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アガルタ国王子動く
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しおりを挟むその日の夕方。アナがルカスに新たなカフスを持って来た。夕食時でもあり、昼間はただマシュリーとまったりしていたルカスは、着崩してはいたが午前中と同じ服でいた。
「…………うん、やはりいい腕の職人だ」
「祖父も喜びます!マシュリー様の宝石なら喜んで加工しますから、とお伝えしてくれ、と」
「…………そうだな」
「?」
何故か吃るルカスに不思議に感じるマシュリー。その疑問のまま、食事も終わり、翌朝発つルカスの為に、早々と侍女達は2人を邪魔しない様に薔薇の間を後にした。
「ルカス様」
「ん?何だ?」
「…………房事の時のあれらも、アナのお祖父様に加工を頼んだのですか?」
「!!………ま、まさか!!流石にツェツェリア族の者は、誰の物のか分かるみたいだから、モルディアの…………職人に頼んで……」
「………あの様な物を作る加工職人等、ツェツェリア族には居りませんわ」
「…………宝石の加工職人ではない……」
ルカスはもう服を脱ぎ、マシュリーの手を取ると、ベッドへ誘う。
「では、どんな方が?」
「…………世の中には、房事の時に道具を使用したい者も居て………それ専門に道具を作る職人が居るんだ………アンナがそこの常連だった………それで…………ちょっと興味があって……………だな………だが、道具を使った事も俺は初めてで!…………マシュリーに使ってみたいなぁ…………と……」
「……………アンナレーナ様の……やっぱり……」
「…………え?」
「ルカス様はアンナレーナ様に似てますわ」
「何処が?」
「嗜好?」
「俺は同性同士ではごめんだ………アンナは同性でも平気だったからな」
「…………確かに……コレット様との房事見せられましたわ」
「……………女同士のは見たいなぁ」
「ルカス様………きゃっ!」
マシュリーはルカスに押し倒され、顔に掛かった髪を掻き分けると、額にキスを落とす。
「でも、やっぱり俺は男女の房事がいい………俺の相手はマシュリーただ1人」
「…………わたくしもルカス様ただ1人ですわ」
もう、言葉は要らない。そのまま深いキスをしあうと、朝迄マシュリーは身体の中にルカスを感じながら、ルカスはマシュリーの身体を埋めながら、暫くまた会えない日を噛み締めるのだった。
♡♤♡♤♡
「行ってくる」
「……………行ってらっしゃいませ……」
「寝てていいって……」
「お見送りしたいのに………」
「ルカス様が、また抱き潰すからです!」
朝、またベッドから起き上がれず、ルカスを見送るマシュリー。白銀の髪のルカスに抱き着いてキスも出来ないまま、またベッドから見送るしか出来ないでいた。
「その御髪、皆驚くでしょうね………」
「………何度か、神力で髪色を黒に戻せないかやってみたんだがなぁ………マシュリーはどっちが好き?」
「………甲乙つけがたいですわ」
「そっか………じゃあこのままでいいや……見慣れてないから黒にしたかったが、白銀も気に入ってくれてるなら、これにする」
「私は黒に戻して欲しいですけどね…………お育てしたルカス様が……」
「そうは言っても、父上も母上もマークも白銀だからなぁ………公爵家の人間はほぼ様変わりしたらしいし」
「え!陛下や皇妃様迄ですか!?」
「あぁ、そう、変わってたな」
コンコン。
『ルカス様、出発のご準備は整いましたか?』
マシュリーとルカス、カレンが談話中、マークが迎えに来る。
「あぁ、今行く…………マシュリー、早く戻れる様に頑張るから」
「お身体にはお気を付けて下さいませ」
薔薇の間をルカスは出ていくと、廊下からルカスの笑い声が聞こえる。
『ははははははっ!色が変わった、て聞いたが、ソレなかなかいいなぁ』
『気に入ってるんですから、笑わないで下さいよ!エリスはカッコイイ、て言ってくれたんです!』
「…………エリス、マーク卿はどう変わったの?」
気になる会話になった為、エリスに聞くマシュリー。すると、エリスが自分の髪に頭を当て説明する。
「前髪の一部分だけ、白銀なんです、ひと束ぐらいの…………カッコイイんです!すっごく!」
「そう………帰ったら見てみたいわ」
「しかも、片目だけ白銀なんですよ~」
「片目だけ……」
中途半端な気もするが、神力は宿ってはいるのだろう、帰って来るのを楽しみにしようと、マシュリーは今からウキウキしていた。
城の廊下を歩くルカスとマークの変化に驚いた者が大半で、結婚式の時の使徒の言葉はに嘘がなかった、と信憑性を増した。城内でも驚かれたのだから、街もかなりの反響があったのは言うまでもない。
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