【完結】鬼畜皇太子にロックオンされまして…………

Lynx🐈‍⬛

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化物になったルカス

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 ルカスはソファに座り、思考を巡らせると、精神が身体から離れる。

「「「「!!」」」」
「ほ、本当に意識が……」
「見ろ!もう陣営に!!」

 血相を変え、兵士達が壁から国境の陣営を一目散で見ようと乗り出した。
 一方のルカスは、精神だけ陣営に飛ばし、アガルタ兵士に声を掛ける。

「失礼、1会いたいんだが」
「だ、誰だ!」
「名を名乗れ!!」

 身分は一兵よりは高そうに見える気品漂わせるルカスに、剣だけは抜き、構えるアガルタ兵士達。

「名乗る名は無い………俺は、とだけ言っておく………第三、第四王子が来た筈だ、会わせろ」
「誰が会わせるものか!」
 
 拒否をしていた兵士達の中で、ふと1人の兵士が気付く。

「ひ、1人で来たの……か?」
「勿論そうだが?…………あれを見ろ、心配そうに、俺の部下達が覗いている。

 そう、ルカスの指示だ。戦闘態勢でない兵士等、怖いものではないからだ。明らかにアガルタからすれば、ジェルバの方が分が悪い様に見える。

「王子達に話してくる、ここで待て。」
「あぁ、出来るだけ早くしてくれ」

 アガルタ兵士は剣をルカスに向け、牽制する姿勢を崩さない。暫く待っていると、バタバタと身分の高そうな2人の青年がやって来た。

「おぉ、来た来た………」
「敵の参謀長官が何用だ!!」
「…………撤退してくれないか?」
「「…………何だと?」」
「何故ジェルバを狙う?お前達が狙うはここには居ない、と伝えた筈だが?それに、金の瞳の娘は居なくとも、は居る筈だ」

 チャッ!
 カチャッ!

 王子達も剣を抜く。

「では、何処に居る」
「さぁね、奪われたから何処に居るのか……アガルタでなければコルセアだろう?」
「一国の王女な筈だ、は」
「あぁ………だから探さねばならない……で油売って、足止めになっているつもりもない…………俺達がまだ探しに行けないのは、お前達アガルタのせいだ、アガルタに居ないなら、コルセアに探しに行こうと思っているのに、お前達が邪魔をする」

 態度は高飛車で、さもと言うルカス。コルセアとの事に邪魔をするから攻撃をした、と思わせたいのだ。そのままアガルタ兵士達がコルセアに行けば潰し合いが始まる。

「では、確認させろ」
「ん?何処をだ?」
「ジェルバ国内だ!」
「ふざけてんのか?アガルタ兵なんて入れたら、国民を拉致するのが目に見える。誰が入れるか………このままコルセアに行くなら、攻撃はしないでおこう、だが攻撃するなら生きて帰れないと思え、お前達アガルタ兵士が何回殲滅されたと思う?国によってな!」
「この野郎!!……………っ!!」
「「「「「「!!」」」」」」
「あぁ………言い忘れてた、俺触れないから剣を振りかざしても無駄無駄」
「……………ば、化物!!」

 剣を振りかざされても、手応えが無い相手に、剣を振った兵士は腰が砕け、尻もちを付き後退りする。何人も、剣を落として尻込みを始め、怯え出している。

「化物って、部下にもよく言われるなぁ………だが、こんなに怯えられるのは始めてかも……」
「ジェルバの者は宝石を作るだけじゃないのか………?」
「さぁね……如何する?俺相手に戦うのか?剣も刺さらないのに………あぁ、矢も刺さらないぞ」
「拘束しろ!」
「無理だって言ってんだろ?」

 羽交いめしようとしても、無理だというのに、何人もルカス目掛けて覆い被さろうとするが、ルカスの身体を通り抜けるだけで、人の山になっていく。

「ど、如何なっている…………」
「俺は返事が欲しい、と言ってるんだが?答えてくれないか?」
「……………ジェルバは潰せ!!男は殺せ!女子供は拉致しろ!!」
「……………あっそ?………じゃ、遠慮なく戦うかな…………」

 ルカスは右手を上げ合図をすると、アガルタ兵士達の前から消えた。

「「「「「き、消えた!!」」」」」

 精神が戻った、ルカスの実体。

「ふぅ………取り付く間も無かったな」
「歩兵、騎馬は準備してますよ」
「じゃ、弓兵も援護してくれ」
「はっ!」

 ソファに凭れ掛かり、深呼吸をして一息着くルカス。

「大丈夫ですか?」
「…………酸欠状態に近いな……あんまりやりたくない力だ………」
「じゃ、やらないで下さると助かりますね………ヒヤヒヤしますし」
「………剣を振りかざされた時か?」
「ええ………」
「マシュリーや父上、母上もびっくりしてたからな…………はははっ!」
「笑い事じゃないです、て………将軍2人も持ち場に行ってますから、指示して下さいよ、ルカス様」

 水をガブ飲みし、ソファから立つと、剣を握る。

「先に、減らす………それから行くぞ!」
「…………大丈夫ですか!?」
「あぁ、2回ぐらいは斬撃飛ばせる」
「化物………」
「プッ………アガルタ兵にも言われたが、俺はマークから言われる方が嬉しいな!」
「それ…………褒めてませんけど」
「でも完全に罵ってないし、愛情がある…………さぁ、来い!殲滅覚悟でな!」
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