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中休み:母のお節介

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 シャワーを終えて出てくると、柄沢さんは結局眠っていた。

「寝てんじゃん」

 ベッドにも上がらず、地べたで寝ている。つけっぱなしのテレビを一旦消し、髪をタオルで拭きながらDVDの並んでいる本棚をもう一度物色する。見たい映画を何本か選りすぐり、小さなダイニングテーブルにそれを置いた。
 だが、机の上に置かれていた数枚のDMが気になり、その中の一枚を手に取った。

「柄沢……結翔」

 ゆいと? ゆうと? それとも別の読み方だろうか。思っているより、今っぽい名前であることは間違いない。

「ゆい……と。へぇ……。意外かも」

 かといって別に彼の名前が「ごんざぶろう」だとか「しちえもん」だとか思っていたわけではない。ただ、もっと、印象にすら残らない普通の名前なんだろうと思っていたから、少し驚いた。しっかり凝った漢字だし、今っぽい響きだ。

「結翔。ふ~ん。結翔さんって言うのか。柄沢……結翔、ね」
「なんだよ。何がダメなんだよ」

 ベッドルームから不機嫌な声がした。
 あれ、起きてたのか。

「ゆいと、で読み方合ってます?」
「合ってる。柄沢結翔。25歳。独身。趣味はツーリングと映画。特技は機械いじり」
「車じゃなくて?」
「車もいじる、バイクもいじる。機械もいじる」
「へぇ」

 寝転がっていた体を起こし、柄沢さんは煙草を取り出して咥えた。

「好きな食べ物は?」

 続きを聞きたくて尋ねると、「ん~」と迷って「うなぎかな」と返答した。

「じゃあ、嫌いな食べ物は」
「人参」
「あ、僕と一緒」

 言うと柄沢さんは楽しそうに笑って、ちょいちょいっと僕を手招きした。持っていたDMをテーブルに戻して柄沢さんの前まで来ると、「座れ」って言われて腰を下ろした。そしたら「後ろ向け」って言われて、今度は何されるんだろうって思ったら、僕の頭のタオルをつかんで、ガシガシとタオルドライを始めてくれた。

 うわぁ。そんなことしてくれるの?

 驚いていると、どこからかドライヤーを取り出してきて、髪を乾かし始めてくれた。ラッキー。めっちゃ楽じゃん。

 柄沢さんにされるがままじっとしていると、「弟出来たみてぇ」とくすぐったそうに笑った。

「兄弟はいないんですか?」

 聞くと、「いや、弟がいる」と返答された。

「すでにいるんかい」

 ツッコむとまた楽しそうに笑って、「もうアイツでかいもん」と言った。髪を乾かし終えると、柄沢さんは僕の背中にのしかかるようにして肩へ顎を載せた。そして「お風呂面倒くさい」とぼやいた。

「人の髪乾かしてる方がよほど面倒くさいでしょう?」
「えぇ? そうでもないけどな」
「じゃあ、映画見ますか?」

 提案すると、柄沢さんは「ん」と返事し、眠そうにしている彼の代わりに今度は僕がDVDをセットしに行った。
 再び隣に座る。だが、柄沢さんは「んぅ」と不機嫌な声を出して首を振った。
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