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ソロ
しおりを挟むカムラの王宮でサイファが目を覚したのは、その日の夜だった。
「サイファ、目が覚めたか!」
「………アーサー?どれぐらい寝てた?」
ベッド脇に座って、ジュリアナの指南書を読みあさっていたアーサーが付き添ってくれたらしい。
「3時間ぐらいかな、もう夜だ。………叔母上の指南書、凄いな。読みあさってしまったよ。」
「…………あの石から戻した人は?」
身体を起こし立ち上がろうとするが、まだ力が入らないサイファ。
「………体力付けなきゃな……あと3人居るし……。」
「逃げないんだな、サイファは……僕だったら逃げてたかも……。」
アーサーの言葉で、サイファも考える。
「……何だろな………サンドールから、ロートシルトに来た時、ラルドーのおっさんとの旅、面白かったんだよ。父さんも……アーヴァインの方な、こんな風に旅してたんだろうな、て思ったらもう止まらない、ていうか……。親じゃなかった、てのはショックで今でも嫌だけど、石になってる本当の父親がこの人なんだ、て感じるんだ。声はどんなんだろ、どんだけ強いんだろ、て知りたくなったっていうか……。」
コンコン。
「………話声がするな、と思ったら、もう目が覚めたんですね、サイファ様。」
「………あ……。」
「………大丈夫ですか?サイファ様。」
父さん、と呼ぶなと言われている様な距離感を保とうとするアーヴァインを名前で呼べないサイファ。
「…………う、うん。」
「……やはり親子ですね、探究心の尽きないシヴァ様とジュリアナ様でしたから、サイファ様も気になる事はとことん追求された。アーサー様の読まれている指南書、ジュリアナ様のを持ってこられた事が、サイファ様らしい。」
「…………あの人は如何なった?石から戻した人。」
「お会いになりますか?意識もあり、医師からは仮死状態のようだった、と。ドラドも体力は落ちて歩けないですが、怪我もなく元気ですよ。」
「会う!会いたい!」
「僕はこれ読んでていい?」
「あぁ、でもあとで返してくれよ、俺もまだ読んでないから。」
アーヴァインに案内され、ソロとドラドが居る部屋に。
椅子に座るドラドと談笑している、ベッドに上半身起こして座るソロ。
やせ細ってはいるが、目には力が篭っている2人。
「ソロ、ドラド、落ち着いたか?」
「………アーヴァイン?老けましたね、16年も石になっていたとは………。シヴァ様やジュリアナ様より先に戻ってしまうとは……。」
「………すいません、俺が自信無くて……。」
「……………サイファ………様?」
「………はい。」
痺れが残っているのか、ふらふらとした手付きでサイファに手を伸ばす。
「…………サイファ様………申し訳ありません……私など捨て置きして頂いても良かったのに……。」
「………俺………全く戻せる自信無かったんで、簡単な気配の人から、て………。」
「サイファ様、間違った選択はしてないと思いますよ。アレクセイ様もソロが4人の中から浄化しやすいだろう、と仰いましたし。」
「…………え?誰からでもいい、て言ってなかった?」
「………アレクセイ様は、選択肢からサイファ様はソロを選ぶんじゃないか、と。ドラドを戻したのだって初めてで、身内であるシヴァ様、ジュリアナ様、皇太后様では怖い……ならソロで、と……。幸い魔に侵されてる率が強いのはシヴァ様とジュリアナ様らしいので、練習台にしてはもってこいだ、とアレクセイ様の見解です。」
「相変わらずですな、アレクセイ様は……。」
やれやれ、と諦め気味にため息を付いたソロ。
「…………それでも、半信半疑だったと思う。ソロが倒れかる時、俺の後ろに居たアレクセイ様が駆け寄って、支えたんだから。」
「嬉しいですな…………アレクセイ様にはいつも感謝しっぱなしですよ。」
サイファはホッとした。
まだ、3人居る。
その3人を戻せる自信が付いたのだ。
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