19 / 29
第2章~怠惰な召喚術師と夢見る少女~
第19話:召喚術師は歌えない
しおりを挟むある日の放課後。
「カラオケ行かね?」
木霊に誘われて、たまにはいいかと軽い気持ちで行ったら、予定外のメンツが参加していて僕は確認を怠ったことを後悔した。
「点数勝ったら私と冒険に!」
「はいはい、点数負けた二人がドリンク取りね!」
合コンのような雰囲気に口元が引きつる。
カラオケにいるのは僕と木霊、そして予定外の女子が三人いた。
「へー! 木霊くん意外と渋い声しててウケる」
陽キャというよりは、陽気という言葉が似合う化合まみ、
「良き」
陰キャというよりは、ただ無口でマイペース、独特な雰囲気の化合こみ、
そして
「はーい、玉藻と空亡ドリンクよろしく!」
容姿端麗、勉学優秀、性格も明るくて、冒険者狂いで、音痴な少女――鳥羽玉藻。
「……ぅ」
ちらちらと送られる視線を僕は無視して、淡々とドリンクを注いでいく。
炭酸の泡が盛り上がり、沈んでを繰り返す。
「……今日は邪魔してごめんね?」
恐る恐るといった声色に、僕は足を揺らした。
「何が」
「いや、木霊くんと空亡くんっ二人の約束だったのに……許可もなくついてきて」
「どうせ木霊が安請け合いしたんだろ」
「うん、でも」
――なんだよ、まるで俺が意地悪してるみたいじゃんか
僕が気に障っていることは彼女の執拗な勧誘であって、彼女事態は嫌いでも好きでもない。 故にこの状況は不本意だった。
「別に謝る必要ないよ。 確かに嫌悪感丸出しだけど、それは鳥羽さんに対してじゃなくて『冒険者パーティーの勧誘』に対してであるからして」
「うん」
「だからそんなに怯えなくていい。 勧誘をやめてくれればこっちも普通に接せられるから。 分かった?」
「あ、はい」
鳥羽は面食らったようで何度も頷いた。
会話は弾まないものの、先ほどまでの気まずさはなくなったことに僕は小さく息を吐いて、最後に自分のコップに飲み物を注ぐ。
「え」
すると横から手が伸びてきて、
「えい」
空亡が注いでいた飲み物とは、別のボタンが押されドリンクが混ざった。
「おい、こら」
「へへ」
鳥羽はへらりと笑って、逃げるようにドリンクを半分お盆に乗せて部屋へと戻って行った。
「えぇ……どゆこと?」
悪戯されたことは分かるものの唐突過ぎる。
取り残された空亡はどう受け止めればいいのか分からず、しばしそこに立ち尽くしたのであった。
***
昼休み、木霊はおもむろに廊下の窓を開けた。
「おっけーもらえたよ」
「そっか、良かった……ありがとう」
外から鳥羽玉藻の嬉しそうな声が聞えてくる。
「もう諦めた方がいいんじゃないか?」
「約束したから」
「……その約束だって忘れてる。 いい加減前を向くべきだと思うけどね……ソラのためにも……玉藻ちゃんのためにも、ね」
木霊と鳥羽玉藻は同郷の幼馴染であり、空亡の欠けた記憶を知っている者たちである。
記憶を無理やり掘り起こそうとすれば、空亡を苦しめるだけだ。
鳥羽玉藻は異常なくらい空亡に執着してる。
彼女の勧誘は延々と続くだろう。 せっかく久しぶりに登校してきたというのに、このままじゃ本人が一切出てこなくなることもあり得る。
それは誰にとっても嬉しい結果ではないだろう。
「分かったよ……でもラインは弁えてくれよ」
「うん、分かってる。 私も彼を傷つけたいわけじゃないから……ただ――」
木霊は彼女の言葉を聞き終えることなく教室へ戻った。
(シェイプスターも嫌いじゃないけど、やっぱ俺の友達はお前なんだよソラ)
***
「で? 言い訳は?」
トイレに立った木霊を追いかけて、僕は横に並んだ。
「女の子と遊びたかったっす」
「それで僕をダシにして鳥羽さんを引っ張ってきたの? 事前に言ってよ」
「言ったら来ないじゃん?」
「確信犯かよ……はあ」
初めは心底帰りたかった。
しかし割とこの状況を自分が楽しんでいることに驚きている。
それに今日の出来事は胸を張って獅々田さんに報告できそうだ。
「ソラだって女子は嫌いじゃないだろ? 彼女欲しいよな?」
「まあ欲しいよ。 でも今はいいかな(ほぼ引きこもりだし)」
「思春期の男子がそんな弱気でどうするんだよ! 青春しようぜ、青春っ!」
「どっかの誰かさんと同じことを……」
獅々田さんといい、木霊といい、思考がアグレシッブでついていけなくなる時がある。 僕は僕で楽しいし、自分のペースでやっていくからそんなに世話を焼いてくれなくてもいいと、余計なお世話だと思ってしまう。
けれど同時に想ってくれることが嬉しくもある。
「鳥羽さんはやっぱ王道美少女って感じでいいよな。 でもでも化合姉妹と両手に華って言うのも捨てがたい……っ」
世話を焼いてくれていると思っていたが、それは僕の考えすぎだったのかもしれないとため息を吐くのだった。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。
Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜
夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。
絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。
一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。
無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる