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再び現在
思い出したロゼッタ
しおりを挟む瓶を探し出したその夜。私室でロゼッタは入浴後、夜着に着替えて今夜起こる事への期待と恥ずかしさで顔が火照る。ロベルトとの離婚はまだだが、気分はもう独身だった。男を誘う夜着も今迄は興味等無かった。ロベルトと結婚し、数少ないが魅惑的な夜着を侍女達がロゼッタに用意はしたが、着る気にもなれず、殺風景な私室で3年寝るだけで過ごした。
「改めて、こういう夜着着ると緊張するわね………」
大きめのストールを羽織り、肌が露出が少ない様に隠すと、ブレスレットに念じる。
「マキシマス様のお屋敷へ連れてって」
一瞬で移動出来る転移魔具。愛用品がある私室ではないマキシマスの屋敷の客間。この部屋の方が私室に思えてしまう。
「ロゼッタ」
「…………マキシマス様?」
マキシマスは、再会する時はロゼッタの背後から声を掛ける。それは何故か未だに分からない。振り向くと、顔が赤らむマキシマス。
「何故………夜着を着てるんだ?」
「いけませんでした?………記憶が戻るかもしれないんです……そうしたら、食べたくなるんじゃないか、と………日記に書いてあったから……実感湧きませんけど………だって、食べられそうなキス、なんて………今の私は知りませんし」
「……………じゃあ、今のロゼッタで一度試す?………瓶開けてからとの比較も兼ねて……」
「………はい、と言いたいんですけど、一つお話が……」
「ん?」
「流産した原因、分かりました………」
「…………殴られた?」
「…………え?」
「……いや、ロベルトの行動と、ロゼッタの性格から、感情的になって、お腹をロベルトが殴ったか蹴ったかな、と思ってた………君から言いたくないだろ?辛いのは君だし」
「……………はい……産んであげたかった……貴方に会わせたかったです……たとえ、記憶が失くなってても………」
「ロゼッタ………おいで……胸の中で泣いていいよ……」
マキシマスは両手を広げロゼッタを待つ。マキシマスも泣きたいようだ。目にうっすら涙が溜まっている。
「マキシマス様!」
「ロゼッタ…………頑張ったな」
泣いたところで、戻らない我が子。忘れてしまって、今後悔しても遅かったが、ロゼッタは思いのままマキシマスの腕の中で泣いた。
「…………ありがとうございます……思い出す前に知れて良かったです」
「うん………」
ロゼッタは指で涙を拭うと、マキシマスはそれを止めた。
「?………!!」
ロゼッタの涙を舌で舐め取るマキシマス。
「………本当、ロゼッタは涙も媚薬だな……美味しい」
「………マキシ………んんッ」
マキシマスにとっては懐かしい媚薬の味と匂い。目に溜まった涙を舐め取ると、溢れた涙も舌で伝い舐め、唇へと移動した。初めて2人がキスした様に、マキシマスは目を開け、ロゼッタにキスを贈る。猛禽類の様に獲物を狙い、猛獣の様に貪るキス。ロゼッタの様子を見ながら、舌の絡め方も変えるマキシマスのキスは、早くもロゼッタを酔わせた。
「…………」
「…………どう?食べられそうなキスの味」
「………ま……参りました………もう……こんなキス……困ります……」
「何で?3年前のロゼッタだったら、もっと、て強請ってくれたよ?初めてキスした時の反応で、初々しくて今も可愛いけど」
「わ、私が強請った…………?」
「………そう、強請ってくれたね……瓶、開けるね」
「…………あ……」
心の準備をしたかったロゼッタだったが、マキシマスは瓶を開ける。ふわっと温かい空気に包まれると、3年前のロゼッタがマキシマスに会い口説かれ、恋に落ちた風景が鮮明に頭の中に入る。サブリナに牽制され傷付いた顔の自分や、マキシマスからの言葉で一喜一憂する自分。日記よりイメージが付きやすく、尚且つマキシマスの思考が強かったのか、ロゼッタと居てもロゼッタへの気持ちや思考がダダ漏れだった。特に夜の房事中の思考が強く、ロゼッタの顔が赤面していく。
「やだっ!こんな風に考えながら抱いてたの!!…………は、恥ずかしい!!」
「え?まだ序の口じゃ………子供出来た時の………あぁ、コレコレ」
「…………い、言わせたの!?………やだ!この体制…………」
脳内で侵されている感覚になり、ロゼッタの想像を遥かに越えた房事。日記以上の威力があった。言わば、男視点の無修正の房事なのだから、仕方ない。記憶は房事だけではないが、1日の終わりがほぼ房事で、見るだけで疲れたロゼッタ。見ただけで身体が疼く。3年も前の出来事ではある為、房事以外は点と点が複数の線で繋がった感じがあり、房事の光景がある為よりリアルさを感じる。
「…………わ、私…3年前みたいに出来る?」
「…………プッ……そうさせるのは俺の役目じゃないか」
「………どうりで、私ロベルトに抱かれても気持ちよく無かったのね」
「…………ロベルト下手だったんだ!ちょっと安心したよ…………はははっ!」
マキシマスがそもそも嫉妬した事はあるのだろうか。
「嫉妬したりはしなかった?」
「…………まぁ……3年間はかなり………部下に八つ当たりを……」
「………気の毒に……」
「…………ロゼッタ」
「キャッ!!」
「………3年間分の嫉妬、受け取るよね?」
マキシマスに抱き上げられ、耳元で囁かれたロゼッタは、返事としてマキシマスの首に手を回した。
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