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【結】 俺たちの答え

ー side 蘭真 ー 1

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  十一月。風が冷たくなり始めたこの季節。嵐はコンピュータの専門学校へ行くことを決めた。ご両親は俺のおかげで嵐が真面目になったと頭を下げて寄越した。

「もとより大学に行ける頭はないんだ。それでもこうやって目的を持って進路を決めたことを親として嬉しく思う」

 親父さんは俺を家に招き、酒を飲み交わしながらそう言った。

「いやいや。嵐は最初から大真面目に将来のこと考えてますよ。俺は全然関係ないですから」

 注がれる酒を頂きながら謙遜して首を振ると、おばさんが酒のつまみを出しながら言った。

「いいえ。嵐が真面目になったのは本当に蘭真くんのおかげなの。嵐ったら本当に蘭真くんっ子だから、隙さえあれば髭を生やそうなんてするんですよ?」
「あはは! やっぱり校則違反なんでしょ?」
「そうよ。先生に何度も注意されてるんですから」

 まさかご両親は俺と嵐が付き合っているなんて知りもしない。これだけの信頼を頂いて、俺達が恋人同士だなんて……死んでも言えない。

 帰省してから三ヶ月。
 お店のオープン準備は着々と進んでいて、今月中には店が完成する。スタッフの募集、育成、商品の開発、養鶏場や農家との契約、備品の準備 。しなくちゃいけないことは山ほどある。オープン予定は十二月の中旬を予定していて、クリスマスに向けて最高の出だしを切りたいと思っている。

 すべて順調だった。

 寺島の事を忘れていられる時間も増えてきて、嵐の腕の中にいることを居心地よく思えるようにもなってきた。それでもまだまだ子供だから、頼りないことの方が多いけど。

「ちょっと。あんまり遅くまで付き合わせないでよ、父さん。あんたは明日休みだろうけど、兄ちゃんは仕事なんだからね」

 風呂から上がってきた嵐が頭を拭きながら言うと、おばさんに「父さんのこと"あんた"なんて言うんじゃないの!」と怒られて、思わず笑ってしまった。

「大丈夫だよ、嵐。仕事と言っても出勤時間なんて決まってないしな」

 店はまだ完成もしていない。
 嵐は困ったように眉を寄せ、「付き合うのもほどほどでいいよ。面倒になったらすぐ帰りなよ」と水を一杯飲んでから自室へと向かった。

 嵐はまだ高校生。親と一緒に住んでいて、専門学校にも実家から通う予定だ。
 一方俺も母親と二人で実家暮らし。店の近くに俺だけ引っ越してもいいのだが、正直店は家からさほど遠くない。そうなると家を出る理由を見つけるのも困難で、逆に家を出てしまえば妹から「何のために帰ってきたんだ、バカ兄貴」と罵られてしまいそうだから、どうしても実家を離れられないでいる。

 それはつまり、嵐と二人で過ごす時間は今の所……、限りなく少ないということだ。

 そういうわけで、予定より金をつぎ込み店に「俺の部屋」を作ることにした。二階建てが理想だったがさすがにそこまでの大枚は叩けず、スタッフルームの正反対の位置に俺のプライベートルームを設けた。
 そうでもしないとこんな田舎、ラブホに到着するまで車で何十分かかるやら。しかも男同士で入れるラブホが近くにあるとも思えない。調べてないから知らないが、期待は薄そうだ。
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