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第14章
目醒め
しおりを挟む「さす、け……?」
少し掠れた声音が辺りに響く。薄らと上気した真田の瞳がぼんやりと佐助の姿を映した。
「真田!?」
まだ意識が混濁しているのか、真田は輪郭を確かめるようにゆっくりと指先で佐助の腕や肩に触れていく。
「お、お前…、身体は大丈夫か?!何か北条にされたんじゃ……」
「…………ぁ…」
真田は口を開くが、まだ上手く言葉を紡げない。
北条に乱されたであろう真田の衣服を、佐助は素早く整えていく。恐らく未遂だろうが、少し甘ったるいような残り香が真田の口元から漂っているのが気になった。
『まさか一服盛られたんじゃないだろうな…』
北条の目的は分からないが、どういう訳か真田と佐助にかなり執着しているようだ。得体の知れない存在に佐助は背筋がぞくりとする。
佐助は真田の身体を抱きかかえ、ベッドに横たわらせた。
「悪いな、真田。少し口開けろ」
「ん…ぅっ!」
佐助は真田の口にぐっと親指を押し込み、そこから自身の唇を押し当て、舌を挿し入れた。
真田はびくりと身体を震わせたが、まだ状況が良く把握できずに佐助のシャツをただ力なく握り締める。
蕩けるような熱い口腔内をぐるりと舌で舐る。
『仄かに薬剤の味がするが…苦味も強くないし舌先の痺れも感じない。毒物の線は薄いか…。と、なると真田の症状から自律神経系に作用するものか、或いは……』
佐助は唇を離すと逡巡する。
薬学の知識や味覚の鋭敏さもまた、忍時代に培ったものの一つであった。佐助はある程度の毒は、耐性が付くまで無理矢理飲まされている。
「…まさか催淫剤の類いか?」
そういった代物は眉唾物も多いが、佐助が過去に生きていた時代から確かに存在はしていた。
任務で何度か使用した事はあるが、効果はその日の体調や個人差に左右される事が大きい。
真田はきっと元々効きやすい体質だったのだろう。
どういう経緯で薬を飲まされたのかは分からないが、こういう物は大抵欲を発散させた方が治りは早い。
『大方そういった事を北条が吹き込んで、何し崩し的に事に及んだんだろうな』
佐助は部屋に備え付けられていた浄水器から水を汲み、ゆっくりと真田の口元に含ませる。
こくりと喉を鳴らし、真田はほうっと息を吐く。脈拍や体熱感もようやく落ち着いてきたようだ。汗で額に張り付いた真田の柔らかな栗色の髪の毛をそっと撫ぜる。
ふと、先刻の真田の一言を思い出す。
『俺の名を真田が呼んだ時……どこか懐かしい感じがした』
まるで、幸村の時のような声音でーーー。
「……なんて、都合の良い解釈か…」
自嘲気味に笑い、佐助はベッドから腰を上げた。
『もう真田は大丈夫だ。少し休めば普通に動けるだろう。それよりも北条の野郎をどうすべきか…』
完全に北条の正体を掴めていない以上、闇雲に動くのは危険だろう。ましてやこちらの正体がバレている以上、
分が悪い。
『まずは情報収集から…。何百年経とうと、物事の順序というのは、いつだって踏襲されて然るべきだな』
また暫く学校を休むかもしれないが、まだ体調が安定してない事を伝えれば怪しまれることもないだろう。
踵を返そうとした時、
「佐助………お前、なのか……?」
「っ!」
佐助の制服の裾を握り、先程よりもはっきりした声で真田は尋ねた。
「あ、ああ……。俺は偶々保健室に用があって…」
佐助はなるべく平静を装いながら、どう言い訳しようか黙考する。
『どうする……。あまり今回の件に触れるのは、真田にとって酷じゃないか?俺が保健室に突入した時には、意識はなかった筈だ。多少事実を歪曲して伝えても問題ないとは思うが…』
北条との接点が多いのは、佐助よりも同じ職員の立場である真田の方だ。事を荒立てれば、デメリットの方が大きい。
「俺が来た時には校医は居なかった。誰かベッドに寝ているのが見えたから、少し覗いただけだ。邪魔したな」
努めて冷めた声でそう言うと、佐助はその場を立ち去ろうとする。しかし、真田は佐助の裾を離そうとしない。
「?…おい、真田。いい加減手をはな…」
「嫌だっ!離せば、お前はまた俺の元から消え去るだろう?徳川の軍勢に独りで飛び込んだ、あの時のようにっ!!」
「………え………?」
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