怠惰な召喚術師は最強を飼っている~ファンタジー化した現代で膨大な魔力と召喚スキルを与えられた少年の生きる道~

すー

文字の大きさ
28 / 29
第2章~怠惰な召喚術師と夢見る少女~

第28話:勇者と武道大会

しおりを挟む









***


「私は最強だ」
「はい、勇者様」

 目の前で繰り広げられた戦闘を愉しそうに見つめる青年と無表情のメイド。

「じゃああの化け物はなんだ?」
「ククルカンと申すようです」

 蛇の魔物はよくいるが、ワイバーンを丸呑みする蛇のモンスターなど二人は聞いたこともなかった。

「モンスターの名前何て聞いてない。 見たことも聞いたことも無い強いモンスターがいて、そしてそれを使役する人間はとんでもなく強いに違いない」

 モンスターを召喚するスキルの存在は知られているが、本来召喚術とは召喚したモンスターと何かしらの取引を以って使役する。 しかしモンスターが強ければ強いほど取引の代償は大きくなっていく。

 ククルカンというモンスターを使役できたとして、五体満足なのはどうにも不自然に見えた。

「おっしゃる通りでございます」
「あの者と私が戦えばどちらが勝つ?」

 青年は冒険者界隈では良くも悪くも名が知られており『イカレ勇者』と揶揄されている。 しかし戦闘力は本物で、日本なら三本の指に入る強さだと言われていた。

「それは分かりかねます。 あの者は見かけたことも、噂を聞いたこともありません」

 青年は満足げに頷いた。

「ああ、だから戦ってみなければ分からない。 ならばどうするべきかは決まっている」
「はい」
「戦えばいい。 戦って勝利し、最強を証明すればいい。 私の最強を脅かしかねない未知は全力で叩き潰すまで」

 青年は世間からの名声も金にも興味はない。

 彼は『一番であること』にこだわっていた。 その執念はもはや狂気的で、その舞台を整えるためならば倫理に反した行為すら良しとするほどに。

「仰せのままに」


 数日後、少年を監視、そして誘拐するために放った刺客が返り討ちにあったことで、青年はついに直接彼の元へ赴くこととなるのであった。


***


「まただ」

 最近、家のポストに、席の机に、チラシが入れられている。
 いたずらかと思ったし、特に害もないと放っておいたがさすがに続くと鬱陶しい。

「おっす! なあこれ、一緒に出場しないか?」

『武道大会! 最強は俺だ!』

 登校早々、興奮した様子の木霊が見せてきたチラシはまさに最近よく見たソレだった。

「いや、出ないけど?」
「出よーぜ! 男なら興味あるだろ? 最強! 有名な勇者も出るっていうし、いい成績を残せば有名人だぜ?」
「答え分かってて言ってるだろ? それに木霊が興味あるのはこっちだろ」

『入賞者には賞金と副賞として――ダンジョン産の素材詰め合わせプレゼント!』

 木霊は魔道具職人を志している。 魔道具を作るにはダンジョン産の素材が必要だ。 しかしそれは高校生が手に入れるには価格が高すぎる。

「体験に言った道場まだ通ってるんだろ? コツコツ鍛えてダンジョンへ採りに行きなよ」
「それはそれ、これはこれ! 勇者主催の大会だぞ? どんな素材が詰めあわされているのか……」

 木霊はワキワキと手を動かして、イヤらしい笑い声を上げている。

「欲に目が眩んでやがる……」





 放課後、学校の前に人だかりができていた。

「何の騒ぎ?」
「さあ? 有名人でもいるのか~?」

 木霊が興味津々で覗こうとしていると、突然花道のように道が開けた。

「初めまして、私は光が丘竜輝《りゅうき》。 こっちはマネージャーの咲《さき》」

 白いジャージを来た青年は、演じるかのような大げさな仕草で礼をした。

「君は山本空亡くんだね?」
「……」
「警戒しているのかな? 大丈夫怪しいものではないよ。 割と名は知れていてね、調べてもらえれば信用してもらえると思うよ」 

 誰であるかは野次馬の声を聞けば分かった。 彼の名前は初めて聞いたが、通称はついさっき聞いたばかりだ。

「君にぜひこの大会に参加して欲しくてね、わざわざ声を掛けに来たというわけさ」

 彼はそう言ってチラシを差し出した。

 こういう手合いは取り合わないのが一番だろう。

「出ませんよ。 失礼します……行こう」
「えー、サイン欲しいん――」
「行くぞ」

 呑気な木霊を引っ張って通り過ぎようとした。

 しかし、

「ふむ、なら仕方ない。 しかしこれは決定事項なんだ」

 彼が手を出してくることはなく、しかしそんな不穏な言葉を呟くのだった。
 

***


武道大会・勇者スレ

最強への挑戦者:
さすが戦闘狂
いつかやると思ってた

挑戦者:
武道大会とかありそうで無かったよな?

挑戦者:
異世界ならともかく、現代だと倫理観的にNGなのでは?
格闘技ならともかく真剣ありスキルありのなんでもありってなるとね

挑戦者:
グロ注意

挑戦者:
さすがに死ぬまではやらんでしょ

やらんよね?

挑戦者:
これどういう形式なの?
何回呼んでも挑戦者がひたすら勇者と戦うようにしか見えないんだが

挑戦者:
普通にトーナメントじゃないん?

挑戦者:
勇者VS挑戦者×100

挑戦者:
狂ってるな……
さすがに体力もたんだろ



***


「面倒な奴に絡まれたみたいだ……」

 スレッドを閉じて僕はベッドに体を投げ出した。

「闇討ちしちまうか?」
「しないよー」

 シェイプスターは相変わらず思考が極端だ。

「ふーん、まあいいけどよ。 何かされてからじゃ遅いぜ?」
「何かって何さ」
「さあ?」

 いくら戦いに狂っているからといって、さすがに犯罪めいたことはないだろう。





「俺、出ることにしたから!」

 一週間ほど経って、木霊がそんなことを言い出した。

「そんな急に? 明日だろ……もうエントリーしてんの?」
「いつからでもエントリー出来るし、なんなら当日飛び込みOKなんだぜ」

 木霊はなぜか誇らしげに胸を張るが、それだとどんでもない参加者数になりそうだがそこは魔力値で事前にふるい落としがあるようで、意外にも参加者数は少ないらしい。

「だからソラも一緒に!」
「やーだって……しつこいよ」
「はは、わーってる。 まあ会場に見に来る……のは面倒だろうから、せめて動画サイトで無料配信するらしいから応援頼むわ」
「……それくらいならいいけど。 大丈夫なのか? 勝算はあるのか?」

 木霊が道場で鍛え始めたといっても、それは最近の話だ。

 スキルも魔道具作りに役立つような非戦闘系だったと記憶している。 ならばどうやって――

(って聞いても教えてくれないんだろうな……当日のお楽しみとか言って)

「まあやるだけやってやるさ。 それなりにいい勝負はしてみせるさ」






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...