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第11章 -過去罪業篇-
花火
しおりを挟む「遅い。何をやっていた」
「悪かった。中々幸村の側から離れられなくてな」
町外れの宿屋には、武装して殺気立った男達数人が八雲と共に佐助の帰りを待っていた。
「おい、随分と人数が少ないようだが大丈夫か?」
いくら幸村1人とは言え、万が一取り逃がしでもしたら終わりだ。
僅かな不安材料も取り除いておきたい佐助が怪訝な表情をするも、八雲は鼻で笑う。
「少数精鋭で動いた方がやりやすい。あまり騒ぎを大きくすれば気付かれてしまうからな」
「…まあいい。いざとなれば、俺が殺す」
こともなげに佐助がそう言うと、八雲は煙管を吹かしながらくつくつと笑った。
「本当に、お前に殺せるのか?」
「…なに?」
どういう意味だと佐助が睨み付けると、八雲は瞬時に懐から短銃を取り出し、佐助の額に照準を向けた。
「なんの真似だ」
佐助は慌てるそぶりを見せず、ドスの効いた声で八雲に詰問する。
『見たこともねえ火縄銃だな…。いや、そもそも構造からして別物か?』
この時代において、銃というのはまだそれほど浸透していない。というのも、装填に時間がかかる上、一発しか弾を撃てないからだ。
先端が末広がりになっている独特な造りをした短い銃身を見て、恐らく南蛮由来の物だろうと佐助は思った。
『最新の南蛮武器を密輸してるって噂も本当だったってことか。得体の知れねえ武器だが、銃先が開いてるってことは、恐らく制御するのは難しいはず…』
自分ならこの距離でも、指先の動きを見て躱せるだろう。
佐助はそう判断して瞬き一つせずに、ジッと八雲の動向を探る。
じりじりと肌を焼くような緊迫感が辺りに立ち込めた時、八雲は不意に緊張の糸を解いて銃身を下げた。
「…冗談だ。お前の覚悟が知りたかった。もし途中で主人を殺すのを躊躇われては困るからな」
「馬鹿言うな。あんな野郎に未練も何もあるかよ」
「…そうか。だといいがな」
信用はしてるが信頼はしていないーーー。
八雲の怜悧な目は安易にそう言っていた。
『俺がやらなきゃいけないことはただ一つ。一族の血を絶やさないことだ。八雲がどう思おうが、俺にとって幸村はその糧の一つに過ぎない』
人道などとっくに外れている。
もう後戻りは出来ない程、自分は多くの血で穢れ、憎悪に塗れてしまったのだ。
刹那、ヒュルルルと乾いた音を立てながら夜空に流れた小さな灯りが弾けて散らばり、パラパラと星屑のように辺りに降り注いだ。
「嗚呼…、始まったな」
不意に佐助は笑った。
八雲でさえもゾッとするような、感情のない笑みを顔に貼り付けながら。
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