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第8章
嘲笑 (R-18)
しおりを挟む日曜日の午後六時過ぎーーー。
片付け損ねた雑務を終えた真田は、漸く学校から帰路についた。
『もう六時か。』
明日からまた新しい一週間が始まるかと思うと、些か気分が沈む。
「あ、そうだ。遊馬に電話しないと…。」
真田はネクタイを緩めながら、仕事用の鞄を漁って携帯を取り出す。
佐助の携帯番号の欄をタップしようとして、真田はふと手が止まった。
嫌でも思い出してしまうのだ。
理人に言われたあの一言がーーー。
〈悠希、悪いが佐助は俺のものだ。もう誰にも渡す気はない。〉
強い独占欲にまみれた言葉が何を意味するか。
真田は分かろうとしなかった。
否、分かりたくなかったというのが本音か。
指先が震え、心臓が煩いくらい脈打つ。
真田は深呼吸してボタンを押した。
しかしコール音の後には、留守番電話の機械音が虚しく響くだけだった。
通話終了の液晶画面をぼんやりと見つめながら、真田は暫くその場に立ち尽くす。
『出ないな…。明日出勤する前にもう一度掛けてみるか。』
不安と同時に、どこか安堵する自分がいた事に真田は嫌悪感を抱く。携帯をソファに放り投げ、深いため息を吐いた。
「風呂入ろ…。」
誰に言うともなく呟き、真田は覚束ない足取りで風呂場へ向かう。
乱雑にスーツを脱いで洗濯籠へと放り投げ、蛇口のコックを捻れば、熱いお湯が全身を伝い、身体の芯を緩やかに温めていく。
心地良い温度にほっと息を吐き、真田は静かに目を閉じた。
だが目を閉じれば、そこにはいつも佐助の姿が浮かぶ。
初めて逢った時の事、
初めて触れた時の事、
初めて自分をーーー、
抱いた時の事を。
「…っ!」
無意識に思い出してしまった。
あられもない姿で佐助に縋り付き、耳を塞ぎたくなるような嬌声を上げてしまった己の痴態を。
「…っ」
ズグリと下半身に感じた熱は、明らかにシャワーによるものじゃない。真田が薄く目を開ければ、自分のモノは僅かに硬度を増していた。
『くそ…!またかよ…っ』
治まれ!治まれ!治まれ!
ぎゅっと目を瞑り、真田はひたすらこの異常な感覚が消え去るように念じる。
しかし、そんな事をしても無駄だというのは自分が一番よくわかっていた。
段々と息遣いが荒くなり、腰の辺りがどうしようもなく疼く。
「は…ぁう…っ」
そうこうしているうちに、真田のモノは完全に屹立し、痛いくらいに張り詰めていた。
「最低だ…俺…。」
心では抗っても、身体が欲する欲望には抗えず、真田はゆっくりと下半身に手を伸ばす。
「んんっ!」
勃ち上がった先端に軽く触れただけで、背筋に痺れるような快感が駆け抜ける。裏筋を辿り、ゆるゆると手を上下に動かせば、ぬるりとした感触が伝わった。
「ふ…ぅ、ん…っ」
風呂場には、流れ続けるシャワーの水音と鼻に抜ける喘ぎ声だけが反響し、余計に真田の情欲を掻き立てる。
だが熟知している自身の弱い部分を攻め立てても、悪戯に快楽が蓄積されていくだけで、決定的な刺激にはならなかった。
「い、やだ…っ!なんで…」
焦燥感は募るばかりで、真田は遮二無二に手を動かす。
その時、不意に佐助の発情した獣のような目つきで睨む獰猛な瞳を思い出し、ぞくぞくと背筋が粟立った。
「ひ…ぅっ!」
より一層扱く手を早め、もう片方の手で胸の突起を弾いたり押し潰したりする。だが溜まった熱は全身に徘徊するばかりで、中々発散することができない。
「嘘だ、ろ…っ」
こんな事は今迄になかったのに。
だけど真田は、自分の身体がどこに刺激を求めているのかはわかっていた。
「はっ…、は…」
シャワーの熱気と快楽で歪む意識をなんとか保ちつつ、真田はボディーソープを手に取る。掌に二、三回プッシュして中身を押し出し、ぬちゃぬちゃと指先に液体をたっぷりと絡めた。
ーーーもう何も考えられない。
真田はただ身体に燻る熱を吐き出したい一心で、躊躇うことなく二本の指を自らの後孔に突き立てた。
「ぐ…ぁ…っ!」
ピリッと一瞬痛みを感じたが、真田はそのまま指を更に奥へと埋め込んでいく。
ボディーソープのおかげで、指を出し入れしているうちに段々息苦しさはなくなり、次第に快感ばかりが脳を支配するようになっていった。
くちゅくちゅと淫靡な音が鼓膜に響き、それさえも自身の興奮材料となっていく。
「ぁ…っ、んんっ!」
内壁を擦り、指を中で折り曲げると、びくりと下腹が引き攣るような感覚に襲われ、真田は怖くなってずるりと指を引き抜いた。
だが後孔はまるでもっとと強請るように、はくはくと収縮を繰り返している。
ーーー自分の浅ましさに吐き気がした。
「なに…してんだろ、俺…。」
真田は嘲笑するような乾いた声を零し、ガンっと思い切り浴槽を殴りつけた。
鈍い痛みが拳に広がり薄っすらと血が滲むも、シャワーから止め処なく流れる水が、何事もなかったかのようにそれを洗い流していく。
だがそんな事は所詮気休め程度にしかならず、溜め込んだ熱は全く治まる気配がなかった。
「…っ!」
真田はもう自棄になって、指をもう一本増やして後孔に突き入れる。
多少の圧迫感はあったものの、待ち侘びた刺激を逃すまいと内壁は卑しく指に絡み付いてきた。
最早自分の意思なのかすら判別できない。
だが手先はまるで別の生き物のように、自分のモノや後孔を執拗に嬲っていく。
「は…ぁ、あ…っ!」
そして深く中に入れた指を腹側に折り曲げた刹那、全身を焼き尽くすような衝撃が駆け抜け、真田はひゅっと息を飲む。
「ーーーっ!!」
一際大きな快感の波に呑まれ、真田はビクビクと下腹を痙攣させながら白濁した液を大量に吐き出した。
「はっ…ぁ…っ」
浅い呼吸を繰り返し、だらりと肢体を風呂場の床に投げ出す。
腹に飛び散った液はすぐにシャワーの水と共に流れていき、コポコポと音を立てて排水口に吸い込まれていった。
真田はぐったりと浴槽に凭れ掛かり、膝を抱えて蹲る。
最悪だ。
『遊馬とのセックスを思い出して自慰行為に耽るなんて、悪い冗談にもならない…っ』
真田は激しい自己嫌悪に駆られ、また拳を浴槽に叩きつける。
「い…っ!」
先刻より強く殴った所為で拳に鋭い痛みが走り、真田は思わず呻く。
手を見やると、手の甲から伝った血が掌まで広がり、全体を鮮やかな赫に染め上げていた。
「!!」
その瞬間、また頭の中に何かのビジョンが波濤となって押し寄せ、真田を暗い意識の底に引き摺り込んでいった。
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