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泥沼作戦会議
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静まり返る会議室。
誰がこの静寂を破るのか、重い空気がどんよりと横たわり、淀み、沈殿して行く。その中で雪村を除く三人は今一度彼の言葉を自分なりに噛み砕いていた。
何故自分たちが『Monday Monster』なのか。
この疑問は三人にとって、考えてもいないことだった。
自分たちで決めたグループ名ではない。その名前の真意もはっきりと聞いたわけではない。ただ、薄らぼんやりと思っていたのは、つまり、Monster = 雪村涼 ということ。雪村を中心としたグループだという考えだった。
だが、それは単なる甘えだろう。
雪村という絶対的な存在を棚に上げているだけに過ぎない。
違うのだ。Monster = 雪村涼 というその方程式はまったく違う。そこにたどり着くには、それぞれが自分に自信をもつ必要があり、四人がグループであるという自覚をしっかりと持たなければいけなかった。
そしてどれほど続いたか分からない沈黙を、一ノ瀬が打ち破った。
「僕は……志藤くんの言うとおり、この四人にそれらしい共通点があるとは思えない。けど、ユキくんが言うように、Monday Monsterという名前に意味を見出すことが出来るなら、それが僕らの共通点になるのかもしれないと思う」
「けど、実際のモンスターは雪村さん一人だ」
間髪入れずにズバっと言い切った志藤に、また周りはヒヤッとしたが、志藤は自らきっちり尻拭いをした。
「嫌味で言ってるわけじゃない。仕事量、認知度、実力、どのすべてをとってもモンスターと呼べるのは雪村さんだけだ」
けどそれは吐き捨てるような言葉だった。
その態度に雪村がまたキレるんじゃないかと周りが肝を冷やしまくったが、雪村は黙ったまま志藤を見ていた。
それもまた恐ろしい。溜めて溜めてまた爆発するという恐れが多いにあるからだ。だから、これ以上志藤が下手なことを言う前にと、太一がすぐに口を開いた。
「そんなことないよ! 歩くんだってモンスターだ! 我らが月曜トップナインなんだから!」
だけど志藤からは実に冷ややかな眼差しが返され、太一はドキっとした。
嘘をついたつもりもないし、よいしょしたつもりもない。だが志藤の瞳は「うるせぇ、黙れ」と言っているようで、太一はその冷え切った瞳に腹の中が捩れるような感覚を味わった。
怯んだ太一に、志藤は掠れるほど小さな声で呟く。
「どうせ俺は苦労なしアイドルだよ」
小さな小さな声だった。
しかし静まり返っている会議室では、そんな小声でも充分に行き届いてしまう。淀んでいたはずの重い空気が、今度は一気に氷点下へと下がった。
ポーカーフェイスを貫く雪村以外は、「あちゃ~」と視線を泳がせ、気まずさから全員俯いてしまう。
“苦労なしアイドル”
散々言われ続けてきた不名誉な異名。本人だってそう言われていることに気付いていた。
誰がこの静寂を破るのか、重い空気がどんよりと横たわり、淀み、沈殿して行く。その中で雪村を除く三人は今一度彼の言葉を自分なりに噛み砕いていた。
何故自分たちが『Monday Monster』なのか。
この疑問は三人にとって、考えてもいないことだった。
自分たちで決めたグループ名ではない。その名前の真意もはっきりと聞いたわけではない。ただ、薄らぼんやりと思っていたのは、つまり、Monster = 雪村涼 ということ。雪村を中心としたグループだという考えだった。
だが、それは単なる甘えだろう。
雪村という絶対的な存在を棚に上げているだけに過ぎない。
違うのだ。Monster = 雪村涼 というその方程式はまったく違う。そこにたどり着くには、それぞれが自分に自信をもつ必要があり、四人がグループであるという自覚をしっかりと持たなければいけなかった。
そしてどれほど続いたか分からない沈黙を、一ノ瀬が打ち破った。
「僕は……志藤くんの言うとおり、この四人にそれらしい共通点があるとは思えない。けど、ユキくんが言うように、Monday Monsterという名前に意味を見出すことが出来るなら、それが僕らの共通点になるのかもしれないと思う」
「けど、実際のモンスターは雪村さん一人だ」
間髪入れずにズバっと言い切った志藤に、また周りはヒヤッとしたが、志藤は自らきっちり尻拭いをした。
「嫌味で言ってるわけじゃない。仕事量、認知度、実力、どのすべてをとってもモンスターと呼べるのは雪村さんだけだ」
けどそれは吐き捨てるような言葉だった。
その態度に雪村がまたキレるんじゃないかと周りが肝を冷やしまくったが、雪村は黙ったまま志藤を見ていた。
それもまた恐ろしい。溜めて溜めてまた爆発するという恐れが多いにあるからだ。だから、これ以上志藤が下手なことを言う前にと、太一がすぐに口を開いた。
「そんなことないよ! 歩くんだってモンスターだ! 我らが月曜トップナインなんだから!」
だけど志藤からは実に冷ややかな眼差しが返され、太一はドキっとした。
嘘をついたつもりもないし、よいしょしたつもりもない。だが志藤の瞳は「うるせぇ、黙れ」と言っているようで、太一はその冷え切った瞳に腹の中が捩れるような感覚を味わった。
怯んだ太一に、志藤は掠れるほど小さな声で呟く。
「どうせ俺は苦労なしアイドルだよ」
小さな小さな声だった。
しかし静まり返っている会議室では、そんな小声でも充分に行き届いてしまう。淀んでいたはずの重い空気が、今度は一気に氷点下へと下がった。
ポーカーフェイスを貫く雪村以外は、「あちゃ~」と視線を泳がせ、気まずさから全員俯いてしまう。
“苦労なしアイドル”
散々言われ続けてきた不名誉な異名。本人だってそう言われていることに気付いていた。
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