忍の恋は死んでから。

朝凪

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第11章 -過去罪業篇-

火花

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雲一つない澄んだ夜空には、極彩色の火花が一瞬の煌めきを散らしながら消えて行く。

人の波は花火が打ち上がる毎に増えているようだった。

『……いた』

しかし、そんな人混みなど佐助にとっては意味を成さない壁に過ぎず、迷う事なく幸村の気配を掴む。

幸村は何故か、屋台裏にある人気のない雑木林に流れる小川に独り佇んでいた。

『好都合だな』

佐助は常人には捉えられない程の速度で木々の上を駆け抜け、するりと幸村の背後に降り立った。

「佐助か」

振り返る事なく己の気配を言い当てた幸村に、佐助は少し驚いた。しかし、花火の上がる音の間隔から着実に時限が近付いている。

『もう、迷ってる暇はねえ』


遂に謀略は動き出した。


「幸村、お前の耳に入れておきたい事があるんだけどよ…」

「なんだ?」

佐助は怪しまれぬよう、いつもの口調で言葉を紡ぐ。

「さっき、お前に花火が綺麗に見える穴場を教えるって言っていたガキどもがいただろ?」

「?…ああ、正吉といつきの事か」

「あの二人がさっき古寺のある境内に行くのが見えたんだが、そのすぐ後にガラの悪そうな連中も数人境内に入ってったんだよ」

「なに?誠か」

子供たちの所在は、佐助が事前に把握していた。

これから幸村を誘き出す道順には、花火が止むまで決して鉢合わせる事のない場所にいる。

あとは幸村がこの話に乗るだけだ。

「佐助、早く案内しろ!」

『…かかった!』

佐助は無意識にペロリと口端を舐めた。

「俺について来い。この人混みじゃあ辿り着くのに一苦労だろ。この雑木林を抜けるぞ」

「わかった」

本当は人目につくのを避けたいだけだが、口八丁で佐助は幸村を人気のない道を選びながら誘導する。

走る事数分。

欠けた石階段を駆け上り、佐助は古い棟門をくぐってグルリと辺りを見渡した。

八雲たちの気配は、古寺や井戸に集中している。

「幸村、俺は寺の裏の方を見てくるわ」

「じゃあ俺は寺の中を!」

あたかも自ら罠に嵌りに行くように幸村を仕向け、佐助は古寺の裏に回り込んで屋根に飛び移る。微かに早まる鼓動を鎮めるべく、大きく息を吸い込んだ。

『役者は揃った。あとは俺の望んだ結末があればいい』

見上げた眼界に映るのは、月が放つ光と同化する火花のみ。

「火薬が勿体ねえなぁ…」

佐助はそう呟いて、ふと目を閉じた。

真っ黒になった視界を補うのは、気配と複数の声。

『最期くらい、ちゃんと聞き届けてやる。あんたの死に様って奴をな』
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