の子ではない、と私共は思っております……如何なさるおつもりですか?」
「産むわ………ロベルトと結婚せざる得ないけど、離婚する糸口を必ず見つけてみせる……お父様の遺言書………必ず新しい物がある筈だもの………もしかしたら、ロベルトに奪われて破り捨てられたかもしれないけど……」
「ロベルト様に、妊娠の事が知られたら如何なさるおつもりですか?お腹が大きくなれば知られてしまいます」
「…………マキシマスの屋敷に逃げ込むつもりよ……あっちの屋敷で領主として仕事をしようと思っている………だから、イーサンの助けが必要なの………」
「やはり、マキシマス様のお子でしたか……サブリナ様にも知られないように致しませんと………」
ロゼッタは気持ち悪さを抑え、ため息を付く。ロベルトもだが、サブリナも厄介な存在になってしまったのが辛かった。
「皆には迷惑掛けるわね………何故あの子はあんな風になってしまったのか……マキシマスから聞くと、王都ではサブリナは冷遇されていた、と聞いたの………それが変わった原因かも、と私は思ったんだけど……」
「あまり悩み過ぎますと、お腹のお子に影響が………」
「そうね………早く解決策を見つけるわ」
「ご協力致します」
「ありがとう」
しかし、解決策は見つからず、ロベルトが決めた日取りになり、結婚式を挙げる事になってしまったロゼッタ。式等挙げる気はない、と突っぱねてはいたのだが、サブリナがドレスもいつの間にか用意させていた様で、式を挙げさせられた。しかし、長時間ロベルトやサブリナと顔を合わせなければならず、悪阻が酷かったロゼッタは我慢しきれず、式の途中で倒れてしまった。ロベルトとサブリナに妊娠がバレたのもこの時だった。
1
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
お姉様優先な我が家は、このままでは破産です
編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。
だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!
愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理!
姉の結婚までにこの家から逃げたい!
相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます
久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」
大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。
彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。
しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。
失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。
彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。
「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。
蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。
地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。
そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。
これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。
数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる