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ざまぁみやがれ!
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しおりを挟むその日の午後、ルカスはマシュリーの部屋のクローゼットの中のデイルからの贈り物の数々と、他に保管してあった物を掻き集めさせた。
「ルカス様、何をされるのです?」
マシュリーだけでなく、アナやエリスもこの気持ち悪い物達を処分したくて仕方なかったので、見たくなさ過ぎて、仕分けされている間、かなりウンザリしている顔が続いていた。
「装飾品は宝石が殆どだ……なら、アガルタ側への【輸出】分に混ぜてしまえばいい………手紙は…………ふふふ……」
「「「……………」」」
不適な笑みを浮かべ、ルカスは手紙の数通だけ持ち、服のポケットに入れる。その笑みにマシュリーやアナ、エリス達は顔を見合わせ、冷や汗が浮き出ていた。
「仕分けしたら、モルディア側の門に集めておけ………民達には手紙の内容は見られないようにしろよ」
「はっ」
「さて…………と……マシュリー、ちょっと付き合ってくれ」
「…………どちらへ?」
「牢獄」
「……………?」
城塞に新たに牢獄を作らせていたルカスは、今迄の壁の外側に壁を作り、内側の壁を取り壊し、部屋を作った。その部屋は一部牢獄にしてあり、コルセアとアガルタ側の国境に向ける様に小窓も作られている。これは、捕虜となった者達に少しでも故郷を見せるものなのかは分からないが、牢獄部分の壁は弓の攻撃範囲内の高さの階にある。戦場になった場合、牢獄に囚われている者にもその攻撃が当たる様に、その階に牢獄にしたあたり、ルカスの戦略的な考えを持つと伺える。
「姑息ですわ……」
「囚われた囚人達が味方に攻撃される事や、攻撃する者達が、味方を攻撃するとは思わないだろ?………処罰を待つ迄も無くなるからな………勿論、コルセア人はコルセア側、アガルタ人にはアガルタ側を収容するし、火を着けらたら、煙が届きやすい高さには、窓を付けていない」
城塞として、長く使える様に、と考えているのだろう。奥へ進み、アガルタの使者1行の収容場所にやって来たマシュリーとルカス。部屋に4、5人ずつの兵士が収容され、デイルは1人で収容されている。
「よぉ……」
「……………マシュリー!!出してくれ!!一緒にアガルタへ行こう!!アガルタでは俺は侯爵の地位を貰ってるんだ!分かるか!ツェツェリア族が奴隷なんかじゃないんだ!俺の妻になれば、一生平和で暮らせる!」
ルカスの声で、デイルは気が付くが、ルカスを無視し、ルカスの背に隠れる様に覗き込むマシュリーにしか視界に入っていない様で、そのデイルに怯えていたマシュリー。
「阿呆だな………お前……」
「!!五月蝿い!黙れ!………マシュリー、こんな男に騙されるな!俺の気持ちは知っているだろう?なぁ!」
「……………気持ち悪い……です……」
「マシュリー!!」
鉄格子越しに居るにしても、恐怖心が拭えず、ルカスの背に隠れてしまう。
「聞きたいんだが………そうしたら、マシュリーと少しだけ話をさせてやる」
「…………何だ……」
話をさせてやると言われ、ルカスに反応するデイル。
「ジェルバ国から出てからの生活を聞かせて欲しい………ジェルバ国を出たら、アガルタは奴隷になる者が多いと聞くが?」
「…………そんな物は簡単だ………ツェツェリア族の情報と交換さ」
「何を言った?」
「希少価値の評価分けと言えば分かるか?………俺も金の瞳でな………それを隠す為に瞳の色を変える事に成功していたから、家族全員緑の瞳にし、アガルタに行った………ツェツェリア族だと知られない様に」
「瞳の色を………変えれる?」
「…………ツェツェリア族の瞳は一色じゃないからな、アガルタ人の緑に合わせればそれだけである程度は騙せる」
瞳の色を変える事が出来るとは思わなかった。その色で産まれたならそれを受け止める事が当たり前だったツェツェリア族の民達は、色を変えようとも思っていない。あとは涙を人前で出さなければ、他の人間とは変わらないのだから。
「それで、王族に取り入ったのか……」
「あぁ………同族の奴隷になった奴等を犠牲にしてな………ザナンザもその1人さ」
「……………え……?」
「…………マシュリー、知らないだろ?……ザナンザが俺と親友?周りは馬鹿な奴等ばっかりで、まんまと騙されてくれたさ………ザナンザはなぁ……俺を監視してたのさ……俺が1人になると、マシュリーを傷付けるんじゃないか、とな………だから利用した………3年前、希少価値を付けたのは俺の親父だ、それをアガルタに売ったのさ、金の瞳は王族の象徴、人数も少ない………ツェツェリア族の瞳の色の把握は、王族たる者なら容易いからな……人数から割り出して、希少価値の付加価値を付けてやったのさ!…………ザナンザをアガルタに連れて行け、とな!死んじまったが、そうなると、計画も狂ったんで、ジェルバを出たのさ………内通者が親父と俺だと知られない為に………」
「……………最低なクズだな……」
「ひ、酷い………兄様……」
この後、自分が如何なるか等、考えているのかいないのか、ボロボロと喋るデイル。
「その代わり、金の瞳の若い女……マシュリーだけは俺に寄越せ、と条件付きでな!」
「…………馬鹿だな、お前………マシュリーをアガルタに連れてったとして、アガルタの王に奪われるとは思わないのか?」
「…………王は、俺の言いなりさ………なんせ、ツェツェリア族の奴隷達を管理しているのは俺で、俺が居なきゃ奴隷達は手に入らねぇ様にしてるんだよ!」
「じゃあ、お前がマシュリーを連れて帰れなかったら如何なる?」
「……………そんな事を聞いて如何する……お前には関係ない」
「囚われの身で、如何やって帰るんだ?アガルタに」
ルカスは聞きたい事を聞き終えたが、ベラベラと喋るデイルのこの余裕に、危機感があった。
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