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中休み:母のお節介

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 7時。柄沢さんの目覚ましがけたたましく鳴り響き、びっくりして飛び起きた。目覚め一発、「どこだここ!?」と焦ったのは言うまでもない。
 だけど、「おはよ」と寝起き声の柄沢さんが同じベッドから体を起こすと、状況を思い出した。

「あ……おはようございます」
「うん、おはよう」

 のそっと動き出す彼より先にベッドを下りると、「あぁ。新品の歯ブラシねぇわ」と言いながら、「コンビニもちょっと遠いしなぁ」なんてひとり言のように喋る。

「あ、いや。いいですよ。突然泊まらせてもらったんで、気にしないでください」

 そう言った自分の目に、ティッシュの山が入っているゴミ箱が目に入り、バッとそれから目を逸らした。
 昨日のことは、極力思い出さないようにしよう。もう少しでイけそうだったのに、寸止めされた恨みだって、……忘れよう! あと三回くらい動かしてくれたら、絶対に出たのに……!

 キッチンで大あくびをしながら、柄沢さんはパンを焼き、フライパンに卵を二つ割り入れた。

「ソーセージ食べる人~」

 ジューっというたまごの焼ける音の合間にそう聞かれ、「は~い」と返事すると、「りょ~」とだるい返事が返ってくる。
 ……例えば、ほんとに自分に兄がいれば、こんな感じなのかな、と考えた。足で足をかきながら、寝ぐせの付いた頭であくびをしながら料理を作る。キッチンの型ガラスからは朝日が差し込み、料理をする柄沢さんを優しい光で包んでいた。

 火を止め、お皿を取り出す柄沢さんを目で追っていたけど、僕もお手伝いした方がいいかなと思ってキッチンへ入った。

「何かすることありますか?」

 聞くと、「飲み物準備して」と言われた。

「冷蔵庫開けますよ?」
「うん。好きなの飲め。俺はアイスコーヒーね」
「は~い」

 飲み物を取り出し、昨日使っていたコップをリビングのテーブルから取ってくると、それを軽く洗って飲み物を注いだ。出せばいいのに、と食器棚を指されたけど、洗い物増えるじゃんと言うと、お前はおかんかとツッコまれた。自分は僕の兄貴を気取っているくせに。

 焼いただけの目玉焼きとソーセージ。カリッと焼かれた食パンにバターを塗って、僕らは小さなダイニングテーブルで一緒に朝食を摂った。柄沢さんは届いているDMや請求書に目を通しながら、僕より先にご飯を食べ終えると、出勤準備を始めた。
 僕は柄沢さんから借りていたダボダボのTシャツとジャージを脱いで制服に着替え直すと、何故かふふふっと意味深に笑われた。

「なんですか?」

 見上げて聞いたが、「いや、別に」とはぐらかされる。

「なんですか!? 気になるじゃないですか!」
「いや、なんでもないよ。脱いじゃったな、と思って」

 はい?

 意味が分からなくて眉間に皺を寄せると、柄沢さんはユニフォームのツナギの上半身を腰に巻き付けながら言った。

「彼Tみたいで可愛かったんだけど」
「はぁぁ!?」
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