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おまけ
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「寺島さんの彼女。兄ちゃんそっくりだったな」
「おい。彼女さんがショック受けるぞ。こんなおっさんに似てるなんて言われたら」
「顔じゃないよ! 雰囲気!」
「そうかぁ?」
俺にはさっぱり分からなかったが、嵐は「未練たらしいよ」なんてたらたら文句をたれていて、それが少し可笑しかった。けど寺島に対してそうやって悪態をつけるのは、そこにきっと信頼があるからだ。嵐は絶対に「ありえない」って言うんだろうけど、なんだかんだあの二人は仲良くやってると思う。
『あ、それからね、蘭ちゃん』
追加注文を受け終え電話を切ろうとした時、寺島が俺を引き止めた。
『俺、結婚することになった』
いつか……そんな報告を受けるかもしれないと思っていた。
正直ちょっとショックだった。それは寺島が誰かのものになるというショックではなく、なんか……置いてけぼりを食らったような……そんなショック。
結婚は俺にはどうしても叶わないことだから。
『子供出来ちゃって。はは……』
「……不本意みたいな言い方するなよ」
『いや! そんなつもりじゃ! 普通に嬉しいよ。きっかけはこうなっちゃったけど、いずれは結婚しようって決めてたから』
そうか……。
「おめでとう。いつ産まれるんだ? 式は挙げるのか?」
寺島は電話先で幸せそうな声を出す。ぼんやりと挙式の日程をメモし、俺は放心したまま電話を切った。
……結婚────。
俺、三十六歳。嵐、二十三歳の夏。
嘘をつき店を出た嵐の姿を思い出し、俺はただ……しゅんと俯くしかできなかった。
「おい。彼女さんがショック受けるぞ。こんなおっさんに似てるなんて言われたら」
「顔じゃないよ! 雰囲気!」
「そうかぁ?」
俺にはさっぱり分からなかったが、嵐は「未練たらしいよ」なんてたらたら文句をたれていて、それが少し可笑しかった。けど寺島に対してそうやって悪態をつけるのは、そこにきっと信頼があるからだ。嵐は絶対に「ありえない」って言うんだろうけど、なんだかんだあの二人は仲良くやってると思う。
『あ、それからね、蘭ちゃん』
追加注文を受け終え電話を切ろうとした時、寺島が俺を引き止めた。
『俺、結婚することになった』
いつか……そんな報告を受けるかもしれないと思っていた。
正直ちょっとショックだった。それは寺島が誰かのものになるというショックではなく、なんか……置いてけぼりを食らったような……そんなショック。
結婚は俺にはどうしても叶わないことだから。
『子供出来ちゃって。はは……』
「……不本意みたいな言い方するなよ」
『いや! そんなつもりじゃ! 普通に嬉しいよ。きっかけはこうなっちゃったけど、いずれは結婚しようって決めてたから』
そうか……。
「おめでとう。いつ産まれるんだ? 式は挙げるのか?」
寺島は電話先で幸せそうな声を出す。ぼんやりと挙式の日程をメモし、俺は放心したまま電話を切った。
……結婚────。
俺、三十六歳。嵐、二十三歳の夏。
嘘をつき店を出た嵐の姿を思い出し、俺はただ……しゅんと俯くしかできなかった。
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