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告白
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思考回路は一瞬でショートして、大きくて温かい腕に抱かれながら、体は金縛りにあったように硬直してしまった。
何故……、それを。
結局昨日、相談できていないはずだ。何も太一は語らなかったはずなのに。
「それとも、うまく告白出来なくて落ち込んでるのかな? 大丈夫だよ、大丈夫。きっとうまくい……」
野瀬の言葉は最後まで聞けなかった。
野瀬のあまりの勘の良さに、太一が強引に体を引き離したからだ。
野瀬は空気を読むし、勘もいい。
そういう男だと思ってはいたが、まさかここまでとは予想もしていなかった。
真面目な顔をして、だけど少しだけ寂しそうな野瀬の瞳は、哀れむでも馬鹿にするでも軽蔑するわけでもなかった。
志藤を好きなことは完全にバレてしまっていて、あまつさえ告白したことでさえ見抜かれてしまっている。
「あ……、やっぱりまだ告白出来てない?」
「ちょっと……待って!」
告白なんて言葉を連発しないで欲しかった。あまりの衝撃的な展開に太一が置いてけぼりだ。だって自分が振られた原因になる男からこんなことを聞かれるなんて残酷すぎるし、そもそもなんで気持ちがバレていたのか。
慌てふためく太一に野瀬は困ったように微笑んだ。
「違った? 合ってるよね? 沖は、志藤が好きでしょ?」
(好きだよ、好きっ、好きだけど!)
赤面して唇を噛み締める太一の心の叫びは、野瀬に素直に届き、ふふっとたまらず笑いが零れた。
「なんとなく、気付いてたよ。俺、沖のファンだからさ。誰より沖のこと見てるから」
そう言ってするりと離れる野瀬の手。その長い指は硬く握り込まれ、野瀬の足元に戻る頃、固い拳に変わっていた。
だが太一はその拳の意味も読み解けず、動揺、焦り、困惑、そして羞恥に一気に襲われた。でも、それよりもまず初めに確認しておきたいこと。
「け、軽蔑……しないの?」
その言葉に野瀬は少し目を丸め、すぐに柔らかく微笑んだ。
「しないよ。志藤だって、しなかったろ?」
軽蔑するも何も……向こうからキスしてきたのだ。
同性を好きになるなんて、軽蔑されると思っていた。野瀬からはもちろん……志藤からも。
だけど、志藤からはキスをされ野瀬のことが好きだと言われてしまった。そして野瀬は野瀬であっさりと告白したの?なんて爆弾を放り込んでくる。
同性愛に対しての他人の理解度は、自分より遥かにいいのかもしれないと思うと、急激に体中の緊張が解ける気がして、太一は深く頷くと、もう泣きたくもないのに、涙が次々と溢れて零れ落ちた。
「……うんっ、そう。オレ、歩くん……が、好き……っ、なんだ」
太一の涙ながらの告白に、野瀬は唇を噛み締める。
なんとなく気付いていた。そしてそれは今朝確信に変わって、早くももう本人の口からそれを聞くことになってしまった。
何故……、それを。
結局昨日、相談できていないはずだ。何も太一は語らなかったはずなのに。
「それとも、うまく告白出来なくて落ち込んでるのかな? 大丈夫だよ、大丈夫。きっとうまくい……」
野瀬の言葉は最後まで聞けなかった。
野瀬のあまりの勘の良さに、太一が強引に体を引き離したからだ。
野瀬は空気を読むし、勘もいい。
そういう男だと思ってはいたが、まさかここまでとは予想もしていなかった。
真面目な顔をして、だけど少しだけ寂しそうな野瀬の瞳は、哀れむでも馬鹿にするでも軽蔑するわけでもなかった。
志藤を好きなことは完全にバレてしまっていて、あまつさえ告白したことでさえ見抜かれてしまっている。
「あ……、やっぱりまだ告白出来てない?」
「ちょっと……待って!」
告白なんて言葉を連発しないで欲しかった。あまりの衝撃的な展開に太一が置いてけぼりだ。だって自分が振られた原因になる男からこんなことを聞かれるなんて残酷すぎるし、そもそもなんで気持ちがバレていたのか。
慌てふためく太一に野瀬は困ったように微笑んだ。
「違った? 合ってるよね? 沖は、志藤が好きでしょ?」
(好きだよ、好きっ、好きだけど!)
赤面して唇を噛み締める太一の心の叫びは、野瀬に素直に届き、ふふっとたまらず笑いが零れた。
「なんとなく、気付いてたよ。俺、沖のファンだからさ。誰より沖のこと見てるから」
そう言ってするりと離れる野瀬の手。その長い指は硬く握り込まれ、野瀬の足元に戻る頃、固い拳に変わっていた。
だが太一はその拳の意味も読み解けず、動揺、焦り、困惑、そして羞恥に一気に襲われた。でも、それよりもまず初めに確認しておきたいこと。
「け、軽蔑……しないの?」
その言葉に野瀬は少し目を丸め、すぐに柔らかく微笑んだ。
「しないよ。志藤だって、しなかったろ?」
軽蔑するも何も……向こうからキスしてきたのだ。
同性を好きになるなんて、軽蔑されると思っていた。野瀬からはもちろん……志藤からも。
だけど、志藤からはキスをされ野瀬のことが好きだと言われてしまった。そして野瀬は野瀬であっさりと告白したの?なんて爆弾を放り込んでくる。
同性愛に対しての他人の理解度は、自分より遥かにいいのかもしれないと思うと、急激に体中の緊張が解ける気がして、太一は深く頷くと、もう泣きたくもないのに、涙が次々と溢れて零れ落ちた。
「……うんっ、そう。オレ、歩くん……が、好き……っ、なんだ」
太一の涙ながらの告白に、野瀬は唇を噛み締める。
なんとなく気付いていた。そしてそれは今朝確信に変わって、早くももう本人の口からそれを聞くことになってしまった。
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