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しおりを挟むロゼッタの番になり、飲食店も兼ねている舞台に上げさせられた。
すると、デイビッドが知らない女を肩に抱き、酒を飲んでいる。
女は泣いていて、ロゼッタと同じぐらいの年齢と見えて、ロゼッタが居た部屋では見なかった顔の女だったので、恐らく初めて売られた女なのだろう。
「嫌ぁぁぁっ!」
「……………」
その女にキスでも迫ったのか、デイビッドは女に押し倒された。
すると、近くに居た男達に羽交い締めされた女は、そのまま服を剥ぎ取られてしまう。
「デイビッド!此処でヤってやれ!」
「へへへ………仕方ないな……亭主に暴力振るう奴はお仕置きしないとな」
デイビッドはズボンに手を掛けて公開拷問でもしようと言うのか。
よく見たら、デイビッドを嗾けているのは、デイビッドの友人達だ。
---あんな奴等の口車に乗せられたのね!デイビッド………馬鹿な男だとは思ってたけど、本当に馬鹿なのね!未練なんて無いし、離縁出来て嬉しいけど、あの娘が可哀想過ぎるわ!
店の店員も注意せず見守っていて、客達も囃し立てている。
ロゼッタは靴を脱ぎ、デイビッドに向けて投げた。
「デイビッド!アンタ本当に無節操なのね!」
「痛っ!…………な、何しやがる!………お前………ロゼッタ!」
「嫌がってんのに、こんな大勢居る場でシようとするなんて、馬鹿以外の何者でも無いわ!お粗末なモノぶら下がってるんだから、恥の上乗せよ!」
すると、店内は皆大爆笑と共に、デイビッドの身体の一点に集中して見られていた。
「粗チ○だってよ!アイツ!」
「見せろよ、粗チ○!」
「ロゼッタ!てめぇ………昨晩も可愛がってやっただろうが!」
「は?貴方とは離縁しましたから、私とは無関係な筈です。可愛がられた事もありません」
「その女を下がらせろ!その女の競売は延期だ!」
「ち、ちょっと!引っ張らないでよ!………あ!ま、待って!お願い待って!」
この騒ぎでロゼッタの競売は無くなって、一安心だがロゼッタは慌てる。ペンダントを無くしたのだ。
ずっと手の中にあったが、デイビッド目掛けて投げた靴と共に投げてしまったらしい。
「ペンダントを落としたの!大事な物なのよ!探させて!」
「煩い!黙れ!」
「お願い!アレがないと両親が探せない!お願い!」
「後で探してやるよ!今客入ってんだ!」
誰が拾うか分からないし、客が拾って売られたりしたら、もう見つからないだろう。
だから、ロゼッタは自分で探したかった。
店の男達に引っ張られようとも、壁や扉に必死にしがみつき抵抗したのだが、探しに戻る事は出来なかった。
---如何しよう………手掛かりなのに……本当に私は親に捨てられたか如何か分かる唯一の物なのに………
ロケットになっていて、ロゼッタの記憶に残るのは、絵だった筈なのだ。手にした時、開閉が嬉しくてよく開けては閉めてを繰り返し、壊れるよ、と言われた事があったのだ。
それが両親なのかは定かではない。些細な事だけでも手掛かりになるならば、あのペンダント程大事な物はないのだ。
「ペンダントを探させて!」
しかし、探させてもくれず、騒ぐロゼッタの手足は縛られてしまった。
しかも叫ぶものだから、猿ぐつわもされる始末。他の女達とは距離も置かされ、ロゼッタは泣いていた。
その頃、店内ではデイビッドがロゼッタの靴を拾い握り締めて、怒りを露わにしていた。
「クソッ!ロゼッタめ!俺より絶対に不幸になりやがれ!美人だから俺が可愛がってやった、てのに恩を忘れやがって!」
カチャ。
「おい、デイビッド何か落としたぞ」
「ん?…………これは……」
「何だそれ?ペンダント?」
「…………あぁ、コレはロゼッタがずっと持ってたペンダントだな」
「金になりそうか?」
「さぁな、こんなドス黒いペンダントなんて………これ、肌見放さず持ってたんだぜ?気持ち悪いだろ」
ロゼッタが最後だった競売も終わり、店も落ち着き始め、デイビッドの新たな妻になった女を抱き寄せて、デイビッドはペンダントを翳して見ていた。
「ロケットなんじゃないか?それ」
「多分な………壊れて開かないらしい、以前そう言ってたぜ。蝶番を外せば見えるだろうけど、ロゼッタはそれを俺にもさせなかったんだ」
「お前、嫌われてたんじゃね?」
「あぁ?」
「そうだよな、あんな罵倒するぐらいだったし?」
「やめろや、俺が嫌われてる訳ないだろ。夜だって、いつも大人しく恥ずかしがって声も出せねぇし、俺が怒ると直ぐ黙ってた女だぞ?」
しかし、競売に掛けられた前でのロゼッタは、デイビッドの印象とは少々違っていた。
それでも、デイビッドにすれば、ロゼッタは自分の下の存在で、見下す事にしたいので、反抗は許したくない。
「失礼」
「ん?」
「そのペンダントを見せて貰えないかな……何なら買い取ってもいいが?」
「こんなドス黒いペンダントを?」
「あぁ」
【妻競売】の店には、平民風に装い、貴族達も来るが、紳士的な口調でその人物が貴族か平民か、分かる時がある。
デイビッドに声を掛けた若い男は、恐らく前者。
「幾らでだい?悪いがコレ、元妻のペンダントでね。俺も薄情じゃないから返しに行こうと思ってたんだ」
「…………君は、薄情じゃないと言いながら、妻を競売に掛けたんだろ?それを薄情じゃない、と言い切るなんて、薄情としか思えないな」
「っ!」
「確かに」
「うんうん」
「お前等!どっちの味方だ!」
「どうせ、売るつもりだったのなら、私にその価値の判別をさせてくれないかな?希望金額も聞いておいて、君から買うか如何か伝えるよ」
「…………いいぜ、売るなら金貨500で如何だ?」
「お、おい!それにそんな価値無いだろ!」
デイビッドの収入で頑張って稼いでも、一生掛けても稼げない額だった。金貨1枚でも1年で稼げないぐらいの大金をデイビッドが提示する。
「いいだろう、と言いたいが生憎そこ迄今は持ち合わせてはいないんだ………そうだな………金貨5枚で今は契約金として如何だろう」
「き、金貨5枚………」
「お、おい………デイビッド……それでも大金だぞ、おい………」
「…………契約金だな?いいぜ………その代わり、後の金貨495枚は早くくれよ?」
男はデイビッドの代わりに判別しに行こう、と伝えただけだ。
だが、デイビッドはもうこの男に売ったと思った勘違いをしている。
「…………あぁ、良いだろう」
「俺は隣の街のデイビッドだ。あの街には俺1人しかこの名前は居ない」
「分かった………用意出来たら連絡する」
「いつになる?」
「私の住む領地は此処から遠くてね、1ヶ月は掛かるな」
「分かった。約束は守ってくれよ」
この選択がデイビッドに幸を齎す物なのかは、分からない。しかし、デイビッド以外のデイビッドの友人達は信用していない顔をしていた。
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