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宝石採取

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 宝石は、研究者に渡される。アナはブルー系、エリスはグリーン系の瞳でどちらも希少価値が高めの色だった。黒が一番安く、茶、青、緑、赤、金と続き、その識別でも黒は明るい物より漆黒であれば高く、茶は模様があれば高く、青や緑、赤等もそれぞれランク付けられているという。その中でも金は別格というその金の瞳のマシュリー。
 マシュリーの胸には、自分から作られた虹色の美しい輝きの宝石になる。

「マシュリーは、作れてないのか?」
「…………わたくしにはがありますし………ですが、傷が付くようなら、新たな物を用意が出来ますが………」
「直ぐに出来るのか?」
「はい、わたくし涙だけではありませんから………注射器等あれば血でも宝石になりますわ」
「血?血も宝石に変わるのか!?」
「はい、稀なのですが、ツェツェリア族の中には血でも宝石に出来る者も居ります…………涙の方が宜しいですか?」
「……………涙の方で……マシュリーに痛い思いは……俺が嫌だ」
「…………注射ぐらい、皆しますでしょう?」
「駄目、涙!」
「マシュリー様、ここはルカス様に折れて下さい」

 マークが小声で、マシュリーの側で言うと、ルカスは途端に怒りをマークにぶつける!

「マーク!マシュリーから離れろ!近い!」
「……………大人気ないんだから」
「マーク卿に怒る事でもないですわ……涙を出しますから」

 マシュリーは、そう言うと、押し黙り瞑想に更ける様に、涙を溢す。頬に伝い顎からひと粒の涙を手のひらで受け取ると、ルカスに渡す。

「そ、そんなに直ぐに涙が出るのか?」
「本で感動して、涙を溢す事も出来ますが、過去の辛い事を思い出しても涙が出る時もありますわ…………迫害を受けてきた過去、目の前で死んでいく民………両親の前で連れて行かれて、泣き叫ぶ光景………その時を城の高い場所から見ていて何も出来なかった自分の弱さ………それを思えばいくらでも……」
「マシュリー…………もう思い出すな………悪かった………そんな事を思い出させて……」

 ルカスは、マシュリーを抱き締める。マシュリーも普段であれば逃げているが、縋りつける温もりを与えてくれるルカスに甘えた。

「もう大丈夫ですわ………普段は、閉じ込めていられる様になりましたから……」

 マシュリーから宝石を受け取り、ルカスはその輝きにまた見惚れる。

「本当に、美しいな………マシュリーの宝石は…………これを調べてくれ」
「あ、あの………もう離して下さい………」
「え?嫌だ…………折角、抱き締めれてるのに」
「…………わたくし、研究者方のお仕事を見たいのです………わたくし達、ツェツェリア族は宝石を作れますが、何故作れるのか分かりません…………そして、何故コルセアやアガルタが求めるのかを知りたい!ルカス様もその為ではないのですか?」
「…………分かったよ……その代わり、後でもう1回抱き締めさせて」
「……………え?」
「…………」

 マシュリーを離すと、すぐ様マシュリーは意識を其方に集中してしまい、ルカスの事は眼中になかった。

「ブッ…………ルカス様より、マシュリー様手強い」

 マークは面白い物を見た見たいに笑っていた。
 暫くし、宝石の分析が終わる。

「殿下…………ツェツェリア族が作り出す宝石は、ダイヤモンド並の硬質物質でございました………それはどれもそうなのですが………マシュリー様の虹色の宝石は、更に硬く………アガルタが付けた希少価値は、宝飾品の価値以外にも、やはり研磨材料になり、武器の強度や性質に左右されるものとなり得るかと……」
「……………やはりか……」
「………わたくし、アガルタへもコルセアへも、宝石を輸出してましたわ……それを調べられていて、希少価値等というランクを付けられていたのですね?…………民達はわたくしやお父様が作り出す宝石の色を知っています…………だから、金の瞳を、と………」
「モルディア皇国は、そこ迄宝石の質等考えていなかった………ただ、美しい宝石を装飾品として扱っていた……戦になるかもしれないな………」
「戦?…………そんな、ツェツェリア族の宝石で?…………ルカス様、何とかなりませんか?人の殺し合い等悲しみを生むだけですわ!」
「マシュリー…………侵略行為となれば民を守る………その為には多少の犠牲は出てしまうんだ……だから、ジェルバ国の土地にモルディア皇国の城塞を築く予定だったんだ…………ツェツェリア族を守り、侵略行為を無くす為に………」
「………だから、移住を?」
「あぁ………」

 マシュリーは途方に暮れる。移住するだけで、ツェツェリア族が守られ、それが完結では無い気がしてならない。戦争になれば移住したこのモルディア皇国も侵略行為に悩まされる事になるとは思ってもいなかったのだ。
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