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第2章~怠惰な召喚術師と夢見る少女~
第28話:勇者と武道大会
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「私は最強だ」
「はい、勇者様」
目の前で繰り広げられた戦闘を愉しそうに見つめる青年と無表情のメイド。
「じゃああの化け物はなんだ?」
「ククルカンと申すようです」
蛇の魔物はよくいるが、ワイバーンを丸呑みする蛇のモンスターなど二人は聞いたこともなかった。
「モンスターの名前何て聞いてない。 見たことも聞いたことも無い強いモンスターがいて、そしてそれを使役する人間はとんでもなく強いに違いない」
モンスターを召喚するスキルの存在は知られているが、本来召喚術とは召喚したモンスターと何かしらの取引を以って使役する。 しかしモンスターが強ければ強いほど取引の代償は大きくなっていく。
ククルカンというモンスターを使役できたとして、五体満足なのはどうにも不自然に見えた。
「おっしゃる通りでございます」
「あの者と私が戦えばどちらが勝つ?」
青年は冒険者界隈では良くも悪くも名が知られており『イカレ勇者』と揶揄されている。 しかし戦闘力は本物で、日本なら三本の指に入る強さだと言われていた。
「それは分かりかねます。 あの者は見かけたことも、噂を聞いたこともありません」
青年は満足げに頷いた。
「ああ、だから戦ってみなければ分からない。 ならばどうするべきかは決まっている」
「はい」
「戦えばいい。 戦って勝利し、最強を証明すればいい。 私の最強を脅かしかねない未知は全力で叩き潰すまで」
青年は世間からの名声も金にも興味はない。
彼は『一番であること』にこだわっていた。 その執念はもはや狂気的で、その舞台を整えるためならば倫理に反した行為すら良しとするほどに。
「仰せのままに」
数日後、少年を監視、そして誘拐するために放った刺客が返り討ちにあったことで、青年はついに直接彼の元へ赴くこととなるのであった。
***
「まただ」
最近、家のポストに、席の机に、チラシが入れられている。
いたずらかと思ったし、特に害もないと放っておいたがさすがに続くと鬱陶しい。
「おっす! なあこれ、一緒に出場しないか?」
『武道大会! 最強は俺だ!』
登校早々、興奮した様子の木霊が見せてきたチラシはまさに最近よく見たソレだった。
「いや、出ないけど?」
「出よーぜ! 男なら興味あるだろ? 最強! 有名な勇者も出るっていうし、いい成績を残せば有名人だぜ?」
「答え分かってて言ってるだろ? それに木霊が興味あるのはこっちだろ」
『入賞者には賞金と副賞として――ダンジョン産の素材詰め合わせプレゼント!』
木霊は魔道具職人を志している。 魔道具を作るにはダンジョン産の素材が必要だ。 しかしそれは高校生が手に入れるには価格が高すぎる。
「体験に言った道場まだ通ってるんだろ? コツコツ鍛えてダンジョンへ採りに行きなよ」
「それはそれ、これはこれ! 勇者主催の大会だぞ? どんな素材が詰めあわされているのか……」
木霊はワキワキと手を動かして、イヤらしい笑い声を上げている。
「欲に目が眩んでやがる……」
放課後、学校の前に人だかりができていた。
「何の騒ぎ?」
「さあ? 有名人でもいるのか~?」
木霊が興味津々で覗こうとしていると、突然花道のように道が開けた。
「初めまして、私は光が丘竜輝《りゅうき》。 こっちはマネージャーの咲《さき》」
白いジャージを来た青年は、演じるかのような大げさな仕草で礼をした。
「君は山本空亡くんだね?」
「……」
「警戒しているのかな? 大丈夫怪しいものではないよ。 割と名は知れていてね、調べてもらえれば信用してもらえると思うよ」
誰であるかは野次馬の声を聞けば分かった。 彼の名前は初めて聞いたが、通称はついさっき聞いたばかりだ。
「君にぜひこの大会に参加して欲しくてね、わざわざ声を掛けに来たというわけさ」
彼はそう言ってチラシを差し出した。
こういう手合いは取り合わないのが一番だろう。
「出ませんよ。 失礼します……行こう」
「えー、サイン欲しいん――」
「行くぞ」
呑気な木霊を引っ張って通り過ぎようとした。
しかし、
「ふむ、なら仕方ない。 しかしこれは決定事項なんだ」
彼が手を出してくることはなく、しかしそんな不穏な言葉を呟くのだった。
***
武道大会・勇者スレ
最強への挑戦者:
さすが戦闘狂
いつかやると思ってた
挑戦者:
武道大会とかありそうで無かったよな?
挑戦者:
異世界ならともかく、現代だと倫理観的にNGなのでは?
格闘技ならともかく真剣ありスキルありのなんでもありってなるとね
挑戦者:
グロ注意
挑戦者:
さすがに死ぬまではやらんでしょ
やらんよね?
挑戦者:
これどういう形式なの?
何回呼んでも挑戦者がひたすら勇者と戦うようにしか見えないんだが
挑戦者:
普通にトーナメントじゃないん?
挑戦者:
勇者VS挑戦者×100
挑戦者:
狂ってるな……
さすがに体力もたんだろ
***
「面倒な奴に絡まれたみたいだ……」
スレッドを閉じて僕はベッドに体を投げ出した。
「闇討ちしちまうか?」
「しないよー」
シェイプスターは相変わらず思考が極端だ。
「ふーん、まあいいけどよ。 何かされてからじゃ遅いぜ?」
「何かって何さ」
「さあ?」
いくら戦いに狂っているからといって、さすがに犯罪めいたことはないだろう。
○
「俺、出ることにしたから!」
一週間ほど経って、木霊がそんなことを言い出した。
「そんな急に? 明日だろ……もうエントリーしてんの?」
「いつからでもエントリー出来るし、なんなら当日飛び込みOKなんだぜ」
木霊はなぜか誇らしげに胸を張るが、それだとどんでもない参加者数になりそうだがそこは魔力値で事前にふるい落としがあるようで、意外にも参加者数は少ないらしい。
「だからソラも一緒に!」
「やーだって……しつこいよ」
「はは、わーってる。 まあ会場に見に来る……のは面倒だろうから、せめて動画サイトで無料配信するらしいから応援頼むわ」
「……それくらいならいいけど。 大丈夫なのか? 勝算はあるのか?」
木霊が道場で鍛え始めたといっても、それは最近の話だ。
スキルも魔道具作りに役立つような非戦闘系だったと記憶している。 ならばどうやって――
(って聞いても教えてくれないんだろうな……当日のお楽しみとか言って)
「まあやるだけやってやるさ。 それなりにいい勝負はしてみせるさ」
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