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第4章
邂逅
しおりを挟む右眼の黒い眼帯ーーー。
見覚えのある風貌ーーー。
佐助は言葉を失った。
「伊達…政宗…?」
「…何か言ったか?」
「いえ…すみません、こちらです。」
佐助はバクバクと脈打つ鼓動を抑えて、一番奥のカウンター席へと案内する。
カウンターにいた常連客、特に女性客が一気に色めき立ったのがわかった。
まあ、当然だろうな。
ディオンと大差ないくらいの色気を放つ、エキゾチックな顔立ちは、一瞬ハーフかと見紛う程整っていた。
何より極め付けは、この右眼の眼帯だろう。
ミステリアスな雰囲気が、更に彼の色香を増長させているようだ。
『…あの頃と同じだな。』
右眼の眼帯、容姿、声ーーー。
佐助は随分昔に、彼と会った事がある。奥州の独眼竜と呼ばれていたあの頃に…。
『まさか、伊達もこの時代に転生していたとはな…。』
佐助は動揺を隠すように、温められたおしぼりを渡してオーダーを取る。
「ベリーニを頼む。」
「かしこまりました。」
カウンターに入り、カクテル作りに入ろうとした時に、ようやくディオンは受話器を置いた。
新規の客には、必ず入店時にディオン自らが挨拶を行うのが仕来りになっており、今回も例にもれず、ディオンはカウンターを出て彼の元へと赴いた。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私、このmemoireで店長をしております、月城ディオンと申します。」
そう言うと、ディオンは胸ポケットから名刺を取り出して、彼に慇懃に手渡す。
彼は慣れた手つきでそれを受け取ると、自分も名刺を取り出してディオンに差し出した。
「ご丁寧にどうも。俺は伊達理人。よろしくな、月城さん。」
「いえ、こちらこそ今後とも是非ご贔屓にしてくださいね。ディオンと呼んで下さって構いませんから。」
「わかった。じゃあ俺の事も理人で構わない。好きに呼んでくれ。」
そんな二人のやりとりを見ていた女性陣は、目の保養だと言って騒いでいる。
その時、急にディオンは伊達からもらった名刺を見つめて驚いた声を上げた。
「◯◯大学病院、外科医…?理人さん、貴方お医者さんだったんですか!すごいですね!見た所まだお若いのに。」
「いや、まだまだ医者になりたての身だからな。研修としてここ何年かはフランスへと渡っていたんだ。」
「そうなんですか!奇遇ですね!私も数年前まではフランスに住んでいたんですよ。」
お思わぬ共通点を見つけたディオンは、嬉々として満面の笑みを浮かべた。
佐助は横目で伊達を一瞥し、ピューレした白桃をグラスに入れ、軽くかき混ぜる。
『伊達姓…。また随分な偶然だな。やはりあいつは独眼竜の生まれ変わりか。』
作り終えたカクテルを、付け合わせのフルーツと共に伊達の元へと運ぶ。
「お待たせいたしました。ベリーニでございます。」
「ああ、ありがとな佐助…君。」
「え…どうして俺の名を…?」
胸につけているネームプレートは、苗字しか表記されていない。
『まさか、独眼竜も記憶が…?』
佐助は困惑した表情を浮かべると、伊達は薄い形の良い唇で弧を描いて綺麗に笑った。
「すまない。いきなりファーストネームで呼ぶのは失礼だったな。君の事はここを紹介してくれた奴から聞いて知っているんだ。」
「そう、ですか…」
伊達は大人びた表情を浮かべ、グラスを傾ける。
『伊達理人か。彼は伊達政宗の生まれ変わりには違いないだろうが、前世の記憶はないのか…?』
しかし、伊達が自分の名を呼んだ時、微かに違和感を感じた。
『…気になるな』
だが、いきなり今日会ったばかりの奴に前世の記憶があるのかどうか問うほど、佐助は馬鹿ではない。
さてどうしたものかと考えあぐねていると、伊達に肩を叩かれ、意識を取り戻す。
「佐助君。悪いがトイレはどこだ?」
「あ、それでしたら出入口のすぐ隣に…」
「案内、してくれるか。」
「?…はい…。」
それほど広くはない店内でトイレを探すのは容易い筈なのにと佐助は疑問を抱く。しかし、客の頼みを断る訳にもいかず、佐助は伊達を案内することにした。
「此方の奥がお手洗いです。何かありましたらお申し付けください。」
そう言って、踵を返した時だった。
「お前、真田のとこで仕えていた佐助だろう。」
「…っ!?」
唐突に彼が言い放った言葉が理解できず、佐助は一瞬思考が停止した。
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