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予選突破に巡る想い

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 同い年の男子。佐久間は友達も多く、いつも元気で、一人でいるところなんて見たことがない。口を開けば冗談ばかりだが、目立つ集団の中心にいつも佐久間はいた。例えば彼に涙を見せたとして、冷やかされたり笑われたりすることはまずない。分かってはいるが、雪村にはどうしても佐久間に心を開ききる勇気がなかった。

 信頼しているのは事実だし、相談事をすることだってある。真面目な話も出来るし、二人でいても会話に困ることはない。帰り道は大抵、西川を含む三人で帰ることが多かったし、この三人はエッグ内でも有名な仲良し組だ。

 ただ、雪村は自分でも気付かない内に、佐久間をある種のライバルとして認識していたのかもしれない。それは人気や実力といった、アイドルとしてのライバル視ではない。

 きっと雪村は……ずっと佐久間が羨ましかったのだ。
 友達が多いことも、信頼されていることも、世渡りの上手なところも、何事も全て器用にこなすから。
 そして自分の信頼までをも知らぬ間に持って行かれていることも。
 けど、まだ幼い雪村はそれに気付かない。そして、佐久間も──。


 追いかけっこのように、佐久間は雪村へ執着する。彼の中心は雪村だけだった。俺に落ちればいいのに、といつもそう思っていた。

 それは恋や愛といった複雑な感情ではない。その他大勢の友人じゃなくて、一番近い親友としての場所を、佐久間はずっと手に入れたかったのだ。手に入れたくて、手に入れたくて、雪村が太一に油断した表情を見せる度、黒い感情を抱いた。太一と楽しそうに笑い、懐くように微笑み、じゃれるようにスキンシップを取る度、腸が煮えくりかえった。

 沖さえ居なければ。何度そう思っただろうか。

 だが、そんな太一が日本から居なくなるかもしれない。
 だからその事実が……笑えるほど嬉しかったのだ。

 志藤と並んで歩いていく太一の後ろ姿を見つめ、佐久間は思う。



 サヨウナラ……と。




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