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虹色の涙
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しおりを挟むこの『虹色の涙』でどうやって判別するのか全くわからないルカス。
「ルカス様、この石を手に持って下さい」
「持てばいいのか?」
「はい」
ルカスは手に包むと、手から温もりを感じ、手を広げる。すると、七色に光っていた物が、緑と透明のグラデーションに変わったのだ。
「な、何だ!これ!」
「え~っと、ルカス様は風属性と光属性ですね………初めてですよ、2色見たの………陛下は緑1色でしたし」
「お、おい!俺は以前もマシュリーの宝石は触ってたぞ!何でこんなに事になるんだ!」
「え!?…………それはですね………ちょっと待って…………っ!………あった!今からそれ言います!」
グダグダな説明をする辺り、レナードもよくは分かっていないらしく、資料をガサガサと捲っては説明を始めた。
「えっと………モルディアの皇族達が封印されてしまい、ツェツェリア族の宝石の意味を無くしてしまったのと、制御の研究しても、それを調べる術を無くし、研究は頓挫したそうです………それで、侵略した過去に後悔をした過去の皇帝は不名誉を消し去り、古代文字の使用を禁止し、現代の文字を浸透させ、古代文字を読む事も禁止した為に、モルディアでは読める者が居なくなって、研究していた内容も全て闇に…………と」
「…………阿呆だな………俺の祖は……」
「それで?ルカス様が光と風の属性が分かった所で如何するんだ?」
「制御する宝石の色の相性だ。」
「「相性?」」
ルカスは思い出す。戦いの場で火矢を放つ兵の手解きで、コントロールを促したのを。その矢の火力が大きくなって、敵陣営が殲滅したのだ。
「………あ、火は風に煽られると強くなるよな、火力」
「………あ、アレですか!」
「ちょっと!弓兵の……お前だ!試してくれ!」
「は、はい!」
その兵士は『虹色の涙』を持つ。
「熱っ!」
彼が触れた『虹色の涙』は赤1色。
「火属性………」
「そうなんです、触る者によって、石も温度が変わるし、制御する為の宝石の色も分かるんです」
「そういえば、俺が試したのはマシュリーの血から出来た宝石だった………赤だったから割れたのか?」
「かもしれないですね………城でも何人かに試してもらいましたが、色が違う物に込めると割れましたね」
「なるほど………それで制御出来たら楽だな…………マーク、お前のが気になるんだが」
「……………俺ですか!?」
「お前、両目の色違うし、髪も中途半端だし」
「あ!俺も気になる!次はマーク!お前だ!早く持て!」
集まっていた者達も気になるのか、興味津々で見つめていた。しぶしぶマークは石を手に取ると、ルカスやレナードがマークに質問をしてくる。
「熱いか?」
「冷たいか?」
「…………温度は感じないですね」
「「見せろよ」」
「………………な、何だ……これ」
「光と…………黒は何だ?レナード」
「………文献によると闇ですね………」
「………光と…………闇…………プッ!何だ、その極端な属性!!」
「知りませんよ!!俺だって分かんないんだから!!」
「でも、待て……レナード………マークって、根暗だよな」
「暗いっすね」
「俺に嫌味言う内容も暗い時と、嬉しそうに言う時あるよな?」
「ありますね」
「「マークの性格じゃねぇのか!?」」
「失礼だな!おい!」
兵士達も何故か納得する頷きを繰り返し、マークにじとじとと嫌味を言われていたのは、ジェルバ内の事に留める事にしたルカス。根に持つタイプの為、それ以上穿り返すと、大抵ルカスに回って来るからだった。
判別が終わった頃、ジェルバの大臣にその話をしたルカス。
「…………知りませんでした、そんな力が……古代文字の本は多くありますが、書かれていた内容は、モルディア皇国からの迫害内容の物が多く………コルセアやアガルタより、恐ろしい国だと………モルディアの神力の為だったのですね」
「モルディアー二の義父上にも、我が父から話はあるとは思いますが、帰ったら私からもジェルバでの話をすると思います………我が祖達がして来た事でしたが、代表して私からジェルバ国民全員に謝罪を申し上げたい………」
ルカスは大臣達に頭を深く下げた。
「頭をお上げ下さい、ルカス殿…………我々は、今モルディア皇国には感謝しておるのです…………我々の代わりに戦って下さった……怪我人は出ましたが、ルカス殿の力で死者は居りません……我々の時代はそれでいいんです…………戦争は嫌なものです……憎しみと悲しみしか生まぬ………勝った側はいいでしょう………だがその中にも亡くなる者は居る筈だ………その者の家族は喜びませんからな……」
「…………だが、私は………守っても………敵だと言うだけで、憎しみと悲しみを生んだなのです」
「…………それなら、誇れる国を作ってくだされ………戦いの無い、平和な国を」
「……………努力します」
もう一度、ルカスは頭を下げたルカス。だが、静寂だった部屋が、騒がしくなった。廊下から慌てる様に、バタバタと走る音が響いたのだった。
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